障害者雇用促進法により、従業員が一定数以上の企業には、障害者の雇用が義務付けられていますが、自社が雇用すべき障害者の人数をしっかりと把握されていますでしょうか。
法律では、従業員に対する障害者の割合も定められていて、企業はその割合以上に障害者を雇用しなければなりません。この割合を算出する際には、障害者の障害の種類や等級によって人数のカウントが異なります。
この記事では、障害者雇用促進法における障害者の定義や障害の程度によるカウント法などについて解説します。
障害者雇用促進法における法定雇用率
障害者雇用促進法では、一定数以上の労働者がいる企業や国および地方公共団体などに対して、常用労働者に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務が定められています。
障害者雇用率は、2018年4月に改正された障害者雇用促進法によって次の通りに引き上げられました。
国、地方公共団体等・・・2.3% → 2.5%
都道府県等の教育委員会・・・2.2% → 2.4%
民間企業の場合には、従業員が45.5人以上であれば障害者を雇用する義務があります。
なお、障害者雇用促進法により少なくとも5年に1度は法定雇用率を見直すことが定められていて、2021年3月には更に0.1%引き上げられ2.3%となる見込みです。したがって、従業員が43.5人以上の企業に障害者の雇用が義務付けられることになります。
障害者雇用率は、次の計算式によって算出されています。
【参考】
厚生労働省「障害者雇用率制度」
厚生労働省「障害者雇用対策について」
雇用率の対象となる障害者のカウント方法
現在、民間企業の法定雇用率は2.2%で、従業員が45.5人以上(令和3年3月1日〜43.5人)の企業は、法定雇用率以上に障害者を雇用する義務があります。自社で雇用すべき障害者の人数は次の計算式で求められます。
- 常用労働者とは
- 障害者雇用率の計算に使われる「常用労働者」とは、1週間の所定労働時間が30時間以上で、次のように1年以上継続して雇用される人(見込みも含む)を言います。
- ・雇用期間の定めのない労働者
・有期契約労働者でもその期間が反復更新され、雇用から1年を超えて引き続き雇用されると見込まれる労働者
・日々雇用される労働者でも、雇用契約が日々更新されている労働者
したがって、正社員だけでなく契約社員やパート、アルバイト、派遣社員なども含まれることがあります。
- 短時間労働者とは
- 1週間の所定労働時間が、20時間以上30時間未満の労働者をいいます。20時間未満の労働者は短時間労働者にカウントされません。
障害者雇用促進法では、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害含む)、その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」と障害者を定義しています。
また、障害者雇用率制度の上では、身体障害者手帳や療育手帳、精神障害者保健福祉手帳を所有している障害者を実雇用率の算定対象としています。
【参考】
障害者の雇用の促進等に関する法律
【参考】厚生労働省「障害者雇用のルール」
障害の種類や等級によるカウント方法
障害者雇用促進法の障害者雇用率制度では、障害の種類や等級によって労働者のカウントが異なります。それぞれの障害の定義とカウントは次の通りです。
- 身体障害者とは
-
身体障害者障害程度等級表での1級~6級の障害がある人と、7級の障害を2つ以上重複している人を指します。
身体障害の種類には、視覚障害や聴覚障害、音声・言語機能障害、そしゃく機能障害、肢体不自由、心臓機能障害、じん臓機能障害、呼吸器機能障害などがあります。
そのうち、身体障害者障害程度等級表の1級または2級の障害を有する人と、3級の障害を2つ以上重複している人を、「重度身体障害者」といい、障害者数の算定では重度身体障害者1人を2人分としてカウントします。
児童相談所や知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医又は障害者職業センターなどの知的障害者判定機関によって知的障害があると判定された人です。
そのなかで、知的障害者判定機関により知的障害者の程度が重いと判断された人を「重度知的障害者」といい、障害者数の算定では1人を2人としてカウントします。
障害のある労働者のカウント方法を表にまとめると次の通りです。
常用労働者 (除く短時間労働者) |
短時間労働者 | |
---|---|---|
1週間の所定労働時間 | 30時間以上 | 20時間以上30時間未満 |
身体障害者 | 1人 | 0.5人 |
重度身体障害者 | 2人 | 1人 |
知的障害者 | 1人 | 0.5人 |
重度知的障害者 | 2人 | 1人 |
精神障害者 | 1人 | 0.5人 |
なお、自閉症やアスペルガー症候群、学習障害、注意欠陥多動性障害などの発達障害のある人は、雇用義務に含まれておらず、実雇用率にも算定することができません。
障害者雇用納付金制度について
法定雇用率2.2%を未達成の企業のうち、常用労働者が100人以上の企業は、雇用不足分1人あたり、月額5万円の障害者雇用納付金が徴収されます。この納付金は、法定雇用率を達成している企業に調整金や報奨金として支給されます。
また、障害者を雇用する企業が、作業施設や設備の設置などについて、多額の費用の負担が発生する場合には、その費用に対し助成金が支給されます。
まとめ
2021年3月には、法定雇用率が現在より0.1%引き上げられ、2.3%と改正される予定です。これにより、新規に障害者の雇用を行う企業が増えてくるのは必然と言えます。
障害者の雇用を促進することは、企業の社会的責任でもありますが、法定雇用率を達成することで、障害者雇用給付金制度により調整金や報奨金が支給されます。
自社に義務づけられた障害者の雇用人数を確認して、計画的に障害者雇用を進めることが望まれます。
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