症状が似た「HSP」「発達障害」「感覚過敏」の具体的な違いを比較

症状が似た「HSP」「発達障害」「感覚過敏」の具体的な違いを比較

人より落ち込みやすかったりネガティブに考えすぎてしまったりするようなら、あなたはもしかすると「HSP」かもしれません。

HSPとは人より物事を深く考えすぎてしまう症状で、発達障害という言葉の認知の広まりにより、HSPという言葉が改めて注目されています。

ただHSPは病気や疾患ではありません。誤解されやすい症状のため注意が必要です。

今回はHSPとは何かという点を発達障害や感覚過敏と比較しながら、分かりやすく解説します。

HSP・発達障害・感覚過敏の違いとは?

昨今は「大人の発達障害」という言葉とともに、「ADHD」「ASD」「HSP」といった英文字の言葉が乱立するようになりました。

実は全て症状や原因は異なる障害であり、同時にどれもうつ病などの精神的な病気を併発する症状でもあります。

中には精神医学として明確な定義のない症状も多くあるため、どの障害も症状が混同されがちです。

上記に挙げた障害の定義を見てみましょう。

ADHDの定義

ADHDとは、年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、及び/又は衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学業の機能に支障をきたすものである。

【引用】文部科学省

ASDの定義

神経発達症群に分類されるひとつの診断名で、コミュニケーションや言語に関する症状があり、常同行動を示すといった様々な状態を連続体(スペクトラム)として包含する診断名である。

【引用】Wikipedia 自閉症スペクトラム障害

発達障害の定義

発達障害者支援法には「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。

【引用】文部科学省

HSPの定義

ハイリー・センシティブ・パーソン(英: Highly sensitive person, HSP)とは、生得的な特性として、高度な感覚処理感受性(あるいは生得的感受性)を持つ人のこと。

【引用】Wikipedia ハイリー・センシティブ・パーソン

ADHDやASDは発達障害の種類であり、それらとは別にHSPがあると理解されれば良いでしょう。

発達障害は過去の経験や家庭環境などで起こる精神疾患ではなく、「脳機能の発達バランスが人と違う」という障害です。

HSPも病気や精神疾患ではなく、生まれ持った脳機能の特性という点で同じです。

ただ、発達障害は脳機能のバランスが人とは違うため生きづらさを感じる障害であるのに対し、HSPは感受性が強すぎてコミュニケーションが困難になる症状です。

症状は似ていても、社会生活における感じ方や脳機能の働きという点では全く違うものなのです。

HSPとは?主な症状や具体例

HSP (ハイリー・センシティブ・パーソン) とは、他の人に比べて非常に繊細な気持ちを持つ人を指す心理学上の症状です。

五感や感情、思考という感覚的な能力が高く、他人よりも物事を深く考えすぎてしまう。結果的に極端にネガティブにもポジティブにもなり得るのがHSPの特徴です。

例えば、騒がしい中でも自分の名前を聞き取れたということがあります。これは「カクテルパーティ効果」といい、もともと人間に備わった機能です。

HSPではない人なら、自分の名前が聞こえたところで「自分のことが話題になってる」という程度に捉えます。

しかしHSPの場合、人一倍感受性が高いため「もしかしたら自分の悪口を言われてるのかも」と捉えてしまうケースがあるのです。

単に集中力が高いとも言えるHSPですが、その繊細さ故に以下のようなことで悩みがちな傾向があります。

  • 相手との関係が気になって物事を決められない
  • 音や光の強さなどの環境が自分に合っていないと集中できない
  • 人の気持ちや自分に対する相手の感情を読みすぎる
  • ちょっとした会話に含まれた意味を拡大解釈して落ち込む
  • 考える能力は高いがHSPの症状により実行に移しづらい

HSPは最悪の場合、ストレスによりうつ病などの精神疾患を患ってしまうケースもあります。

よって精神医学で正式な疾患として分類されていないHSPも、ある意味では精神的な病気も併発する可能性がある症状なのです。

感覚過敏とは?主な症状や具体例に見るHSPとの違い

感覚過敏とは、音や光、感触などに対して非常に敏感であるため、生活に支障をきたす症状です。

主に発達障害のある人に見られる症状と言われますが、感覚が脳に伝わるまでの機能が原因になっているケースもあります。

感覚過敏は単体で病気として定義されているわけではなく、あくまで発達障害などにおける一つの症状です。

HSPと感覚過敏はしばしば混同されますが、明確な違いがあります。聴覚や視覚による感じ方で比べてみると分かりやすいでしょう。

  聴覚 視覚
感覚過敏 普通の音でも大きく聞こえてしまう 普通の光でもまぶしく感じる
HSP 人の話や音が気になりすぎてしまう 目に見えたものに対し深く考えすぎる

つまり、HSPが「繊細な人」であるのに対し、感覚過敏は「五感の感覚を人よりも過剰に感じる人」と言えるでしょう。

しかし、HSPも感覚過敏も本人にとって不快であることに変わりなく、やはり感覚過敏ゆえにうつ病などの精神的な病気を併発し得る症状です。

発達障害とは?HSPとは真逆の症状や具体例

発達障害とは、脳機能が人よりもアンバランスに育ってしまう生まれ持った障害です。

発達障害は「考える」「感じる」「理解する」「記憶する」「言葉を話す」といった脳機能のいずれかで人とは違います。

そのため、日常生活にも支障をきたす精神疾患として定義づけられた病気です。

発達障害こそHSPとは全く違う病気ですが、具体例で違いを見てみましょう。

ASD・自閉症スペクトラム 空気や相手の気持ちを察することができず社会性やコミュニケーションに難がある
ADHD・注意欠陥多動性障害 対人関係において衝動的な行動を起こす。また集中と散漫の差が激しい
HSP 相手の感情や空気を読みすぎてしまい行動できない。自分に対する肯定感が低い

簡単に言えば、「脳機能に問題があって社会生活に支障をきたす」のが発達障害です。

逆にHSPは「感じ方が人より繊細すぎて生きづらさを感じる」という点で発達障害とは全く違います。

昨今は、大人になってから発達障害と診断されるケースも少なくありません。

それまでの家族や会社、友人関係が上手くいかないのは、発達障害が原因だったと分かったと報告する人が多くなっています。

しかし発達障害であると自覚していない人は、物事で失敗する原因が分からなかったり、人より上手くできない部分に生きづらさを感じています。

やはり、うつ病などを併発する障害であるため、早期にカウンセリングや治療を受けるべきでしょう。

HSPのセルフチェック!3分でできる「HSP診断テスト」

HSP自体はDSM-5やICD-10といった疾病の分類にも記載されていない症状です。

もともと心理学者のエレインアーロン博士が考案した言葉であり、具体的な診断方法も確立されていません。

ただエレインアーロン博士は、HSPの診断チェックができるリストを考案しています。

そこでチェックリストを基にして運営されている「HSP診断テスト」というサイトをご紹介します。

【出典】HSP診断テスト

医学的な根拠がないため必ずしも診断テストの結果が正解とは限りません。

ただテストの結果を「-52~140」でスコア化し、最終的に「弱・中・強」で診断できます。

操作もクリックするのみで簡単ですので、あくまで目安という範囲で試してみてはいかがでしょうか。

HSPは病気や疾患ではありません。HSPと診断されたからといって落ち込まず、自分らしさを保つことを忘れないようにしましょう。

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