「学習障害と知的障害の違い」をわかりやすく解説

「学習障害と知的障害の違い」をわかりやすく解説

あなたは学習障害と知的障害の違いを明確に説明できるでしょうか?

医療関係のメディアなどでも複雑な説明がされているため、学習障害と知的障害の違いはいまいち理解がしにくいかと思います。

この記事では学習障害と知的障害の違いを明確にイメージできるよう、「原因」「法律」「福祉」「医療」「治療」の5つの面に分けて違いを解説します。

学習障害・知的障害とは?

まず学習障害と知的障害の概要をそれぞれ簡単にご説明しましょう。

学習障害
文字の読み書きや会話能力、計算や推論といった特定の分野での脳発達のバランスが悪い障害。知的能力全般においては何ら問題なく、学習機能の一部が著しく低い障害として知的障害と区別される。
知的障害
知的能力や社会適応能力が同年代の人に比べて明らかに低い障害。特別な支援がないと生活ができないケースが多い。

学習障害と知的障害の区別や線引きは難しいですが、知的障害を知能レベル全般の障害とするなら、学習障害は学習分野のみ著しく劣っている障害と捉えていただくと分かりやすいでしょう。

ただ各障害は必ずしも単独で起こる障害ではなく、発達障害の一種である学習障害と知的障害、精神障害はいずれも脳機能が原因の障害のため、複数の障害を併せ持っているケースも少なくありません。

例えば、自分の知的障害や学習障害に強い劣等感を感じ、うつ病などの別の障害を併発してしまうケースなどです。

そのため、各障害は一定の基準を設けて区別されるのが一般的な考え方です。

学習障害と知的障害の原因における違い

学習障害と知的障害の違いを理解するには、障害の原因を理解するとよりイメージが明確になります。

【学習障害を発症する原因】
原因ははっきりしていないが、脳神経の乱れや脳内の部分的な障害であると考えられている。少なくとも養育環境や精神不安などが原因ではない。
【知的障害を発症する原因】
主に遺伝子異常や胎児期の感染症、外傷性の脳損傷、発育環境が劣悪だったために脳発達が遅れたことなどが原因。発達障害と違って脳ダメージを受けたキッカケが明確である。

原因がはっきり分かっているかどうかでも学習障害と知的障害は明確な違いがあります。

もちろん知的障害で原因不明なケースもありますが、発達障害と比べると原因不明というケースはそう多くはありません。

発達障害も脳神経や前頭葉の関与などが疑われるものの、知的障害に比べて未解明の部分が多いという点で明確に異なります。

学習障害と知的障害の法・福祉・医療での違い

法改正や各制度の変更を進めていくにあたり、省庁が暫定的に明示した学習障害と知的障害の定義があります。

法律上の学習障害と知的障害の違い

学習障害
全般的な知的発達に遅れはないが、読み書き、会話、計算、推論の能力のうち特定の学習が著しく困難な障害。中枢神経系の何らかの機能障害が原因と推定されるが、視覚、聴覚、知的、精神などの障害や環境が原因とはならない。
知的障害
概ね18歳までの発達期に表れ、日常生活に支障が生じるため、特別な援助を必要とする障害。一般的にIQと生活能力の度合いで障害の程度が判断される。

【参考】学習障害児に対する指導について(報告) / 知的障害児(者)基礎調査:調査の結果

上記の定義は「DSM」や「ICD」といった国際的な疾病分類に示された内容を踏襲している定義です。

法律上では精神障害や身体障害といった大きな括りでの定義はありますが、学習障害と知的障害について明確に定義しているわけではありません。

では、医療面での学習障害と知的障害の違いとして、DSM5に示されている診断基準をご覧ください。

医療面での学習障害と知的障害の違い

学習障害
1. 以下の1つ以上の症状が6か月間継続している
 a. 読字に時間がかかる
 b. 文章を正確に読めない
 c. 字を的確に書けない
 d. 数字の概念が理解できず計算能力を習得できない
 e. 数字から読み取れる事実を推測できない
2. 同年齢の人に比べて部分的な学習能力が低い
3. 障害による困難は学齢期に判明する
4. 障害の原因は知的障害や精神障害、環境要因などではない
知的障害
1. 発達期に発症
2. 知的機能の欠陥
3. 適応機能の欠陥

では、福祉面での学習障害と知的障害にはどのような違いがあるのでしょうか。障害者手帳の要件での違いを見てみましょう。

障害者手帳における学習障害と知的障害の違い

学習障害
精神障害の1級、2級、3級のいずれかの状態にあると判断された人に「精神障害者保健福祉手帳」を交付する。
知的障害
児童相談所または知的障害者更生相談所で知的障害と判定された人に対して「療育手帳」を交付する。

学習障害は発達障害の一種であり、発達障害は法的には精神障害者として分類されるため、精神障害者保健福祉手帳の交付は医師の診断等が必要になります。

対する知的障害は法的にも明確な定義が定められておらず、知的障害を理由に支援が必要だと福祉施設に認定されれば、療育手帳を交付されるという点で学習障害とは大きく異なります。

学習障害と知的障害の治療方法における違い

では最後に、学習障害と知的障害に対する治療方法の違いを見てみましょう。

どちらも特効薬や完治させる治療方法が確立されているわけではありませんが、障害を緩和させるために以下のような治療が行われています。

学習障害
最初に何を苦手としているか、どの部分が困難かを特定することから始まる。その上で苦手な部分を補う訓練や苦手な部分の代替となる手段を考えていくのが主な治療方針となる。
知的障害
知的障害に対する明確な治療方法が確立されていないため、日常生活技能の習得や福祉施設における社会生活能力の習得といった教育的なサポートが主な治療方針となる。

一部の発達障害や精神障害の治療においては薬物治療を行うケースもありますが、学習障害も知的障害も基本的に薬物療法は行われません。

かといってカウンセリングによって徐々に良くなるといった障害でもないため、日常生活における困難を緩和させるための訓練がメインとなります。

ただし昨今、知的障害に関してはアミノ酸の一種を投与すると症状が改善することが東北大学の研究により明らかになっています。

学習障害と知的障害の違いを一言で伝えるのは簡単ではありませんが、細かく見ていくとそれぞれに明確な違いがあります。

特に昨今は発達障害への認知が広がっていることから、自身が発達障害であるとカミングアウトする人も増えてきています。

この記事をお読みいただいたことで、それぞれの障害に対してどんな配慮が必要になるか考えるきっかけになれば幸いです。

【参考】アミノ酸が難病治療に効果 重度知的障害、東北大など

以下記事では、発達障害を含めた精神障害者に対する会社での配慮事項について解説しています。

精神障害者の合理的配慮事項ランキング10選

執筆者プロフィール

TOPへ