双極性障害(双極症、躁うつ病)とは、どんな障害なのでしょうか?
簡単に言うと、「気分の波が人より激しく、日常生活に支障をきたしてしまう障害」です。
(参照:双極性障害(躁うつ病) (そうきょくせいしょうがい)とは | 済生会)
躁状態・軽躁状態(気分の高い状態)とうつ状態(気持ちが沈んでしまう状態)を繰り返し、その落差で本人が疲れ果ててしまいます。
双極性障害の人が、少しでも生きやすくなるような日常のメンタルヘルスケアについて、今回はお話しします。
日常生活を管理する
規則正しい生活の重要性
双極性障害の症状を悪化させないためには、規則正しい生活がとても重要になってきます。
特に、睡眠の質と睡眠リズムは、躁状態やうつ状態のバロメーターになります。
(参照:双極症の症状とうまく付き合うには? |あいち保健管理センター第2)
- 睡眠時間が極端に減ってきた
- 過眠
- 昼夜逆転が激しい
などの状態がみられたら要注意です。
うつ状態で悩んでいて眠れない状態は比較的わかりやすいですが、躁状態でも不眠は起こります。むしろ、躁状態の不眠は「眠れない」というよりは「寝たくない」という感じで、過活動につながるので注意が必要です。
最初のうちは体力があるので寝なくても何とかやれてしまいますが、そのうち体力がもたなくなり、それに引っ張られて気力も落ちてきて、うつ状態に突入してしまいます。
躁状態とうつ状態を繰り返しているうちに、さらに症状の落差で本人は苦しくなります。
そうならないよう、まずは規則正しい生活をして、体力を一定に保つことが大事なのです。
睡眠管理とリズムの整え方
それでは、睡眠を上手に確保するためにはどうしたら良いでしょうか。
まずは薬物療法で、一定の時間眠れるよう調整します。
自分が「寝つけない」のか、「途中で目覚める」のか、「早朝に目覚めてしまう」のかによって、飲む薬も変わってきますので、主治医とよく相談して睡眠薬を処方してもらいましょう。
うつ状態のときはおそらく真面目に薬を飲むと思うのですが、問題は躁状態です。
「寝たくない」と思っているので、意図的に睡眠薬を抜いてしまうこともあるのではないでしょうか?いちばん良くないパターンです。
躁状態のときは、体力を温存するために無理やりでも寝る方向に自分を持っていきましょう。
夜は眠り、朝は光を浴びるようにすると、体内時計が狂わずに済みます。
適切な食事と栄養のとり方
栄養に神経質になると、食べられるものも食べられなくなることもあるため、ここでは栄養学的な話は特にしません。
ただし、決まった時間に少しでも良いのでご飯を食べることは心がけましょう。
特に、うつ状態の時は食欲が落ちていることが多いですが、食欲が落ちていたとしても、少しでも栄養をとるようにしないと体力がどんどん落ちていきます。
本当ならば栄養のバランスも考えて食べられるのが理想ですが、食欲が落ちているとそれも難しいでしょうから、食べやすそうなものから食べてみましょう。
反対に、ストレスによって過食状態になることもあります。このときは、1日3回の食事時間は守り、他の時間でどうしてもお腹がすいたら、低カロリーで腹持ちの良い物を少し食べるのが良いです。
栄養バランスが考えられるくらい軽症であればきちんと考えてほしいですが、そんなことは考えらえないという人は無理をせず、まず「1日3食」を少しでも頑張ってみてください。
双極性障害の日常メンタルケア
ストレスマネジメントの方法
躁状態でもうつ状態でも、いちばんのストレスマネジメントは「寝ること」です。
お布団にただ入っているだけでもかまいません。
しっかり眠れないと嘆く必要もありません。
ただ横たわって、目をつぶり、ゆっくり休むのが第一です。
その上で、「少し動きたいなぁ」という気持ちになってきたら、軽く作業をすると良いです。
あなたが普段おこなっているストレスへの対処法ができればそれに越したことはありません。
ただ、注意していただきたい点もあります。
たとえば、躁状態でお金を浪費しやすいときに、ウィンドウショッピングや買い物系のネットサーフィンは避けましょう。そこでストレス買いをすると、思わぬ浪費をしてしまうことにつながりかねません。
また、「しゃべる」こともひとつのストレス発散方法になります。
ただし、相手が引いてしまうくらいまくし立てたり、攻撃的な言動になっているようなら、のちにトラブルのもとになってしまうので、ほかのストレス解消法を探してみるのが良いですね。
リラクゼーションの実践
うつ状態にも躁状態にも、リラクゼーションが症状の安定に役立ちます。
実際にはいろいろあるのですが、代表的な例は
- 呼吸をゆっくり吐くことを意識し、マインドフルネス(今、ここに集中する)をおこなう
- ストレッチをする
- ゆったりしながら音楽を聴く
- ハーブティーなどを飲む
があります。
リラクゼーションの方法は人それぞれですので、症状が落ち着いているときに、自分がどんなことをすればリラックスできるのかをノートに書いておきましょう。できるだけたくさん書いてあると良いです。
その中から、そのとき置かれている状況で現実的にできそうなことをピックアップし、実際にやってみましょう。
社会的支援とつながり
家族や友人とのコミュニケーション
双極性障害があると、うつ状態のときは本人が苦しいので、「自分が病気なんだ」という意識がある人が多いです。
その一方で、躁状態または軽躁状態のとき、本人は「やっと元気になった」という認識になる人がいます。
そのため、普段から家族や友人としっかりコミュニケーションをとり、あなたの状態を知っておいてもらい、客観的に判断できる人がいると助かります。
あなたの状態を知っておいてもらえば、急に躁状態になっても家族や友人が対応しやすくなりますね。
いちばん怖いのは、急激に躁状態からうつ状態になってしまったときや、うつ状態なのに行動だけはすることができる「躁鬱混合状態」です。
躁状態から急激にうつ状態に落ちてしまっている場合、うつ状態なのに妙に行動的である場合は、すぐに主治医に今の状態を伝えてください。
あなたの普段の双極性障害の状態を知っている家族や友人の協力がいちばん功を奏します。家族や友人は、あなた以上にあなたの状態に敏感に気づくことができるからです。
自助グループの活用
双極性障害の気分の波について、双極性障害になったことのない周りの人に説明してもなかなか分かってもらえないことが多いです。
激しいうつ状態があっても、軽躁状態や躁状態を見て「元気になったね」と言われてしまうこともあるでしょう。
テンションが上がったとしても、本人はそれで苦しんでいることもあります。
また、攻撃的になってしまって周りの人からひんしゅくを買ってしまったり、周りの人が離れていってしまうことだってあります。
そんなときに、同じ双極性障害の人たちが集まって、自分の気持ちや状況を共有する場があると、あなたは孤独を感じずに済むでしょう。
現在はオンライン自助グループもあるので、そういったものも活用してみると良いです。
自助グループに入っておくことで、あなたが仲間を得ることができ、気兼ねなく悩みを話したりすることができます。
(参照:NPO法人ノーチラス会 特定非営利活動法人日本双極性障害団体連合会(JABD))
医療・福祉サポートとのつながり
あなたの状態が悪くならないうちから家族・友人・医療・福祉などのサポートネットワークを作っておくことをおすすめします。
あなたのサポートチームをあらかじめ作っておくと、あなたが困ったときに、すぐサポートネットワークがあなたを援助することができます。
双極性障害を悪化させると、気分の波の振れ幅がさらに大きくなり、あなたが苦しくなります。
病状のさらなる悪化を防ぐために、何か変化があったらすぐに医療にかかれるようにしておきましょう。
そのためには、自分でも気分の波に敏感になっておき、変化が生じたら、テンションが上がっても下がっても医療機関にかかるようにしましょう。
また、うつ状態が続いたり、躁状態になって職を失ってしまうようなこともあるかもしれないので、その場合は障害者手帳や障害年金などの福祉制度を使う相談ができるようにしておくと良いですね。
様々なサポートを利用し、日常生活や就労生活を支えてもらうことも考慮に入れましょう。
まとめ
いかがでしたか?もうすでに行っているメンタルヘルスケアもあったかもしれませんね。
基本的には、自分自身によるメンタルヘルスケアと、周りの人たちによる客観的な視点からのメンタルヘルスケアの両方を行うことが重要になってきます。
双極性障害は、気分の波の激しさによって疲れたり、状態が悪化してしまうことがあるので、なるべく波を少なくすることがいちばんの対処法になります。
あなたも気楽な気持ちで、上記の対処法を試してみてはいかがでしょうか。
双極性障害の波が少しでも小さくなることで、あなたのメンタルヘルスは向上していきますよ。
執筆者プロフィール

臨床心理士・公認心理師・精神保健福祉士。医療・保健、教育、福祉の現場を経て、現在は就労継続支援B型事業所のサービス管理責任者として勤務。同時に「あいオンラインカウンセリングルーム」を立ち上げる(https://www.eye1234.com/)。
商業出版「手を抜いたって、休んだって、大丈夫。」(大和出版)のほか、kindle16冊(いずれもeye(あい)名義)など著書多数。また様々なメディアにてWebライティングを多数行う。発達障害のある夫と、子ども2人の4人家庭。