仕事は社会生活を送る上で欠かせないライフサイクルの一つ。ただその仕事のためにうつ病などの精神疾患になってしまったら、仕事はおろか日常生活さえも上手く送ることができなくなってしまいます。個人のストレス耐性によりますが、ストレスが多くてうつ病になりやすい職場だと感じたら早めの対処が必要です。しかし、うつ病になりやすい職場とはどういう職場を指すのでしょうか。今回はうつ病の予防や今後の対処のために、うつ病になりやすい職場の特徴を5つご紹介します。
人間関係が難しい職場
職場に限らずですが、人間関係でストレスを抱えてしまうことは誰でもありますよね。仕事は好きだけど人間関係のストレスで参ってしまうという人も中にはたくさんいます。医師専用コミュニティサイトMedPeerが運営する「イシコメ」では、精神科・心療内科の医師211名を対象に「うつ病患者さんの休職の原因は?」という調査を行っています。結果は以下の通り。
【出典】イシコメ「うつ病の休職・復帰について精神科医・心療内科医210人に聞きました」
なんと医師の半数以上が、うつ病患者は職場の人間関係を理由に休職していると答えています。一時よく耳にした「パワハラ」「セクハラ」「アルハラ」など、多くのハラスメント問題は未だ被害者が多くいます。ただどの職場にも合わない性格や困った性格の人はいるもの。完全に避けることは難しいでしょう。職場でのストレスが徐々に溜まっていき、最終的にうつ病になってしまうケースが多いのは調査結果で明らかとなりました。
自分の適性や性格と合っていない職場
また、以下のような興味深い調査データもあります。
【出典】公益財団法人日本生産性本部
上図は公益財団法人日本生産性本部「メンタル・ヘルス研究所」が、上場企業2,273社を対象に「メンタルヘルスの取り組み」としてアンケート調査を行った結果です。同調査の分析によれば従業員の心の病が常態化しているばかりでなく、これまで以上の仕事の質や課題が求められているとしています。つまり、自分に合わない、また適正ではない仕事を求められるなどして心の病を発症しているのではないかと考えられるのです。では、職場における適正ではない仕事とは何が考えられるでしょうか。
- 内向的で他人と喋るのが苦手な性格の持ち主が営業や接客の仕事をする
- 大雑把な性格の持ち主が完璧さや緻密さを求められる仕事をする
- 人に物事を教えるのが苦手な人が誰かを指導する立場につく
- 聴覚過敏を持っている方が、騒音が聞こえたり大きなBGMが流れたりする環境で働く
- マルチタスクが苦手な特性を持つ人がマルチタスクを求められる環境で働く
- 注意を持続させるのが苦手な特性の人が集中できない環境で働く
- など
発達障害の場合は、ストレスが溜まることで本来の障害以外の症状も悪化することがあります。また発達障害に理解がない職場で働くこと自体、大きなストレスになる可能性もあるでしょう。自分の性格に合っているとか得意領域を活かせる仕事が、現代に求められるストレスの少ない職場と言えるのではないでしょうか。
生活リズムを整えづらい職場
生活リズムを整えづらい職場もやはりメンタルヘルスには悪影響を及ぼします。ドイツの高名な精神病理学者テレンバッハは、著書「メランコリー」で以下のように書いています。
昼とひとつになり夜とひとつになって人間も昼を生き夜を生きるのである。人間はそれ自身こういったリズムを持った存在なのである。
【出典】フーベルトゥス・テレンバッハ著 メランコリー
今も昔も、生活リズムの乱れはうつ病を始めとしてメンタルヘルスに良い影響を与えないと言われています。ただ夜勤や三交代勤務など、不規則な就業時間だけれど社会に必要な職種があるのも事実。うつ病にならによう、少しでも安定したリズムで生活する心がけが必要です。では、具体的にはどんなことに気を付ければよいのでしょうか。実は日常の些細な健康習慣を大切にすれば、自然と日々のストレスを緩和できます。
- 食事の内容に気をつける
- 徒歩や自転車での移動を多くとる
- 仕事は数時間に一度は休憩を入れるなどする
- 休日はしっかりと休息をとる
うつ病には心理療法や薬物療法の他に、運動療法や食事療法も存在します。健康的な生活の積み重ねは、うつ病の予防にも効果があるのです。
まとまった睡眠時間が確保できない職場
睡眠時間があまり取れない環境下では、人間はマイナス思考になったり短気になったりします。原因は色々ありますが、主なところでは幸せホルモンと言われる「セロトニン」の減少です。睡眠不足はセロトニンの分泌を減少させるため、常にストレスや不安を抱えた状態になります。つまり、うつ病になる原因の一つとして睡眠不足が大いに関係するのです。ただ睡眠時間の適切な長さに関しては個人差がありますので、自分に合った睡眠時間をとるのが理想。しっかり睡眠をとれば、仕事の効率も上がりうつ病の予防にもなるため一石二鳥です。「寝る」という行為は意外とバカにできません。
メンタルヘルス対策が不十分な職場
メンタルヘルス対策をしっかりとしてる職場ならうつ病になる可能性はもちろん低いです。ただ実際のところ、メンタルヘルス対策をしている会社はどのくらいあるのでしょうか。厚生労働省が定期的に行っている「労働安全衛生調査」では、平成29年時点での以下のような調査結果があります。
【出典】厚生労働省「労働安全衛生調査」
平成23年と比べれば大きく増加したのが分かります。ただ上図は全国約14,000事業所に調査したうちの約半数ほどですから、決して多いとは言えません。このメンタルヘルス対策をいかに普及できるかが、うつ病患者を減らすカギと言えるかもしれません。では、メンタルヘルス対策とは具体的に何を指すのでしょうか。企業に行うメンタルヘルス対策は、主に以下3つが一般的です。
- ストレスチェックをしっかりと実施している
- メンタルヘルスの問題に対する社員研修を徹底している
- 職場に心理カウンセラーがいる
社会生活を送る上で、職場は多くの時間を第三者と共有する場所。うつ病になる原因は職場だけには限りませんが、近年メンタルヘルスの問題が深刻化している事実を考えると自分の健康は自分で守るという意識も大切だと言えます。余りにもストレスフルな職場であったり自分に合わない職場だったりするなら、仕事を変えるという選択肢も視野に入れるべきでしょう。各々ができる範囲でうつ病への対策を取るのが何より大切。もし以下のような症状が現れたら要注意です。
- 少し食欲が落ちてきた
- 朝早くに目が覚める
- 物事に対する興味、関心が薄れてきた
うつ病になりやすい人は悩みを抱え込みがち。メンタルの不調を少しでも感じたら、早めに心理カウンセラーなどに相談しましょう。仕事よりうつ病の早期対策、治療が最優先です。
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