原因や定義が難しいと言われる精神障害の一種「うつ」ですが、「うつ病」「躁うつ病」「新型うつ病」の三種類があるのをご存知でしょうか。
世界でも年々増加しつつあるうつ病ですが、日本ではうつ病への理解があまり進んでいる状況とは言えず、本人や家族が病気を認識していなかったり、医療機関に受診していないケースも少なくありません。
この記事では、一般的な「うつ病」「躁うつ病」の他にあまり知られていない「新型うつ病」の特徴や症状・原因・治療法、うつ病の人との職場での接し方の例と障害者雇用の現場における配慮などを解説します。
うつ病の特徴・原因・接し方
〈うつ病の特徴・症状〉
「うつ病」には様々な種類がありますが、一般に言われるうつ病は正式には「大うつ病性障害」にあたります。
本来は小うつ病性障害、気分変調性障害など細かく分けられていますが、まずは抑うつ状態が続くような病気や障害として理解されると良いでしょう。
うつ病の主な症状は以下の通りです。
新体系:眠れない、疲れやすい、体がだるい、頭痛や肩こり、吐き気、動機など
〈うつ病の原因〉
原因を1つに絞ることは難しく、「大事な人との死別」「職場や家庭での人間関係」「生活環境の変化」などによる精神的ストレスが蓄積して起こるケースや、「出産」「遺伝」「慢性的な疾患」などの身体要因のケース、また正義感が強い性格のため、几帳面、完璧主義、仕事に熱中しすぎてしまう性格が原因となって、知らない間に発症していたケースもあります。
〈うつ病の治療法・接し方〉
うつ病を治療するには「身体を休める」「薬物治療」「カウンセリング」という3つを併用します。
回復に向かっていると思っても再発の可能性も否めないため、職場では、笑顔で接することや仕事で慌てることがあれば声をかける、相手を否定しないなどの寛容な対応が必要です。
躁うつ病の特徴・原因・接し方
〈躁うつ病特徴・症状〉
常に抑うつ状態になるうつ病に対して、「躁うつ病」というものもあります。
「躁」とは気分が高揚している状態を指しますので、気分が高まったり抑うつ状態のどんよりした気分になったりの繰り返しとなるため、障害であることが分からない第三者から見ると「単なる気分屋」と捉えられてしまうことが多くあります。
抑うつの状態から、ハイテンションになったり、怒りっぽくなる、活動的になる、注意が散漫になるといった真逆の状態になることから「双極性障害」とも呼ばれます。
〈躁うつ病の原因〉
躁うつ病を発症するハッキリした原因は分かっていませんが、現在までの研究では遺伝子を起因としている可能性が高いとされています。
また、もともと潜在的な発症リスクがある人がストレスや環境変化により発症するというケースもあり、未だ研究が続けられています。
〈躁うつ病の治療法・接し方〉
躁うつ病も薬物投与などによる医学療法と、カウンセリングなど精神療法が推奨されます。症状が重い場合は入院治療というケースもあります。
職場では適度に声がけを行って本人に安心してもらうことや、責任感の強さから無理に業務を抱え込まないよう配慮することなどが求められます。
また、本人が躁うつ病とは自覚していないケースもあるため支援機関への相談も検討したほうが良いでしょう。
新型うつ病の特徴・原因・接し方
〈新型うつ病の特徴・症状〉
うつ病と躁うつ病のどれとも違うのが「新型うつ病」で、非定型うつ病とも言われ、判断が非常に難しいと言われています。
症状も人により様々で、過食や過眠、無責任になる、強い自己顕示、傷つきやすいなどの症状が現れることもあります。
また、仕事には行かないのに好きな旅行には積極的に行くなど自己中心的な行動をとる場合もあります。
現在、うつ病として診断書が出されるものの正式な精神疾患として認められていないため、周りから見ると単なる性格の問題と考えられてしまうケースも少なくありません。
〈新型うつ病の原因〉
症状が様々であれば、原因も特定のものに絞ることはできません。
主なところでは苦痛から逃避したいと思う出来事を起因とすることが多く、例えば、仕事で失敗して上司から叱責を受けたり、仕事が上手くいかないために職場環境や業務フロー、上司などのせいにしがちになり、そのまま発症することもあります。
〈新型うつ病の治療法・接し方〉
新型うつ病も薬物療法と精神療法が主な治療法となりますが、原因や症状が様々なため、心理療法が効果的だとする意見もあります。
職場における基本的な対応としては、否定しない、認めるということが必要になり、本人とある程度の距離感を保つことも必要という専門家の意見もあります。
どちらにしても自分自身で新型うつ病と自覚していないケースも多々あることから、既存社員に関しては産業医などへの相談、新たに雇用する場合は就労支援を行う機関との連携を行うほうが良いでしょう。
実は曖昧な「うつ」の定義と雇用者側ができること
うつ病は症状や治療法が様々であるため、一般の人がうつ病であると定義したり判断することは難しいです。
うつ病は古くから定義が曖昧とされてきた経緯もありますし、特に近年話題になり始めた新型うつ病は、専門家の診断基準自体が存在しておらず、名称自体も単にマスコミが書き立てた病名であって正式なものではありません。
そのため、精神医学の業界では「DSM-5」という精神疾患や障害の分類マニュアルにあたるものがあり、事実上、国際的に診断の基準書として扱われています。
そのDSM-5の中でも精神疾患や障害の分類は多く分かれていますので、うつの可能性があれば、まずは専門家や医師へ相談するのが望ましいと言えるでしょう。
精神障害者の症状は個人性が高く、一定ではありませんので、特に精神障害者雇用の現場では個々の特性に合わせた柔軟な配慮が必要です。
あくまで一例ですが、主に以下のような取り組みを検討してみると良いでしょう。
・労働時間や休みを本人と話し合って決める
・相談しやすい雰囲気を作る
・笑顔で接するようにする
・本人に指示を出す人は一人に絞る
・長所は言葉にして伝える
・業務や目標などの計画を一緒に作る
まとめ
厚生労働省の(参考)障害者雇用の現状等の調査によると、精神障害者の離職理由として最も多いのは「職場の雰囲気・人間関係」となっています。
その他にも「給与や待遇」「仕事内容が自分に合わない」といったことも理由に挙げています。
また、障害者職業総合センターの調査では、就業後3か月時点の定着率は身体障害77.8%、知的障害85.3%、精神障害69.9%となり、1年経過後の定着率では身体障害60.8%、知的障害68.0%、精神障害49.3%となり、特に精神障害者の定着率が大きく落ちることが分かっています。
これらのデータから障害者の雇用促進のためには障害について理解し、支援体制を整えるのが重要ということが分かります。
職場定着率は一般募集か精神者求人枠という求人の種類、障害を開示したかどうか、支援制度の利用の有無などでも変わるとの調査結果もあり、やはり企業独自の考え方だけで障害者雇用を始めるべきではありません。
特に見た目では分かりづらいうつ病を抱えた方を雇用する場合、支援機関のサポートやトライアル雇用制度の導入、ジョブコーチなどを取り入れて、社内全体で寛容に受け入れを行う体制や職場環境を整えていく必要もあるのではないでしょうか。
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