想像力が高いと言われる統合失調症の適職とは?

想像力が高いと言われる統合失調症の適職とは?

昔は、統合失調症に陥ると、社会復帰は難しいと言われていた時代がありました。しかし、現在では早期発見や薬物治療の進化、回復のためのリハビリなどにより、通院をしながらさまざまな職場で働く方もめずらしくなくなっています。

また、統合失調症の方は自身の病気の特色を理解したうえで、それと上手く付き合いながら適職を見出すケースも多くあるとされています。

この記事では、統合失調症の特徴や適職などについて、ご紹介します。

統合失調症を抱えている人はどの位いる?

厚生労働省の2008年の患者調査によると、現在、統合失調症を抱えている方は79.5万人ということが分かっています。

ただしこの人数は、病院を受診している方のみの数値になっていますので、受診をしていない方の数は含まれていません。そのため実際の人数は、79.5万人以上はいると考えられています。

一方、日本だけではなく、世界各国の調査から見ると、統合失調症の生涯有病率は約0.7%にのぼるというデータも示されています。つまり、統合失調症の方は100人に1人程度は存在し、社会生活を営んでいるケースも多くあります。

また、治療の予後が良好な方は、50~60%いるとされており、回復後に社会復帰や社会参加をしていることも少なくありません。

統合失調症の特徴について

統合失調症は主に、思春期あたりの15、16歳~40歳頃までに発症することが多い疾患です。高齢での発症はめずらしいと言われていますが、50歳を超えて統合失調症に陥るケースもあります。

また、統合失調症には、陽性症状と陰性症状が生じるという特徴があります。陽性症状とは、幻聴や幻覚などが活発に見られる時期のため、現実とはかけ離れた会話をしたり、考えが支離滅裂になることもめずらしくありません。

一方、陰性症状とは、自身の殻に閉じこもったかのように感情が乏しくなったり、行動意欲などが低下する時期のことを言います。統合失調症は、この2つの時期を繰り返しながら、回復に向かうのです。

さらに、統合失調症には認知障害が現れることもあります。例えば、記憶力やコミュニケーション能力、集中力の低下などが挙げられます。

昔は、統合失調症に陥ると回復が困難だと考えられている時代がありました。しかし、現在では統合失調症に効果的な薬が開発されてきており、その回復や緩和も早くなっています。それにより、入院治療をする場合の日数も短縮され、スムーズな社会復帰が可能となったのです。

また、社会復帰をする前の日常生活・社会生活の訓練のためのリハビリも発達するようになりました。

そういった流れとともに、統合失調症に関する啓蒙活動の広がりもあって、患者本人も症状が出ることがあっても、「これは病気の影響なのだ」と理解できるようになることも多く、就職したとしても病気と上手く付き合いながら、働くことができるケースもめずらしくなくなっています。

統合失調症の適職とは?どのようなものがあるの?

統合失調症は、時期によって集中力や記憶力が低下する場合があります。そのため、短時間で出来て、決まった流れで進められる仕事が適職だと言えます。

例えば、特定の内容を入力するデータ入力業務やファイリング業務、一定のシステムに沿って行う軽作業などがおすすめできるでしょう。

また、統合失調症の方は、人から病気を理解されないことによってストレスがかかったり、周囲の目を気にしてしまったりで、症状が悪化する可能性も否めません。

そのため、職種だけで仕事を選ぶのではなく、就職先の雇用主や同僚などの関わりの多い人たちが統合失調症の知識を持っていたり、積極的にその特徴を理解したりしてくれるなど、精神的なサポートを大切にする職場環境を選ぶこともポイントです。

さらに、統合失調症の方は回復しても服薬を続ける必要がある場合が多いので、気兼ねせず業務中に薬を飲むことが許される職場に就職することも、重要だと言えます。

その人ならではの想像力を活かせる職業もある

統合失調症から回復した方は、「今は陽性症状が出ている時期だ」などと、自分自身で病状を理解できるようになっている場合も多いと言われています。

そのような状態を活かし、自分の頭の中に浮かんだ幻聴や幻覚の独特なアイディアやイメージを、自分なりの方法で形にできる方も中にはいます。自分が感じた幻聴のイメージをピアノなどで音楽にしたり、行動意欲が低下したときに見た風景を絵にかいて表現したりが可能なケースも存在するのです。

例えば、イギリスのイラストレーターとして18世紀後半~19世紀前半に活躍したルイス・ウェイン、オーストリアの作曲家・指揮者で交響曲や歌曲を数多く作ったグスタフ・マーラー、日本の芸術家で絵画や彫刻、小説など現在も幅広い活動を行う草間彌生(くさまやよい)なども統合失調症を抱えながら、創作活動を進めていたそうです。

統合失調症の方は、このようなオリジナリティー溢れる表現力を持っているがゆえに、作曲家や画家(イラストレーター)などのアーティストにふさわしく、芸術に関する分野も適職だと言われることが多くあります。

【出典】統合失調症|疾患の詳細|専門的な情報|メンタルヘルス|厚生労働省

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