心身症とはどんな症状?原因・治療法・家族の接し方を紹介

心身症とはどんな症状?原因・治療法・家族の接し方を紹介


「心身症」は単独の病名ではなく、ストレスや偏った生活習慣などの心理的・社会的要因が絡み合って発症する病気の総称です。胃潰瘍、糖尿病、高血圧といった身体疾患も発症にストレスが深く関わっている場合は、心身症として体と心の両面からのケアが必要になります。

ここでは、心身症の原因と代表的な症状、心療内科で行われる治療法について説明し、最後に家族や周囲の人の接し方について紹介しています。

心身症はストレスが原因で起きる体の病気

「心身症」は、主にストレスが引き金となって起こる病気の総称です。ストレスには、過重労働、長距離通勤、ケガや病気などの肉体的ストレスと、人間関係の不和、失業、大切な人との死別などの精神的ストレスがあります。

精神的ストレスにはつらい出来事だけでなく、結婚や新居への引っ越し、昇進、栄転など自分が望んでいたうれしい出来事も含まれます。これは、環境の変化や責任が重くなるという心理的負担がストレスになるものと考えられています。

こうしたストレスは全て有害というわけではありません。例えば、仕事でノルマを課せられた時、ノルマはストレスになりますが、緊張感が生まれてむしろやる気がわいてくるものです。つまり、ストレスはエネルギー源にもなります。しかし、その人にとって重すぎるノルマを課せられ、それが長期間続いたりするとストレスにうまく適応できなくなり、心身に変調をきたすようになります。

ストレスが要因で起きる病気には、身体症状が強く現れる「心身症」と、精神症状が強く現れる「うつ病」や「神経症(不安障害)」などがあります。心身症もうつ病などと同じ精神疾患と思いがちですが、心身症はストレスに体の器官や組織が反応して症状が現れるもので、抑うつや不安が根底にあって体に症状が現れる精神疾患とは区別されています。

日本心身医学会教育研修委員会「心身医学の新しい診療指針」によると、心身症の定義は「身体疾患の中で、その発症や経過に心理・社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう。ただし、神経症やうつ病など、他の精神障害に伴う身体症状は除外する。」とされています。

心身症は全身の器官に症状が現れる

心身症は特定の器官に起こるのではなく、身体のあちこちに現れ、症状も多彩です。心身症で見られる主な症状は以下の通りです。

神経系 筋収縮性頭痛、心因性めまい、冷え症、異常知覚、失声、チックなど
耳鼻咽喉科系 耳鳴り、めまい、心因性難聴、のどの異物感など
呼吸器系 気管支喘息、過換気症候群、神経性咳嗽(がいそう)など
循環器系 本態性高血圧、心筋梗塞、狭心症、不整脈、起立性低血圧症など
消化器系 胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群、慢性胃炎など
内分泌系 糖尿病、甲状腺機能亢進症、神経性食欲不振症、過食症 
婦人科系 月経前症候群、月経異常、更年期障害など
泌尿器科系 神経性頻尿、遺尿症、夜尿症など
皮膚科系 アトピー性皮膚炎、慢性蕁麻疹(じんましん)、円形脱毛症など
整形外科系 腰痛症、頸肩腕症候群、全身性筋痛症、関節リウマチなど
小児科系 気管支喘息、過換気症候群、憤怒けいれんなど
歯科・口腔外科 顎関節症、口腔乾燥症、口の痛み、味覚障害など

以上の症状は心身症特有のものではありません。ストレスとは関係なく、体質や食生活、感染、炎症などが症状を引き起こしている身体疾患もあります。身体疾患は薬で改善することが可能ですが、心身症の場合は、薬で症状を緩和することができても、ストレスが解消されない限りすぐ再発してしまいます。このように、内科や耳鼻科などで治療を受けているのに快復しない場合は、心身症として扱われます。

心療内科ではこのような治療が行われる

心身症を専門に診る診療科は「心療内科」です。心療内科では、発症の背景にあるストレスや性格、生活環境などの心理的・社会的要因に目を向け、心と体の両面からケアしていきます。

体の症状を改善する薬物療法

まずは身体症状を改善するための対症療法として内科で使用される薬が処方されます。抑うつや不安などの精神症状が強い場合は抗うつ薬や抗不安薬も用いられます。心と体は相関関係にあるので薬で体の症状が軽減されれば心も安定し、ストレスにも強くなります。

心の問題にアプローチする心理療法

薬で症状が安定した段階で心理療法(精神療法)を取り入れていきます。心理療法には次のようなものがあり、その中から患者さんに敵したものを選んで実施します。

簡易精神療法
医師が患者さんに「心配ありません」と重篤な病気ではないことを保証し、「大丈夫ですよ」と不安な気持ちを支えるもので、支持的療法といいます。軽症の場合はこれだけで症状がよくなることもあります。
カウンセリング
患者さんはストレスや自分の性格などが発症に関わっていることに気づいていないことが多いものです。カウンセリングで、症状が出るようになった時期などを質問すると、心と病気の関係に気づくことができ、それが症状の改善につながることがあります。カウンセリングの目的は、自分が抱えている問題や性格の偏りに気づき、同じことを繰り返さないよう、ひと回り成長した自分になることです。
認知行動療法
心身症の人の中には、たとえば上司に注意されると「自分は失敗ばかりする」と悲観的にとらえる人がいます。このように根拠もないのに決めつける思考パターンは認知のゆがみによるものと考え、「別の考えはないだろうか」と代わりの考えを探していきます。その場では「失敗ばかりする」と悲観しても、間をおいて考えると「この段階で注意されてよかった」とプラスにとらえることができます。このように別の角度から見直して認知の歪みを修正していくのが認知行動療法です。これによってストレスをコントロールできるようになります。

心身のバランスを整えるリラクゼーション

ストレスを上手にコントロールできない人は、常に体が緊張した状態にあるといわれます。そのような人には首や肩などの筋肉を緊張させたり緩めたりする筋弛緩法が有効です。筋肉のある部位に意識的に力を入れると緊張し、力を抜くと神経も同時にリラックスします。筋弛緩法はこの原理を利用したリラクゼーション法で、繰り返し行うと自律神経の交感神経と副交感神経のバランスが良くなって緊張しにくい体質にすることが可能です。

ただし、筋弛緩法は心身症の治療法として用いられていますが、うつ病やパニック障害のある人には心身の状態が不安定になる場合があると指摘されていますので、主治医に相談するようにしてください。このほか、生活習慣が乱れるとストレスが多くなるため、食事、睡眠、運動、労働、休養の習慣を見直し、本来の生活リズムを取り戻せるよう、生活指導も行っていきます。

周囲の人はどのように接すればいい?

心身症になる人には、人づきあいが苦手なタイプが少なくありません。そのため、ソーシャルサポートを受けにくく、孤立しがちです。ソーシャルサポートとは、家族や友人、職場の人たち、日常生活における役割など、その人を社会的に支え、援助してくれる存在のことをいいます。ソーシャルサポートが豊かな人ほどストレスに強く、心身症などの病気にかかりにくいといわれます。

もし、自分の家族や友人が心身症になってしまった場合は、腫れ物にさわるように過剰に気を遣うようなことは避けましょう。かといって過干渉も禁物です。対人関係がストレスになって発症した場合はなおのこと、「ああしなさい」「そんなことを考えてはダメ」と口うるさく指示したり否定したりするのは逆効果です。

うまくできているときは褒め、失敗したときは励まし、付かず離れずの適度な距離を保ちながらサポートしていくことが望まれます。

【参考】
「こころの耳」- 厚生労働省
「心身症の治療について」- 九州大学病院心療内科
「呼吸法の活用」- 東大附属病 心療内科

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