精神疾患とセロトニン、ドーパミン、アドレナリンの関係性

精神疾患とセロトニン、ドーパミン、アドレナリンの関係性


三大ホルモンと言われる「セロトニン」「ドーパミン」「アドレナリン」。名前だけなら多くの方が聞いたことはあるでしょう。

一説によると天才と言われる人は脳内ホルモンが活発だとされていますが、芸術家やミュージシャン等が覚せい剤を使用するのは、脳内ホルモンの分泌を促して良い作品を創り上げるためという話もあるほどです。

三大ホルモンはよくヘルスケア系の記事でも取り上げられますが、精神に関わる三大ホルモンはまだ研究段階で脳とどういった関係にあるかは未解明の部分が多いため、詳しいメカニズムはあまり解説されません。

そこでこの記事では、精神疾患という視点から三大ホルモンがどう影響しているを詳しく解説いたします。

精神疾患の主な症状と原因

精神疾患のことを世間ではよく「こころの病」と言います。「こころ」と聞くと「気持ち」「感情」「気分」などをイメージされるかもしれませんが、それらはすべて「脳」の働きに影響されています。主な精神疾患は以下の通りです。

【統合失調症】
考えや感情を一つにまとめられないため、不安感や幻聴、幻覚といった症状が現れる精神疾患です。詳しい原因はわかっていませんが、ドーパミンという脳の神経伝達物質が原因と言われています。
【うつ病】
気分の落ち込みや意欲の低下、眠れないなどの症状が現れる精神疾患です。ストレスや過度な疲労などによるセロトニンとアドレナリンの減少がうつ病を引き起こすと言われています。
【パニック障害】
異常な不安感に見舞われ、冷や汗や目まい、吐き気、震えといった発作を起こす精神疾患です。恐怖や不安という感情をつかさどる扁桃体のセロトニンが減少することが原因とされています。
【強迫性障害】
どうでもよいことを考えるのがやめられなくなったり、脅迫観念や不安感から何度も同じ行動を繰り返してしまったりする精神疾患です。ドーパミンが過剰な動きをするのが原因と言われていますが、セロトニンやノルアドレナリンも関係しているという説もあり、原因ははっきりしていません。

上記の精神疾患において脳内物質の名前がいくつか登場していますが、特にセロトニンは精神医学では大変重要だとされています。その理由を踏まえ、セロトニンの役割と精神疾患にどう影響しているのかを解説します。

セロトニンの役割と精神疾患への影響


セロトニンは「幸福ホルモン」という通称でよく知られています。一般的にセロトニンの認識は脳内ホルモンというイメージですが、実は脳より腸に多く存在しており、消化活動に貢献しています。

脳にあるセロトニンは、主な役割が「精神の安定」。セロトニンはストレスや興奮を和らげ、自律神経や感情をコントロールする効果があり、心の安定には欠かせない物質なのです。

逆に言えば、このセロトニンが不足すると「不安感に見舞われる」「気分が落ち込む」「眠れない」といった症状を引き起こします。つまり、セロトニンの減少がうつ病などの気分障害、パニック障害をはじめとした不安障害の元となるのです。

セロトニンを意図的に分泌させる方法

「セロトニンを意図的に分泌させることができれば、精神疾患とは無縁の生活を実現できそうだ」と思われるかもしれません。ただ残念ながら、セロトニンは体内では生成されません。

セロトニンはトリプトファンというアミノ酸から生成される物質ですですが、このトリプトファンは体内で生成されないため食事によって取り込む必要あります。トリプトファンは以下の食品に多く含まれています。

  • 豆類(豆腐や納豆など)
  • 乳製品(チーズやヨーグルトなど)
  • 青魚(ニシンやイワシなど)
  • 果物(バナナやキウイなど)

食べ物なら何でもトリプトファンが含まれているように見えますが、含有量は食物により違います。

【例】
ニシンに含まれるトリプトファン:100g中1300mg
イワシに含まれるトリプトファン:100g中870mg

大事なのは「トリプトファンを摂取しただけではセロトニンは生成されない」という点。トリプトファンからセロトニンを生成するには「運動」「太陽光」「ふれあい」が大切です。

適度な運動や人とのふれあい、日中に太陽光を浴びるといった健康的な生活を送ることで、結果的に幸せホルモンであるセロトニンが多く分泌されて精神疾患にも良い影響をもたらすのです。

ドーパミンの役割と精神疾患への影響


セロトニンの不足は精神疾患につながるとお伝えしましたが、脳内には他にもホルモン物質が存在します。たとえば統合失調症や強迫性障害は「ドーパミン」が関係するという説が有力。ドーパミンが分泌されることで人は以下のような状態になります。

  • 達成感や快楽を感じることで興奮状態になる
  • 同じ達成感や快楽を感じたい欲求が高まってやる気や意欲が出る

未だ分かっていない部分の多いドーパミンですが、現在のところ「快楽という報酬を得るためにドーパミンが分泌され、やる気や行動を起こす」という考え方が定説です。ただ、このドーパミンの働きが過剰になると精神疾患につながることも分かってきています。

【強迫性障害】
症状:どうでもよいことに囚われて同じ行動を続けるという特徴がある障害
原因:行動を抑制する大脳基底核に対してドーパミンが異常な働きをするという説が有力
【ギャンブルや薬物などの依存症】
症状:特定の物事に強く執着、依存し、生活に支障が出るほどやり続けてしまう症状
原因:ドーパミンの過剰分泌されることで通常の分泌量では満足感を得られなくなる

統合失調症はドーパミンが深く関係すると言われているものの、はっきりしたことはわかっていません。最近の研究では、不安や恐怖といった感情をつかさどる扁桃体に対し、ドーパミンが何らかの影響を及ぼしているのではないかと言われています。

つまり、ドーパミン分泌のバランスが崩れて扁桃体を過剰に反応させた結果として、幻覚や幻聴といった統合失調症の症状を引き起こしている可能性が高いのです。

ドーパミンを意図的に分泌させる方法

ドーパミンは「快楽ホルモン」と呼ばれており、快楽を感じると分泌されるため「脳内報酬」とも呼ばれています。端的に言えば「快楽を感じる出来事」さえあれば、ドーパミンを分泌させられるのです。

では具体的にどうすればドーパミンが分泌されるか、簡単で一般的な方法をご紹介します。

・仕事や課題などの目標を達成したら自分に報酬を与える
・好きな音楽をかけてモチベーションを上げる
・ドーパミンの基であるチロシンの多い食事を心がける(アーモンド、バナナ、牛肉、鶏肉、チョコレート、コーヒー、卵、緑茶、ヨーグルトなど)
・ドーパミンを増やすサプリメントを摂取する

ドーパミン分泌を促すサプリメントは様々な種類がありますが、有名どころでは「GABA」や「テアニン」などがあります。

その他、精神疾患に有効なサプリメントは以下の記事にてまとめてご紹介しています。

薬じゃない精神安定効果のあるサプリメント12選

アドレナリンの役割と精神疾患への影響


アドレナリンは危険やストレスを感じると分泌されるため「闘争ホルモン」とも言われています。アドレナリンが分泌されると心拍数を上昇させ、筋肉を収縮させるというメカニズムです。

似た名前に「ノルアドレナリン」というホルモンもありますが、2つの違いは以下の通りです。

アドレナリン
ノルアドレナリンから生成される物質で、恐怖や怒り、危険に反応して身体に作用する
ノルアドレナリン
恐怖や怒り、危険に反応して神経や脳に作用する

アドレナリンは精神というより身体に作用してストレスから身を守ろうとするホルモンです。アドレナリンがうつ病に関係すると解説する記事も多く見かけますが、正確にはノルアドレナリンの不足が原因です。

そもそもアドレナリンやノルアドレナリンは副腎という臓器で作られます。副腎の役割は、外部からのストレスに対して血圧を調整したり、エネルギー代謝を促したりすることです。

アドレナリンの分泌が続くと「副腎疲労」という状態になり、最悪の場合、生命に危機を及ぼします。仮に副腎が疲労していれば、アドレナリンやノルアドレナリンはなかなか分泌されません。結果、ストレス耐性がなくなり、何をするにもやる気が起きないという抑うつ状態になるのです。

アドレナリンを意図的に分泌させる方法

闘争ホルモンという名の通り、アドレナリンは危険な状況や戦いの場で分泌されるホルモン。簡単に言えば、アドレナリンの元になる食事を摂り、非日常的な体験や力を出さないといけない場面を自ら作ればよいのです。

・タンパク質の多い肉や魚、大豆の摂取を心がける
・競技スポーツを行ったり遊園地(ジェットコースターなど)で遊んだりする
・少しだけ負荷が強めの筋トレと有酸素運動

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注意点はアドレナリンが分泌される状況は身体に負荷がかかっているという事。心臓の弱い方や内部疾患などを抱えている方は食事や運動に制限があるため心配な方は医師への相談をオススメします。

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各ホルモン物質はどれが良いとか、何をすれば幸せになるとか簡単に言えるものではありません。今回ご紹介した三大ホルモンに「ノルアドレナリン」「ヒスタミン」を合わせたものを「モノアミン」と言い、どのホルモン物質も精神疾患への深い関係性が考えられることから「モノアミン仮説」と呼ばれています。

本来はそれぞれのホルモンがしっかり機能することが最も望ましい状態。各ホルモンのバランスが取れて初めて心も身体も健康であると言えるのです。

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