大人の行動パターンにも表れる「愛着障害」とは?症状・原因・治療方法等

大人の行動パターンにも表れる「愛着障害」とは?症状・原因・治療方法等

発達障害とよく似た症状を現す「愛着障害」をご存知でしょうか。

症状が自閉症スペクトラムに似ていることから、見分けが難しいとされている障害です。

名称からして、「愛情が足りなくて性格が歪む障害」などと思われるかも知れませんが、実はこの愛着障害、非常に複雑な障害で専門家の中でも見解が分かれています。

そこで今回は、現在の愛着障害に対する概念や症状を解説しつつ、まだ定かではない原因や治療方法も一般的にどう認識されているかをご紹介します。

発達障害?大人の愛着障害とは

愛着障害は幼児期の虐待やネグレクトによって起こる障害と言われていますが、正式な障害として認められておらず、定義も明確に定まっていません。

親を始めとした保護者との間で愛情や絆を深められなかったことが原因であるとされており、近年話題になることが多い大人の発達障害にも深く関係するのではないかと言われています。

愛着障害は「脱抑制性愛着障害」と「反応性愛着障害」に大別され、主に子どもの行動や心理的な問題に用いられる言葉です。

上記2つの愛着障害には、真逆とも言える症状が見られます。

脱抑制性愛着障害 大人なら誰にでも馴れ馴れしくしたり、わざと泣いたり乱暴な行動で大人の注意を引こうとする
反応性愛着障害 大人と視線を合わせない、近づいてきたかと思ったら逃げる、抱っこされても顔を逸らすなどの複雑な行動が見られる

子どもと養育者の間で絆を深められないのが愛着障害の主な原因であるため、薬による治療は行いません。

まずは専門のセラピーを受けつつ、養育環境を整えることで大半は改善されるとされています。

愛着障害を引き起こす原因

愛着障害については様々なメディアで定義や原因が述べられていますが、正確な愛着障害の定義や原因はまだ定められていません。

そのためメディアによって定義がバラバラだったり、曖昧な表現だったりするケースも少なくありませんが、アメリカで出版されている精神医学の診断基準を分類したDSM-5では、愛着障害の特徴がまとめられています。

公益財団法人 日本知的障害者福祉協会が公開するレポートで、DSM-5にまとめられた愛着障害の特徴を以下のように分かりやすく解説していますので、抜粋してご紹介します。

愛着障害は以下の要因により5歳以前に始まる
  • 楽しいことや刺激的なことなど子どもの基本的な欲求を持続的に無視する
  • 子どもの基本的な身体的欲求を無視する
  • 養育者が何度も変わることで安定した愛着の形成が阻害される

【参考】公益財団法人 日本知的障害者福祉協会

愛着障害は虐待が主な原因としつつ、身体的な虐待か精神的な虐待かという点においてまでは明記されていません。

重要なのは「5歳未満に始まり」という部分が、幼少の頃の養育環境の悪さが愛着障害かどうかの1つの判断基準となるようです。

大人の愛着障害に表れる症状

愛着障害には2種類あるとお伝えしましたが、実は愛着障害の種類によって大人になるまでの症状の変化にも違いがあると認識されています。

その違いは世界保健機関(WHO)のICD-10において定義された愛着障害の種類にからも分かりますが、例として厚生労働省がICD-10に沿って作成した「疾病、傷害及び死因の統計分類」を見てみましょう。

小児<児童>期の反応性愛着障害
この障害は、5歳未満に始まり、子供の対人関係におけるパターンの持続的な異常によって特徴づけられ、情緒的混乱を伴い、それは環境の変化に応じて変わる(たとえば、過度の警戒と恐怖、仲間との対人相互反応の乏しさ、及び相手に対する攻撃、精神的苦痛、及びある例では成長の停止)。
小児<児童>期の脱抑制性愛着障害
異常な社会的機能の特殊なパターンで、5歳未満に生じ、 環境的状況に著しい変化が生じても、持続する傾向が見られる。たとえばびまん性の非選択的に向けられる愛着行動、注意を惹こうとする、しかも誰かれかまわぬ親しげな行動、仲間との節制の乏しい相互作用及び状況に応じ情緒的あるいは行動的障害が伴うこともある。

【引用】厚生労働省「疾病、傷害及び死因の統計分類」

まとめると、「環境の変化により症状が悪い方向に変化する」「環境の変化があっても同じ症状が持続する」という変化で分かれています。

大人になってからの愛着障害という視点でさらに分かりやすく言い換えると、以下のように言えます。

反応性愛着障害 警戒心や恐怖心が強く攻撃的な対応をしてしまったり、何気ない発言に深く傷ついてしまったりする。そのため精神的な苦痛を頻繁に感じ、対人関係が乏しくなる。
脱抑制性愛着障害 立場に関係なく馴れ馴れしくし、目立つ行動により周囲の注意を引こうとする。またそれにより、場の空気を読めない問題のある行動を行ってしまうことが度々ある。

最初に愛着障害は発達障害と深い関係にあるとお伝えしましたが、上記のように考えると分かりやすいでしょう。

何気ない発言に突然怒りだしたり、空気を読まずに衝動的に行動したりする。愛着障害の症状が自閉症スペクトラムによく似ているため、発達障害に関係しているのではないかとも言われています。

ただ基本的には、愛着障害は後天的な障害、発達障害は先天的な障害と分けれてるため、明確に異なる障害とわれているのが一般的な認識です。

愛着障害の疑いがある大人の治療法は?

現在のところ、大人の愛着障害を治療するアプローチは確立されておらず、自分自身や周囲との関係において以下のような方法が愛着障害を軽減するとされています。

【周囲の配慮】
  • 本人の素直な気持ちを聞いてあげる
  • 本人を肯定してあげるよう努める
  • 聞き役に徹して否定的な意見も受け止める
【本人の行動】
  • 恋人や友人、信頼できる上司など心から信頼できるパートナーを見つける
  • 生活上で深刻な事態を引き起こす前に精神科医に相談する

大人になってから愛着障害が疑われる場合は、自分自身での克服と周囲の人との関わり合い方が症状の改善に欠かせないと考えられています。

大人の愛着障害を専門に診てくれる医療機関は現状多くありませんが、愛着障害を理由に生きづらさを感じ、結果的にうつ病や不安障害といった二次障害を引き起こす可能性も否めません。

「愛着障害かも?」と思ったら、ためらわず信頼できる人や精神科医へ相談したほうが良いでしょう。

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