就労・年金・福祉サービスは等級でどう変わる?精神障害の支援差を解説

就労・年金・福祉サービスは等級でどう変わる?精神障害の支援差を解説

精神障害者保健福祉手帳を取得した、あるいは申請を検討している人の中には、
「結局、この等級で何がどこまで変わるのか分からない」
「ネットで調べても情報がバラバラで、余計に混乱する」
と感じている人も多いのではないでしょうか。精神障害者保健福祉手帳の等級は、生活のしづらさを基準にした“支援の入り口”です。
しかし実際の支援は、「等級だけで一律に決まる」わけではありません。就労・年金・福祉サービスは、それぞれ見ている指標が異なる制度で成り立っているため、支援の差が分かりにくくなっています。
この記事では、

等級が「効く場面」と「効きにくい場面」
・就労・年金・福祉サービスごとの考え方の違い
・等級に納得できないときの現実的な対応

を整理し、わかりやすく解説します。

精神障害1級・2級・3級の概要、症状、診断基準による違い

なぜ混乱しやすい?等級が“刺さる”領域が制度ごとに違う

理由はシンプルで、手帳等級の判定は「精神疾患の確認→精神疾患の状態→活動制限→総合判定」という流れで行おこない、日常生活・社会生活の制約を総合的に見ます。
この軸は、年金や就労制度が重視する「稼ぐ力」「労働時間」「雇用率算定」と一致しません。だから「手帳2級なのに年金は…」のようなズレが起きます。

就労は等級でどう変わる?

就労面で一番大きいのは、等級よりも「手帳があるか」です。等級は、採用・配置配慮の話には影響し得ますが、制度上の入口は“所持”で決まる場面が多いです。
障害者雇用率制度では、実雇用率の算定対象を「身体・療育・精神の各手帳所持者」としています。つまり、精神は手帳所持でカウント対象になります。
また雇用率そのものも段階的に引き上げられており、企業側の障害者雇用ニーズは継続して高まりやすい状況です。

例えば以下が挙げられます。

障害者枠応募:
多くの求人で「手帳所持」が条件。等級指定は少なめ(ただし職務配慮の必要度で実質的に影響する場合あり)。

雇用率のカウント:
原則、週20〜30時間未満は0.5カウントですが、精神障害者は特例があり、週20〜30時間未満でも当分の間「1カウント」として算定できる扱いがあります。

支援機関の利用:
ハローワークや職業センター等は「手帳がなくても」対象になる支援もあります。

就労で詰まりやすい論点は「等級」より、働き方(労働時間)×職場配慮×支援機関連携です。等級は“説明材料”として効く場面があり、制度入口は“所持”で決まりやすい、と押さえると整理できます。

年金は等級でどう変わる?手帳と障害年金の関係

手帳等級と障害年金の等級は別物です。手帳があっても年金が自動で出る仕組みではありません。障害年金は「障害の状態が等級表に該当するか」を見ます。

障害基礎年金:原則1級・2級が対象
障害厚生年金:1級〜3級が対象

年金側は、生活制約だけでなく、加入歴や初診日、納付要件なども絡みます。

例えば、手帳2級でも、年金は不支給になる場合があります。手帳3級でも厚生年金加入歴があり状態が該当すれば、障害厚生年金3級に該当する場合があるため、注意してください。

年金は「手帳の等級」ではなく、年金の等級表と受給要件で決まる点を押さえておきましょう。

福祉サービスは等級でどう変わる?

福祉サービスは、①全国共通(税・一部減免)②自治体差(助成券など)③事業者差(運賃や料金)に分かれ、等級が効く場面もバラバラです。手帳は「支援の資格証」に近く、使えるメニューが多い反面、提供主体が分散します(国税・自治体・鉄道会社など)。

等級差が出やすい代表例は以下の通りです。

税(障害者控除)

精神障害者保健福祉手帳所持者は障害者控除の対象になり得ます。さらに手帳1級は「特別障害者」扱いになります。

鉄道運賃(第1種/第2種)

精神は手帳の記載で「第1種/第2種」に分かれ、目安として1級=第1種、2級・3級=第2種です。JR各社でも「第1種/第2種」表記のある手帳を前提に案内されています。
なお、精神障害者の鉄道運賃割引は、事業者ごとの判断で実施されており、第1種/第2種の扱いや割引の有無は会社によって異なります。必ず各社の案内を確認してください。

自立支援医療(精神通院)

自立支援医療(精神通院)は、原則1割負担+所得等で上限設定、という枠組みです。さらに自治体によっては、手帳用診断書1通で同時申請できる案内もあります。

重要なのは、手帳の有無にかかわらず対象になり得る点です。

「等級に納得できない」と感じたら

「等級に納得できない」と感じた場合、取れる手段は3つです。

・等級変更申請(状態変化)
・更新で再評価(2年ごと)
・行政不服の審査請求(期限あり)

どれが現実的かは「状態変化の有無」と「期限」で決まります。等級判定は「活動制限」を見るため、診断名だけで決まりません。生活実態が診断書に反映されないと、本人の体感と結果がズレやすくなります。

等級変更申請(有効期限内でも可)

東京都の案内によると、有効期限内でも、状態変化で別等級に該当すると考える場合、等級変更申請が可能です。「悪化したのに更新まで待つしかない?」を避けられます。

更新で再評価(2年ごと)

大阪市や東京都、大阪府の案内によりますと、手帳の有効期限は2年で、更新申請が必要です。更新は“再審査”なので、生活状況の書きぶり次第で等級が変わる可能性があります。

行政不服の審査請求(期限がシビア)

行政処分に対する審査請求は、原則「知った日の翌日から3ヶか月以内」です。精神障害者保健福祉手帳の不服審査は、国ではなく都道府県知事/指定都市市長側に対しておこなう扱い、という厚労省の整理もあります。

窓口名・提出先が明記されやすいため、実務上は決定通知書の「教示」に従うのが確実です。

年金の「不服申立て」は別ルート

年金について不服がある場合は、手帳とは別に、社会保険審査官への審査請求→再審査請求という流れになります。手帳と年金は混同しやすいため、分岐図や整理表を用意すると理解しやすくなります。

まとめ:等級は「答え」ではなく「支援につながる入口」

精神障害者保健福祉手帳の等級は、支援を受けるための大切な目安です。ただし、それだけで人生や支援内容が決まるわけではありません。

就労は、等級よりも働き方と配慮の整理が重要
年金は、手帳とは別制度で判断される
福祉サービスは、等級+自治体・事業者ルールで決まる

そして、等級に納得できないときも、等級変更・更新・不服申立てという選択肢があります。
「何級か」に縛られすぎず、今の生活で何が困っていて、どんな支援が必要なのかを整理することが、次の一歩につながります。

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