地域障害者職業センターと障害者就業・生活支援センターの違い

地域障害者職業センターと障害者就業・生活支援センターの違い

障害者雇用に関する情報を見ていて、「各機関が何をしているのかよく分からない」と思ったことはないでしょうか。

特に分かりづらいのが「地域障害者職業センター」と「障害者就業・生活支援センター」の違いです。

名称もどことなく似ていますし、実際に行われている支援内容を見てもよく分からないという方のために、「地域障害者職業センター」と「障害者就業・生活支援センター」の違いを明確に解説いたします。

「地域障害者職業センター」の特徴と支援内容

「地域障害者職業センター」とは、障害者の自立した雇用を支援するために設置が義務付けられた施設の1つです。

障害者雇用促進法19条により厚生労働大臣が設置するとされ、主な業務は「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」が行います。同法20条で定められた業務内容は以下の6つです。

・障害者に対する職業評価、職業指導、職業準備訓練及び職業講習
・雇用される障害者の職場適応に関する助言や指導
・事業主に対する障害者の雇用管理における助言や援助
・職場適応援助者の養成や研修
・障害者就業・生活支援センターやその他機関に対する職業リハビリテーションの技術的助言や援助
・前各号に掲げる業務に附帯する業務

上記のように、就労面における支援を行っているのが地域障害者職業センターの特徴です。

地域障害者職業センターは、障害者を雇用する事業主と雇用される障害者の双方をサポートし、安定した雇用を目指すための支援機関になります。

「障害者就業・生活支援センター」の特徴と支援内容

「障害者就業・生活支援センター」は、障害者の自立した雇用を図るために、就業と日常生活の両面からサポートする支援機関です。

障害者雇用促進法27条では、一般社団法人や社会福祉法人などからの申請を基に都道府県知事が指定できるとされています。

先ほどの地域障害者職業センターは「事業主と障害者」双方の支援でしたが、障害者就業・生活支援センターの主な支援対象は「障害者」です。

直接的な職業訓練などを行う機関ではなく、相談や助言、各機関への斡旋がメインになります。

障害者雇用促進法28条で定められた、障害者就業・生活支援センターの業務は以下の通りです。

・障害者の相談に対する助言等を行い、ハローワークや地域障害者職業センターなどの関係機関と連携した総合的な支援
・地域障害者職業センターなどで受けられる職業準備訓練の障害者への斡旋
・その他、障害者が職業生活における自立を図るために必要な業務

障害者就業・生活支援センターは、就労面と雇用面の両方を支援する機関で、事業主に対する助言も一部行いますが、基本的に支援対象は障害者です。

生活面と雇用面の両方をバックアップすることで、より安定的な就労を目指すのが主目的となっています。

地域障害者職業センターと障害者就業・生活支援センターの役割

地域障害者職業センターと障害者就業・生活支援センターの支援概要を解説しましたが、「役割がどう違うのか分かりづらい」と思われた方もいらっしゃるかと思います。

どちらも障害者雇用における企業と障害者の間を取り持ったり、最適な支援をする機関ですが、各機関との連携や生活面での相談や支援体制があることから、障害者就業・生活支援センターの方がいくらか障害者に近い存在と言えます。

先ほどご紹介した各センターにおける業務内容の違いをもう少し詳しく見てみましょう。

地域障害者職業センターの役割

職業評価 障害者本人の希望を把握し、希望の職場に適応するための職業能力評価や必要な支援、個々の職業リハビリテーション計画を作成する
職業準備支援 確実に就職の段階へ移行させるため、作業実習や講習、社会生活技能訓練を行って基本的な労働習慣を身に付け、業務遂行能力やコミュニケーション能力の向上を支援する
職場適応援助者(ジョブコーチ)支援 就職や職場定着を図るため事業所にジョブコーチを派遣し、障害特性に合わせて障害者と事業主に直接的な援助を行う
精神障害者総合雇用支援 医療機関と連携した上で精神障害者の雇用や職場復帰、定着支援に関する専門的かつ総合的な支援を精神障害者と事業主に対して実施する
事業主に対する相談・援助 障害者が取り組みやすい業務の設計や指導方法、職場定着に関わる相談や援助を一貫して行う
職業訓練に関する関係機関への助言・援助等の実施 障害者就業・生活支援センターを始めとした関係機関や事業主に対して職業リハビリテーションに関する助言や援助を行い、各機関の職員の知識や技術向上のためのマニュアル作成や研修を行う

障害者就業・生活支援センターの役割

障害者の就労に関する支援 職業準備訓練や職場実習を行う機関への斡旋、就職活動や職場定着の相談や支援を行う
事業所に対する助言 障害の特性に合わせた雇用管理について事業者に助言を行う
生活習慣に関する助言 障害者に対し、健康や金銭の自己管理や生活習慣の形成、その他地域生活に関する助言を行う
その他日常生活における支援 住居や年金、余暇活動などの地域活動や生活設計に関する助言を行う
その他支援 関係機関との連携によりその他支援も行う

地域障害者職業センターと障害者就業・生活支援センターの違いまとめ

最後に、地域障害者職業センターと障害者就業・生活支援センターの違いを一覧表でまとめて見てみましょう。

  地域障害者職業センター 障害者就業・生活支援センター
根拠法 障害者雇用促進法 第19~26条 障害者雇用促進法 第27~33条
運営機関 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 一般社団法人、一般財団法人、社会福祉法人、特定非営利活動法人、その他厚生労働省令で定める法人
支援対象者 障害者・事業者 主に障害者
支援内容 ・職業評価 ・障害者の就労に関する相談や助言、斡旋
・職業準備支援 ・障害者に対する生活習慣への助言
・ジョブコーチ支援 ・障害者のその他日常生活における助言
・精神障害者総合雇用支援 ・関係機関との連携によるその他支援
・事業主に対する相談や援助 ・事業所に対する雇用管理の助言
・職業リハビリテーションに関する関係機関への助言や援助  

先述した通り、まず障害者の相談窓口として「障害者就業・生活支援センター」があり、その後「地域障害者職業センター」を始めとした各機関にて具体的な支援が実施されると捉えていただければ良いでしょう。

なお、障害者就業・生活支援センターは通称「ナカポツ」と呼ばれており、以下記事にて詳しい業務内容や支援内容を解説しています。

地方自治体が指定する就労支援機関「ナカポツ」とは?利用の流れや相談内容等

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