「障害者枠の正社員の求人はないだろうか」
「障害者で正社員になるのは可能なのだろうか」
給与面や福利厚生の充実度を考えると、正社員として勤務したいと考える障害者の方は多いでしょう。
障害者枠から正社員になるのは厳しいイメージがありますが、実際にはどうなのでしょうか。
この記事では、障害者が正社員になる具体的な方法を解説します。
企業は一定割合障害者を雇用する義務がある
まずは、障害者雇用の実態を見てみましょう。障害者雇用では、法定雇用率が企業や自治体等に定められています。
事業主区分 | 法定雇用率 |
---|---|
民間企業 | 2.2% |
国、地方公共団体等 | 2.5% |
都道府県等の教育委員会 | 2.4% |
対象となる事業主の範囲は従業員数45.5人以上です。法改正により、平成30年4月1日より従業員50人以上から45.5人以上となりました。さらに、令和3年3月1日より43.5人以上になる事が決まっています。
民間企業の障害者雇用率は2.2%とされていますが、実際には未だこの数字は達成されていません。
厚生労働省が行った「障害者雇用状況の集計結果」によると、民間企業の障害者雇用数は53万4769人、実雇用率は2.05%との結果が出ています。
障害者雇用数、実雇用率ともに過去最高の数字ですが、基準である2.2%を達成した企業は全体の50%に満ちません。特に、従業員50~100人未満の中小企業での数字が低いのが課題となっています。
企業は法定雇用率を達成する義務がありますから、今後、障害者採用に積極的に取り組む企業は益々増えていくと見られます。
障害者雇用の正社員率は?
それでは障害者雇用の正社員率はどの程度なのでしょうか。
厚生労働省の平成30年度障害者雇用実態調査によると、障害者雇用の正社員率は、身体障害者52.5%、知的障害者19.8%、精神障害者25.5%、発達障害者22.7%となっています。
身体障害者の正社員雇用率は、他の障害と比べ、ひときわ高いことが見て取れます。精神的な障害を抱える人と比べ、身体障害者は複雑な作業を任せやすく、人間関係でのトラブルも生じにくい点などが理由でしょう。
知的障害や精神障害・発達障害者についても、正社員雇用率は約2割です。つまり、5人に1人は精神的な障害を抱えていても、正社員として勤務しているということになります。
このように、身体障害であれ精神障害であれ、正社員になるのは決して不可能ではありません。では、どのような方法を使い、正社員として採用されるのでしょう。
障害者雇用ではじめから正社員の求人は少ない
まず、考えられるのは障害者雇用の正社員枠を利用して入社するパターンです。
しかし、現状、障害者雇用ではじめから正社員の求人はそう多くありません。なぜなら、障害者は一般の人と比べて、どうしても短期離職の確率が高いためです。
正社員は長期間の勤務を前提としているため、短期離職の可能性が高い障害者の場合、正社員にしづらいのです。
障害者総合研究所が行った「転職・退職理由に関するアンケート調査」によると、「前職について、実際に入社後どれくらい経過して退職・転職したのか?」という質問に対し、3割の人が「1年未満で退職・転職した」と答えています。
企業側もコストを負担して採用活動を行います。せっかく採用してもすぐ辞めてしまうのでは採用を躊躇してしまうのも致し方ありません。
障害別にみると、身体障害者の1年未満の離職割合は18%、精神障害者の1年未満の離職率は46%と、明らかに精神障害者の数字が大きいです。
このような精神障害者の短期離職率の高さが、先程も確認した正社員率の低さに影響を与えている可能性は高いです。
とはいえ、障害者の正社員枠を設ける企業もあります。例えば、通信大手ソフトバンクでは以下の条件で、募集を行っています。
採用企業 | ソフトバンク株式会社 |
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雇用形態 | 正社員 ※試用期間(3ヵ月) |
職種 | ・総合職(総合コース・営業コース・エンジニアコース)
・アソシエイト職 |
勤務地 | 総合職 ・本社:東京 ・各事業所:全国各地(札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡 など) 海外(アメリカ・イギリス・中国・韓国・シンガポール・インド など) ※全国・海外転勤あり アソシエイト職 販売職 |
応募資格 | 総合職 2021年3月末までに国内外の大学院、大学、高等専門学校を卒業・修了(見込み)の方 アソシエイト職/販売職 |
勤務時間 | 総合職/アソシエイト職 原則午前9時~午後5時45分(実働7時間45分+休憩時間 原則12時~13時までの1時間) 販売職 |
給与 | 総合職 ・高専卒(本科):月給233,000円~ ・大卒・高専卒(専攻科):月給243,000円~ ・修士了:月給264,200円〜 ・博士了:月給274,800円~ アソシエイト職 販売職 |
休日・休暇 | 週休2日制(年間休日日数 126日/2019年度実績) 年次有給休暇 慶弔休暇 リフレッシュ休暇 産前産後休暇 育児休業 |
待遇・福利厚生 | 財形貯蓄 持株会 慶弔見舞金 確定拠出年金制度 育児支援制度 |
【参考】ソフトバンク株式会社 障害者採用
ソフトバンクでは、身体障害者だけでなく精神障害者の採用実績もあります。また、聴覚障害者には筆談対応・電話応対の免除、内部障害には通院への配慮など障害への配慮を行うと明記されています。
障害者雇用で正社員になりたいならまずは契約社員から
雇用する企業側は、正社員には障害の有無にかかわらず、長い間勤務し責任ある仕事を担当してもらいたいと期待します。
離職率が高い障害者の場合、まずは契約社員として採用し、職場や業務へのマッチ度や勤怠状況などを鑑み、正社員への登用を目指すという流れが一般的です。
まずは、「正社員登用あり」と記載のある契約社員の求人を探してみることをおすすめします。
注意していただきたいのは、正社員登用制度があるからといって、必ずしも正社員になれるとは限らない点です。
契約社員から正社員になるためには、遅刻しないか、勤務態度はまじめかなど仕事に取り組む姿勢が重要です。障害によってできないことがあるのは致し方ありません。
しかし、挨拶や報告・連絡・相談を丁寧に行っていれば、徐々に周囲から信頼を得ることができます。
また、契約期間は、社員側が企業をチェックする期間でもあります。サポートもなしに慣れない仕事をさせられる、休憩の時間が設けられていないなどの劣悪な労働環境が無いか確認してください。
働きづらい職場だと感じるなら、無理にそこで働き続ける必要はありません。じっくりと精査して、障害者への配慮やサポート体制が整っている会社を見つけ、正社員登用を目指しましょう。
【参考】
障害者雇用率制度 ‐ 厚生労働省
障害者雇用状況の集計結果 ‐ 厚生労働省
転職・退職理由に関するアンケート調査結果 ‐ 厚生労働省
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