障害者雇用を検討する企業にとって、精神障害者の仕事内容を考えるのは容易ではないでしょう。
基本的に精神障害者の仕事内容は、簡単で単純なものが多いと言われていますが、個々の障害に応じて適正な業務は変わるため、一概に「こんな業務が良い」とは断言できません。
では、実際に就労している精神障害者はどんな職種でどんな仕事を行っているのでしょうか。
この記事では精神障害者の仕事内容を「クチコミ」「データ」から探り、精神障害者の仕事内容に多様性を持たせるヒントをご紹介します。
精神障害者雇用の現状が分かるクチコミ
一般的に精神障害者の就職は難しいと言われていますが、実際に就労している障害者はどのような仕事をしているのでしょうか。
まずはTwitterの投稿から業務内容の様子を見てみましょう。
精神障害者のつぶやき
仕事は
⏺️切り分けられた業務
⏺️定型業務は少ないその日暮らしな感覚になる。
障害者雇用のスキルアップは
自分でこっそり進めようと
決心。#鬱病 #うつ病 #障害者雇用— さっしーメンタル不調からの転職請負人❗ (@taku6293) October 9, 2018
発達障害、障害者雇用。
どんな仕事をしているの?
私の場合。
・メインの業務。それに伴う、PCのフォーマットにデータ入力や管理、メール、たまに電話もするし、かかって来る。
・荷物、郵便が多い。取りに行ったり、まとめたり。
・電話の取次。
・その他手伝い。
業務量は他の人より少ない。— 生足魅惑のマーメイド。 (@TimTamDARK) May 10, 2019
ツイートを見る限り、やはり精神障害者の仕事内容は簡単な業務が多いようです。
実際に障害者雇用の求人でも、データ入力や書類の仕分け、コミュニケーション能力に障害がなければ電話受付といった簡単な仕事内容を多く見かけます。
では、実際に就労している人や現場を知っている人は、精神障害者雇用の現状をどう思っているのでしょうか。
今度はYahoo!知恵袋の投稿から、参考になる質問とベストアンサーをご覧ください。
- 【質問】
- 障害者も仕事をしたい時代になったのは何故ですか?作業所はどこも満杯で面談も二ヶ月待ちと聞きました
- 【ベストアンサー】
- 障害を持つ方も自分に出来る仕事をする事は、当然のこと。働く喜びを感じて生きていく事は素晴らしいことです。(中略)沢山の障害者施設を見学しましたが、観光地のお菓子の箱の組み立て、納豆の上に薄いフィルムを置く仕事、ケーキのイチゴの選別…みんな自分の障害の程度にあった仕事を一生懸命されていました。1日一杯働いても、貰う給料は、驚くほど薄給。なんか違うな、と毎回思います
【引用】Yahoo!知恵袋
働く意義は人によって見方や考え方が違います。ご紹介した回答者の方は、しっかり給料をもらってやりがいのある仕事に就くことが望ましいという考えのようです。
一方で、簡単な作業のほうが良いという意見もあります。
- 【質問】
- 障害があり、向いている仕事がわかりません。短時間勤務で、記憶することが少なく、単純作業の仕事がしたいです。体力がなく疲れると眠くなるので、清掃の仕事と工場の仕事は向いていません。
どんな仕事があるでしょうか?就労継続支援A型で働くという手もありますが、障害枠のパートで働きたいと思っています。- 【ベストアンサー】
- 清掃の仕事は現場によるのかもです。私はフルタイム、同僚は短時間ですが、今の現場は単純作業ですしさほど体力も必要としません、マイペースで作業が出来て、疲れたら手を休められる職場です。前勤めた現場は細かく覚える事が多くて次から次へと手を休める暇は無かったです。
【引用】Yahoo!知恵袋
精神障害者の仕事内容は単純な作業が多いという事実に対し、当事者の感じ方は様々なのが分かります。
バリバリ働きたくても障害の種類や症状の影響で働けない人もいます。
障害者によって「やりがいのある仕事がいい」「単純な仕事内容がいい」と意見が分かれても何らおかしなことではないのです。
もう1つ、Twitter上で気になる投稿がありました。
発達障害のオレに「人並みに仕事をしろ!」と言われても困る。オレも出来るものなら人並みに仕事がしたい。でも、出来ないから障害者手帳を持ち障害者枠で就職し、自分に出来る仕事を選ぶしかなかった。精神障害者に人並みに仕事をしろとは足のない人にサッカーを上手くなれと言っているのと同じだ!
— 閑隠(かんいん) (@gutarokyoto1173) November 29, 2019
こちらの方は障害者雇用で就職し、一般雇用枠と同じ業務を行わなければならない現状に葛藤しているようです。
精神障害者の雇用は給料が少なく単純作業が多いとよく言われますが、全ての会社が同様ではありません。
障害者雇用の理解が浅い企業で精神障害者に責任ある仕事を任せた結果、意図せず本人を追い詰めてしまうケースも少なくないのです。
精神障害者の仕事内容が分かる職種・業種のデータ
障害の有無に関係なく、職業を選ぶ権利はありますが、精神障害者の雇用という視点で見ると少々事情が違います。
たとえ本人がやりがいのある仕事を希望しても、なかなか叶わないのが実状なのです。
事実、厚生労働省が公表している平成30年度障害者雇用実態調査における「精神障害者の職業」を見ると、精神障害者の職業に大きな偏りがあるのが分かります。
「農林漁業」や「建設業」などでは精神障害者がほとんど雇用されていないのに対し、最も多く雇用されているのが「事務」「販売」「サービス」となっています。
専門知識や安全確保が最重要な職種もあり、精神障害により判断能力や体力面が不安であれば、企業側も簡単には採用できないでしょう。
結果、精神障害者の雇用が進まない業界が出てくるため、精神障害者にとって選べる仕事内容が限られているのです。
就職しても仕事がない?業務切り出し方のポイント
精神障害者の仕事内容が限られてしまう主な理由は「仕事の切り出しの難しさ」が挙げられるでしょう。
精神障害者を対象とした求人はありますが、多くの企業は精神障害者の雇用について仕事の切り出し方が難しいと感じています。
その根拠として、平成30年度障害者雇用実態調査の結果に以下のようなデータがあります。
企業により障害者雇用が難しいと考える理由は様々ですが、グラフの通り、圧倒的に「仕事がない」との回答が多くなっています。
特に昨今は、業務の効率化や合理化が事業戦略における大事な要素。つまり「仕事の切り出しが難しい」と考える企業の多さが、精神障害者の就職が難しいと言われる主な要因なのです。
ただ、仕事の切り出し方にはコツがあり、日常業務を以下のポイントで捉えると具体的な仕事の切り出しがしやすいかもしれません。
- 「職種」や「仕事内容」で捉えるのではなく「作業工程」の中で切り出せるポイントを探す
- 作業工程がない仕事は各担当者の業務内容をフロー化して、カットしたら効率の上がる作業を切り出す
- 後回しにしている仕事や残業時間を使って行う仕事を切り出す
- 本人が得意としている業務や作業、分野を聞き出し、社内活動や事業に活かせないか探る
作業フローを作成するだけでも業務の流れを意識できるようになるため、業務効率向上の効果が期待できます。
その上で他の人に任せたい仕事を切り出せれば、更に業務効率をアップさせられるでしょう。
【出典】平成30年度障害者雇用実態調査の結果を公表します(厚生労働省)
精神疾患の方におすすめな仕事を一覧でご紹介
精神障害者の仕事内容に多様性を持たせるには、障害の特性や本人ができる事をどこまで共有できているかがポイントです。
具体的にどんな仕事内容があるか一覧でご覧ください。
- 書類のスキャンやPDF変換
- 資料の発送や郵便物の仕分け
- 書類やデータの正誤チェック
- Excelや社内システムへのデータ入力
- イベントや会議で使用する資料の作成
- 業界動向のチェックや情報収集
- 各種データの集計や統計
- 電話応対
- 物品確認や倉庫内の整理
- 清掃や駐輪場などの整理
- 自社サイトや自社ブログの更新
- etc…
ルーティンワークの多い会社は精神障害者ができる仕事を切り出しやすいと言われますが、そうでない会社でも切り出せる業務はあるはずです。
ポイントはやはり、障害の特性や雇用する精神障害者ができる事をどこまで理解できているか。
これを機に自社の事業に活かせる業務を掘り出し、精神障害者雇用を積極的に検討してみてはいかがでしょうか。
執筆者プロフィール