マリリン・モンローやスティーブ・ジョブズも?4つのパーソナリティ障害と疑われる著名人を紹介

マリリン・モンローやスティーブ・ジョブズも?4つのパーソナリティ障害と疑われる著名人を紹介


世の中には様々な性格の人々がいますが、その性格故に、社会の道徳や規律とかけ離れた行動をとってしまい、簡単には良好な関係を築くことができない人もいます。こうした性格による問題が著しい場合「パーソナリティ障害」を患っている可能性があります。この障害の患者は、その性格のために周囲に対してだけではなく、自分も苦悩を抱えています。
独立行政法人国民生活センターが発行する「国民生活研究」の2022年7月分に臨床心理士・公認心理師の岡田裕子さんによる「消費生活相談における難しい相談者の理解と対応」という報告書が掲載されています。そこには消費生活の相談において、パーソナリティ障害の観点から関係構築に労力が必要な相談者への対応などについて詳しく述べられています。本記事では、この報告文に書かれた順に従い、困難さをもたらすパーソナリティ障害の四つの類型の、主に特徴や疑われる人物に焦点を当てて紹介していきます。

1.境界性パーソナリティ障害

境界性パーソナリティ障害とは、見捨てられることに対する強い不安により、感情や衝動を制御できなくなるパーソナリティ障害といえます。その原因について、脳の機能や生活環境の面で様々な指摘がありますが、特に幼少期において虐待を受ける、養育者から引き離されるなどで十分な愛情を注がれないような経験があることが注目されています。主な特徴を下記に示します。こうした特徴について、岡田さんはいずれも別々のものというわけではなく、それぞれが関連し合っていると、先述の報告書で説明しております。

  • 見捨てられないよう必死に行動する
  • 自己像や人間関係が不安定で相手に対する理想と実際の評価との間で揺れ動く
  • 気分や感情が変わりやすく些細なことで怒り出すなど制御が難しい
  • 自らを傷つけかねない衝動的な行動

この障害が疑われる人物について、戦後アメリカで人気を博した名女優、マリリン・モンローは、この障害を患っていたと思われています。幼少期に養護施設や里親に預けられ、病を患った実母と離れ離れの生活を送ってきました。その影響か、3度も結婚・離婚を繰り返しており、周囲との衝突もささやかれていました。そして36歳で急逝し、死因は睡眠薬の過剰摂取だったといわれています。

2.自己愛性パーソナリティ障害

自己愛性パーソナリティ障害とは、簡単に言えば自分は特別な存在であるという思い込みが強いパーソナリティ障害です。主な特徴として、自分は特別で優れているという意識と、そのように周りから評価されるのが当然と信じる、他者に対して共感しにくいといったことが挙げられます。また、この障害を持つ患者の中には、実際に特別な才能や能力を持っていることがあります。
著名人の例として、「Macintosh(マッキントッシュ)」や「iPhone」などを生み出した、世界的に名高い大企業アップルの創業者、スティーブ・ジョブズ氏は、自己愛性パーソナリティ障害だったといわれています。そのたぐいまれなる才能により、今なお影響を与え続ける大人気製品を作り上げてきましたが、生前の人間関係は決して良好ではなく、社員はその身勝手さに振り回され、傷つけられたという数多くの逸話があったそうです。

3.妄想性パーソナリティ障害

妄想性パーソナリティ障害は、疑い深く他者に対する信頼が難しいパーソナリティ障害といえます。根拠が乏しい場合であっても他者とその言動に対し強く疑って不信感を抱く、己が他者に騙されたり都合よく利用されたりすることを恐れ、自分の秘密を打ち明けようとしないといった特徴があります。
その代表例について、第二次世界大戦の前後にかけて、現在のロシアであるソビエト連邦の指導者を務めたスターリンは妄想性パーソナリティ障害だったのではないかといわれています。1930年代に「大粛清」と呼ばれる弾圧を行い、民衆も含め68万人もの犠牲者を出したとされています。また、一度でも敵の捕虜となった自国の兵士に対しても、スパイの疑いをかけ「祖国への裏切り者」とみなし容赦しなかったともいわれています。

4.反社会性パーソナリティ障害

反社会性パーソナリティ障害は、社会における規範に従わず、他者の苦しみに意識が向きにくい障害です。主な特徴として、規則や法律を軽視し、それらに反する行為を繰り返す、平気で嘘をつく、己や他者の安全に関心がない、他人を傷つけることへの罪悪感に乏しい
衝動性が強いといったことが挙げられます。また、先述の岡田さんの報告書では、犯罪ではなくとも軽い違法行為や嘘を平気で繰り返している人についても、この障害の観点から理解できると説明しています。
この障害が疑われる人物について、アメリカの連続殺人犯、テッド・バンティが反社会性パーソナリティ障害だったと思われています。1970年代を中心におびただしい数の若年女性を平然と殺害しており、被害者は供述では30人ですが、それ以上の数ともされており、正確な犠牲者数は不明です。なお、報告書において、このような連続殺人犯はこの障害の極端な例であり、高い社会的地位にありながら贈収賄罪や脱税、その他の違法な行為により私腹を肥やす人物などにも、反社会性パーソナリティ障害の人が含まれている可能性があると説明しております。

まとめ

ここまで読んでみて、パーソナリティ障害があると関わりにくいという印象を抱いたという方は多いと思います。最後に、岡田さんは消費生活相談に従事する人に向けてこの報告書を作成しましたが、その他の場面においてもこうした特性の持ち主との対応全般に当てはまる内容もあります。それを踏まえてどのように関わっていくか提案してこの記事のまとめとさせていただきます。
このような特徴があるからといってパーソナリティ障害を患っているというわけではなく、別の精神病がある、または併発している可能性があり、それらの区別は決して容易ではありません。いずれにせよ障害の特性について理解を深め、それを踏まえて良好な関係を構築するために接する態度に気を付けることがパーソナリティ障害の患者と関わるうえで重要になるでしょう。

 

【参考】「消費生活相談における難しい相談者の理解と対応」

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