障害者雇用について徐々に社会的な認知が広まってきていますが、障害者を雇用するとなると、正直なところ「何かメリットがあるんだろうか」と考える企業も少なくないでしょう。
企業が障害者を雇用するメリットは多くありますが、残念ながらあまり周知・理解されているとは言えない状況です。
障害者の方は一般の社員と比べて業務効率で劣る部分はあるかもしれませんが、適切なプロセスを踏み、支援や助言を受けつつ安定した雇用が実現できれば、たとえ障害があろうとも企業にとって重要な人材になり得るのです。
この記事では、企業が障害者雇用で得られるメリットを5つ厳選してご紹介いたします。
助成金や奨励金が受け取れる
まず、障害者雇用のメリットとして「助成金や奨励金を受け取れる」という制度があります。
障害者を雇用するまでには様々なパターンがありますが、仮に「障害者雇用について知ること」から始めて、その後「適性の見極めや相互理解を深める」「障害者を雇用する」という流れだとすると、受け取れる助成金は主に以下のようなものがあります。
- 【職場実習受入謝金】
- 障害者雇用について知るために実習生として受け入れる際の助成金
- 【トライアル雇用】
- 適性の見極めや相互理解を深めるための試用期間として雇用すると受け取れる助成金
- 【特定求職者雇用開発助成金】
- 実際に障害者を雇用すると得られる助成金
まず障害者を雇用したことがなく、そのノウハウが足りなかったり不安がある場合に「職場実習」という形で受け入れを行うことができます。
実際に受け入れを行うと、職場実習受入謝金として「日額5000円」が支給されます。
その後、ある程度のノウハウを得て、実際に障害者を雇用する前に「トライアル雇用」という制度を活用して、お試し期間のような形で雇用することでも助成金が受け取れます。
支給額は障害の別や働く時間により違いますが、トライアル雇用した障害者1人につき月額4万円が支給されます。
最後に、実際に障害者を雇用することになった場合「特定求職者雇用開発助成金」も受け取ることができます。全4期分のうちトライアル雇用を1期分として、残り3期分で90万円が支給されます。
他にも様々な障害者雇用の助成金や奨励金があり、障害者雇用の方法を知るところから安定した継続雇用に至るまでに色々な助成金を利用できるのは、企業側にも大きなメリットになります。
社会貢献や社外へのアピールになる
一昔前と違い、昨今の企業に求められるものにコーポレート・ガバナンス(企業統治)、ディスクロージャー(情報開示)、コンプライアンス(法令遵守)といった「社会的責任(CSR)」があります。
これらは企業価値を高めるために重要な考え方として現在では多くの企業が取り入れています。
障害者雇用は紛れもなく社会貢献につながりますので、CSRを向上させるきっかけとなり、「企業として社会的責任を果たしている」という社外へのアピールに繋がります。
多様性・個性の認め合いに繋がる
CSRだけでなく、ここ最近では「ダイバーシティ(人材の多様性)」の重要性も認知されるようになりました。
障害者を従業員として受け入れることでダイバーシティの推進に繋がることから、既存の従業員のモチベーションを上げることに繋がったというケースが多いようです。
事実、エン・ジャパンが運営している「人事のミカタ」というサイトで行った調査では、障害者を雇用したことについて以下のような意見があったとの結果が公開されています。
- 聴覚障がい者を雇用することになって思い切って手話を覚えた
- 一つのことを一生懸命にしてくれる。従って、一度覚えたら間違いは滅多なことで発生しない
- 全従業員にとって働きやすく安全な職場になった
- 客先との仕様で求められていない業務を担ってもらうことで客先から高評価を得ることができた
障害者を雇用することで社内が良い意味で変わるというのは、明らかに企業側のメリットと言えるでしょう。
ワークシェアリング・人手不足解消
障害者を雇用するにあたり、企業は「業務の切り出し」を行うことになります。障害を持っている人でも行える作業を既存の業務から抜き出して、代わりに行ってもらうということです。
これはワークシェアリングという一人で抱え込みがちな業務をみんなで分け合おうという考え方であり、現社員の負担を少しずつ切り出して雇用した障害者の方に行ってもらうことで、業務効率の向上だけでなく、残業の削減や付加価値の高い仕事を創出することなどに繋がります。
そもそも、求人を行っても全く人が集まらないという企業にとって、障害者雇用で生産性を上げられるならば人手不足の解消にも繋がることでしょう。
優秀な人材の発掘ができる可能性も!
さて、ここまでは「障害者でもできる仕事」というニュアンスで話しを進めてきましたが、実は「障害者にしかできない仕事」というものも注目されています。
例えば、視覚や聴覚に障害のある人は、それをカバーするために集中力が健常者よりも高いと言われていますし、家に引きこもりがちだった精神障害者の方が、自宅にいる間にプログラミングスキルを習得しているケースもあります。そもそも精神障害者の方には高学歴の人が多いとの意見もあるほど。
実際に障害者の就労支援施設では「WEBサイト作成」や「簿記やMOSなどの資格取得」、「英会話」といったカリキュラムを組んでいる所も数多くあります。
障害者雇用においては個々の特性を活かすことが大事です。「障害者でもできる」ではなく「障害者ならでは」のスキルを持った優秀な人材を発掘できる可能性があるのは、企業側の最大のメリットではないでしょうか。
まとめ
今回は障害者雇用における企業側のメリットにスポットを当てて解説してきました。
あまりメリットばかりを考えてしまっては、障害者を雇用するという意識が希薄化する可能性がありますので、あくまで「雇用すること自体に意味がある」という程度の認識で採用などに望まれたほうが良いかもしれません。
とはいえ、障害者を雇用するメリットが多いのは事実ですので、これを機に障害者雇用の方法や流れ、制度などについて学ぶ機会を作ってみてはいかがでしょうか。
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