障害者雇用の給与水準を徹底調査!高い?安い?年収の相場を解説

障害者雇用の給与水準を徹底調査!高い?安い?年収の相場を解説


「障害者雇用で働きたいけれど、給与が気になる」
「給与水準はどれくらいなのだろうか?相場を知りたい」

この記事では、障害者雇用に関心のある方、給与相場が気になる方に向けて、障害者雇用の給与水準を解説します。

年収を上げるための方法についても解説しますので、ぜひ最後までお読みください。

障害者雇用の実態がわかる「障害者雇用実態調査」

障害者雇用の実態を知るのに役立つ資料が「障害者雇用実態調査」です。
これは厚生労働省による調査で、5年に1回行われます。
前回は平成30年度に実施され、令和5年度現在、最新の調査が行われているところです。

雇用状況や賃金など障害者雇用の「いま」が詳しく分かる調査となっています。

(参考:厚生労働省「平成30年度障害者雇用実態調査結果」

障害者雇用の給与水準

障害者雇用の給与水準はどうなっているのでしょうか。

「平成30年度障害者雇用実態調査結果」によれば、障害種別ごと・週所定労働時間ごとの平均賃金は以下の通りです。

身体障害者 知的障害者 精神障害者 発達障害者
平均賃金 21万5千円 11万7千円 12万5千円 12万7千円
30時間以上 24万8千円 13万7千円 18万9千円 16万4千円
20時間以上30時間未満 8万6千円 8万2千円 7万4千円 7万6千円
20時間未満 6万7千円 6万7千円 5万1千円 4万8千円

勤務時間によってかなり差がありますが、全体としては「14万6千円」が月給の平均となります。

これでは生活できない!?年収の相場

上記の表は月額ベースでの給与額となっています。この「平均賃金」に12ヶ月を掛けて年収の相場を計算すると、以下のようになります。

身体障害者の方…258万円
知的障害者の方…140万4,000円
精神障害者の方…150万円
発達障害者の方…152万4,000円

国税庁「令和3年分民間給与実態統計調査」によると、2021年の日本人の平均年収は443万円。比較すると、障害者雇用の年収は決して高いとは言えません。
「これだけでは生活できない……」そんな声も聞こえてきそうです。

障害者雇用の給与水準が低い理由

障害者雇用の給与水準はなぜ低いのでしょうか。
そこには以下のような理由があります。

  • 非正規雇用が多い
  • 勤務時間や仕事内容の制限がある
  • 最低賃金を減額する制度がある

ひとつずつ詳しくみていきましょう。

1.非正規雇用が多い

前述の「障害者雇用実態調査結果」によれば、正社員の割合は以下の通りとなっています。

身体障害者…52.5%
知的障害者…19.8%
精神障害者…25.5%
発達障害者…22.7%

全体で見ると正社員の割合はわずか3割程度であり、残りの人々は非正規雇用という形で働いているのです。
非正規雇用には「無理のない範囲で働ける」などのメリットがあるものの、どうしても給与は低くなってしまいます。非正規雇用が多く正社員として働く人が少ないことが、障害者雇用の給与水準を引き下げています。

2.仕事内容や勤務時間の制限がある

障害者雇用の場合、障害や特性上仕事内容や勤務時間が限られることがあります。事務補助や清掃、軽作業など障害者雇用で多く見られる職種は、一般雇用でも給与が高いとはいえません。それに加え、特性上苦手な作業があれば、どうしても取り組める仕事内容は限られてしまいます。
また前項の表からも分かるように、勤務時間の長さは賃金の額に直結します。体調によって短時間・短日数しか働けないなどの事情があればその分もらえる額は下がってしまいます。また以上のような仕事内容・勤務時間の制限があることで、昇進や給与アップの可能性も低くなります。仕事内容や勤務時間の制限は、低賃金に直結するのです。

3.最低賃金を減額する制度がある

国が定める最低賃金は全国平均で961円。これは障害者雇用でも同じです。「障害があるから賃金を下げる」ということは差別にあたるため、禁じられているのです。
しかし、最低賃金法7条に基づく「最低賃金額の減額特例措置」によって障害の程度などにより最低賃金の減額を許可される場合があります。
(参考:厚生労働省「最低賃金の減額の特例許可申請について 」

これは「精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者」に対し、都道府県労働局長の許可により、最低賃金法の賃金より低い賃金で雇用することが認められるという制度です。
次の1~5に当てはまる労働者は、企業が都道府県労働局長の許可を受けることを条件に、最低賃金の減額の特例が認められます。

  • 精神または身体の障害により著しく労働能力が低い方
  • 試用期間中の方
  • 基礎的な技能等を内容とする認定職業訓練を受けている方のうち厚生労働省令で定める方
  • 軽易な業務に従事する方
  • 断続的労働に従事する方

ただし申請する場合は所定の手続きを踏み、必要書類を提出して都道府県労働基準局長の許可を得なければなりません。
雇用者の思いつきで「あなたは仕事ができないので、今月から給与を減額します」などと適用できるものではないので、安心してください。

障害があっても給与をアップするための方法

「障害があっても、生活に困らないだけの給与を得たい……」
自立して生きていこうと考えている人ならなおさら、そのような思いをもつのではないでしょうか。障害があっても、給与を上げる方法はあります。

  • 正社員への登用をめざす
  • 資格を取得し、資格手当を受け取る
  • 給与アップをめざして転職する

ひとつずつ解説していきます。

1.正社員への登用をめざす

前述したとおり、障害者雇用では非正規雇用の割合が高く、低賃金の原因の一つとなっています。つまり正社員になることで、給与アップが望めるのです。
障害者雇用の場合、残念ながら正社員でのスタートは非常に少ない状況です。契約社員などの形で採用されてから正社員への登用をめざすのがベターでしょう。
そのためには以下のようなコツがあります。

  • 正社員への登用制度がある企業に就職する
  • 遅刻や欠勤をできるだけ少なくし、雇用主の信頼を積み重ねる
  • 心身共に安定して働けるように、自己管理スキルを身につける
  • 得意なことを活かせる職場を選び、できるかぎり貢献する

ポイントは「心も体も安定して、長く働き続けること」と「得意分野を活かす」ことです。無理に正社員をめざすと結局疲れが出てしまい、欠勤…などということにもなりかねません。少しずつ勤務日数を増やしたり勤務時間を伸ばしたりして、段階的に正社員をめざすのがおすすめです。
とはいえ、非正規雇用は収入が低い一方、配慮が受けられるなどのメリットがあることも事実。

  • 障害や特性について配慮してほしいことがたくさんある
  • 体調やメンタルの調子に合わせて、短時間・少ない日数で働きたい
  • プレッシャーに弱く、長時間毎日働き続けることはストレスになる

以上のような場合は無理に正社員をめざすよりも、まずは安定して働けることを大切にしましょう。

2.資格を取得し、資格手当を受け取る

仕事に役立つ資格を取得すれば、給与に「資格手当」という形で上乗せされる場合があります。一時金として受け取る場合はその場限りの収入ですが、「◯◯手当」という形であれば毎月の給与に加算された形で受け取ることができます。月額数千円のアップでも年額に換算すれば大きな違いです。
おすすめの資格は業種・職種によって異なりますので、職場の上司や先輩に尋ねてみると良いでしょう。
「そもそも、資格をとるお金がない……。」
そのような場合は、「教育訓練給付制度」などの制度を利用すれば補助を受けることができます。
(参考:厚生労働省「教育訓練給付制度」

資格取得のための勉強は大変ですが、一度取得すればその後長く手当を受け取れる資格もあります。
「現在の職場や働き方を維持しながら給与をアップさせたい」という場合は検討してみると良いでしょう。

3.給与アップをめざして転職する

今働いている職場に「正社員登用」の制度がない場合や、資格手当をもらえる見込みがない場合は、給与アップのために「転職」をするのも一つの選択です。
その場合は「正社員への登用制度があるか」「具体的にどれくらい給与が上がるか」などを調べてから応募するようにしましょう。
ただし、
・慣れない職場でストレスがかかる
・自分に合っていない仕事内容に従事させられる
・職場の雰囲気が悪くて心が折れ、通いつづけることができない
など転職にはリスクを伴うのも事実です。
転職を検討する場合は一人で判断せず、ハローワークや転職エージェントの手を借りることをおすすめします。

まとめ―障害者雇用の給与水準は、自分しだいで上げられる

障害者雇用の平均的な給与と、給与を上げるためのポイントについて見てきました。
障害者雇用の給与は高いとはいえません。しかし、収入を上げる方法はいくつかあります。正社員への登用をめざすことや資格をとることは、現在の職場で働きながらできることです。もしそれが難しい場合は、思い切って転職を検討することも選択肢に入ってきます。
自分に合った方法を見つけて、無理なく収入アップを狙いましょう。

いずれにしても、最も大切なのは「安定して働き続けること」です。給与アップをめざすあまり無理をしてしまい、仕事を続けられなくなっては元も子もありません。自分の心や体と相談しながら、少しずつスキルアップ・給与アップをめざせるといいですね。

執筆者プロフィール

TOPへ