障害者の雇用だけでなく、求人から採用までの間で必ず「面接」を行うのは当然のことですが、対象となる人が障害者の場合、本人のためにも雇用する企業のためにも必ず確認しておくべき事項があります。
もちろん、プライバシーやセンシティブなことについて根掘り葉掘り聞くわけにはいきませんが、会社で働いてもらう限り、本人の意欲やスキル、入社後の目標といった一般的なことだけでなく、障害の種類や症状、通勤手段、会社側が障害者を受け入れるために何か特別な対応が必要かといったことも確認する必要があります。
今回は、そんな障害者雇用の面接時に必ず確認しておきたい7つのチェックポイントをご紹介します。
1. 本人に合わせた面接の雰囲気や環境作り
障害者採用のための面談で最初に確認すべきことは「本人に合わせた面接の雰囲気や環境作りができているか」ということです。まずは障害の種類別による具体例を一部ご紹介します。
- 〈身体障害の場合〉
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・面接時間や試験時間を長くする
・面接場所までの交通経路を確認して知らせる
・広い駐車スペースを確保しておく - 〈精神障害者の場合〉
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・緊張させないために和やかな雰囲気作りをする
・保護者や支援機関の担当者に同席してもらう
・他者が出入りしない部屋でゆっくり面談を行う - 〈知的障害者の場合〉
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・筆記試験だけで採否を決めないことを伝える
・保護者などの同席を許可する
・会社や業務の説明は分かりやすい図表などの資料を使って行う
これらはあくまで一例ですが、障害者本人の症状や特性に合わせて、室内環境だけでなく面接に望みやすい雰囲気作りを心がけると良いでしょう。
2. 障害や体調について確認する
本来「障害や体調」についてはセンシティブな情報にあたるため、あまり深く聞くべきではありません。しかし、業務を遂行する上で最低限確認しておかなければいけないこともありますので、「質問する理由」を明確に述べた上で以下のようなことを確認すると良いでしょう。
・業務中に通院が必要になることがあるか
・症状や疾病に対して自分で対処できるか
・希望する仕事と障害によりできない仕事
・上記を踏まえた可能な労働時間
次の章でもご説明しますが、実際に雇用した後にスムーズで安定した仕事をしてもらうため、会社側が把握しておくべきことや、どんな支援ができるかを本人や同席者に確認しておきましょう。
3. 必要とされる支援は何か
障害や体調について確認した後は、会社側が行える支援について考える必要があります。ただ、本人から障害や体調について確認した上で会社の判断で支援を行ったとしても、それが本人や企業にとって最良の選択とは限りません。
例えば、足が不自由でも移動に特別不自由が無いと本人が言っていれば、社内に手すりなどを設置する必要はありません。また、本人だけで出来ることを他者にサポートさせてしまうと、本人のモチベーションを下げたり、プライドを傷つけてしまう可能性もあります。
面接の際は、業務遂行上で支障となり得る障害や体調の確認をした上で、障害者本人と担当者との間で「必要とされる支援は何か」のすり合わせをしていくことが大事になります。
4. 最適な仕事を決める判断基準
やりたい仕事とやりたくない仕事があるのは障害の有無に関係なく誰でも同じです。逆に、どんな仕事でもやるという意欲があったとしても、障害を理由に行えない業務もあります。そのため、会社側の判断だけで配属や業務を決めるのは避け、本人の希望も考慮しつつ最適な仕事を決めるのが望ましいでしょう。そのためには以下のような点を確認します。
・仕事で活かせるスキルを持っているか(専門知識や資格の有無、パソコン操作の可否など)
・出張や異動の可否
・予定している配属や業務の遂行が可能か
・障害により苦手とする作業は何か
5. 通勤方法の確認
障害者の採用面談の際には「通勤方法」についての確認も必須です。これには主に3つの理由があります。
・重度障害者等通勤対策助成金を受けて、通勤援助者や駐車場の賃貸などが必要になるか確認のため
・通勤における本人の安全を確認するため
具体的には、徒歩・自転車・車・バイク・電車やバスなどの公共交通機関のどれで出勤予定か、想定される通勤時間はどのくらい等を確認しておくようにしましょう。その上で、社内規定と助成金の支給にどう影響するかを検討することになります。
6. 日常生活技能について
日常生活において、健常者では当たり前にできている事でも障害者にはできないというケースが少なくありません。そのため、障害者を雇用する際は日常生活技能のチェックが必要です。「日常生活技能」とは、主に以下のようなことを指します。
・身辺処理
・挨拶や返事
・報告、連絡、相談
・不明点の質問や確認
・サポートを求める
・ミスした場合の謝罪
・感情的にならずに対応する
・協調性をもった行動
どれも健常者にとっては当然のことですが、障害の影響で出来ないこともあります。例えば、食事やトイレ、着替えといった身辺処理に関して、身体障害者は介助が必要な場合もありますし、精神障害によりコミュニーケーションがうまく取れないという事もあります。
障害者雇用にあたって社内での理解を深める意味でも、あらかじめ日常生活技能で難がある部分などは確認、把握しておいた方が良いでしょう。
7. コミュニケーション方法
いざ面接を行うことになったら、事前にコミュニケーション方法も確認しておく必要があります。これは採用後の仕事でも大事になることです。確認すべきポイントは障害の種類や程度により異なりますが、例えば以下のような項目です。
- 〈視覚障害〉
- 拡大コピーすれば読めるか、点字が必要か
- 〈聴覚障害〉
- 口頭、手話、筆談のどれがスムーズか
- 〈精神障害〉
- 症状を悪化させるフレーズや言葉はあるか
精神障害者の場合、「頑張って」や「期待してる」といった何気ない言葉がきっかけで症状が悪化するケースもあります。そういった症状悪化のきっかけを「トリガー」と呼ぶこともありますが、コミュニケーションにおいてはその手段や方法だけでなく、気をつけるべきポイントも本人に確認しておくのがベストです。
まとめ
障害の種類や症状だけで採否を決めるのは適切とは言えません。障害者を理解するためや合理的な配慮を行うために、面接ではできるだけ本人の状況を聞くべきという意見もありますが、どちらにしても質問に答えるかどうかは本人の意思を尊重した方が良いでしょう。
聞かなければならないことは、「なぜ確認するのか」という理由を明確にして、あくまで業務上で必要なことだと本人に理解してもらった上で質問や試験を行うことが望ましい面接の形と言えるでしょう。
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