障害者が就職するにあたり、就労移行支援事業所を通じて就職する人が年々増加しているものの、そのサービス内容について詳しく知っている人はまだ少ないのではないでしょうか。
そもそも就労移行支援とはどのようなサービスを行うのか、ハローワークとの違いやメリット・デメリットについて紹介します。
就労移行支援事業所のサービスとは?
就労移行支援事業所とは、「障害者総合支援法」に定められた福祉サービスの一つです。就職を希望される障害者の方のために、職業指導やカウンセリング、就労に関する支援を行うものです。
就職後も仕事上の不安や悩みなどを相談したり、なにか問題が起こった時に企業や支援機関との連携や調整業務を行ってくれます。
障害を持つ方が一般就労をするにあたって、何かと不安や悩みを抱えがちですが、そのような問題について第三者の立場で就労支援を行うのが就労移行支援事業所です。
就労移行支援事業所を利用するメリット
就労移行支援事業所を利用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットは以下のようなものになります。
• 障害者の就労支援に詳しい専任のスタッフが相談にのってくれる
• 履歴書の書き方や面接対策などのサポートが手厚い
• 体調面について管理能力がつく
障害者就職支援に実績のあるプロのスタッフが相談にのってくれるので、就職活動の時に抱えがちな問題についてもサポートをしてくれる点が就労移行支援事業所のメリットともいえるでしょう。
就労移行支援事業所を利用するデメリット
就労移行支援事業所を利用するデメリットは主に以下の通りです。
• 利用できる期間は2年間
• 世帯年収により利用料がかかる
就労移行支援事業所は福祉サービスのため、利用できる期間が決まっていたり、以下のサービスの利用料がかかります。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 | |
---|---|---|---|
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 | |
低所得 | 市町村民税非課税世帯(※1) | 0円 | |
一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万未満 ※2) ※入所施設利用者(20歳以上)グループホーム利用者を除く(※3) |
9,300円 | |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
※1…3人世帯で障害者年金1級の場合、収入がおおむね300万以下の世帯が対象
※2…収入がおおむね600万以下の世帯が対象
※3…入所施設利用者 グループホーム利用者は市民税課税世帯の場合一般2になります
【参考】厚生労働省 障害者の利用負担
就労移行支援事業所を通じた就職者数
【参考】厚生労働省 障害者の就労支援状況
平成15年と平成29年の就職状況を比較すると、11.5倍に就職者数が増加しています。緩やかながらも年々右肩上がりなのは、評価できる点ではないでしょうか。
こんな人は就労移行支援事業所がおすすめ
障害者に特化した就職支援サービスを行っているという点で、魅力的な就労移行支援事業所ですが、料金が高い、期間が決まっているなどのデメリットもあります。
どのような人が就労移行支援事業所におすすめなのでしょうか?大手就労移行支援事業所「ウエルビー」の就職事例を元に検証してみましょう。
疾患別就職実績
精神障害の方の就職実績が半数以上を占めています。知的障害や身体障害の方の就職実績が少ないのがデータより読み取れます。なんらかの精神障害を抱えてしまった人の就職支援の窓口として就労移行支援サービスは有効なのではないでしょうか。
ハローワークの障害者向け就労支援とは?
ハローワークでは、就職を希望される障害を持った方向けに専門のスタッフが職業相談を行っています。ハローワークは厚生労働省の管轄になりますが、「障害者雇用促進法」に則り、障害者の雇用の促進を図っています。
ハローワークを利用するメリット
ハローワークを利用するメリットは以下の通りです。
• 年齢や障害に関係なく求職登録ができる
• 利用料金がかからない
ハローワークは求人数も多く、料金がかからずに就職活動ができるメリットがあります。働く事に不安のある方はトライアル求人を利用した就職も可能です。
ハローワークを利用するデメリット
• 求職者が多く、良い求人はライバルが多い
• 自主性が求められ、モチベーションの維持が必要
就労移行支援サービスと違い、料金や期間などの制約がない分自分で主体的に動く「自主性」が必要になります。毎日ハローワークに通うという決まりごともないためモチベーションの維持を保つ事も課題です。
ハローワークを通じた新規求職者数
新規求職者数 | 就職決定率 | |
---|---|---|
平成21年 | 125,888 | 36% |
平成22年 | 132,734 | 39.9% |
平成23年 | 148,358 | 40% |
平成24年 | 161,941 | 42.2% |
平成25年 | 169,522 | 45.9% |
平成26年 | 179,222 | 47.2% |
平成27年 | 187,198 | 48.2% |
平成28年 | 191,853 | 48.6% |
平成29年 | 202,143 | 48.4% |
平成30年 | 211,271 | 48.4% |
令和元年 | 223,229 | 46.2% |
障害者雇用全体の新規求職者数は約10万増加していますが、就職決定率も同じく10%増加しています。母体が増えているのにもかかわらず、この就職決定率は優秀な数字ではないでしょうか。次に障害別の新規求職登録者数と就職決定率を見てみましょう。
身体障害者の新規求職登録者数と就職決定率
身体障害者の新規求職登録者数は6万台でほぼ動きがありません。就職決定率もほぼ横ばいで安定した数値です。
知的障害者の新規求職登録者数と就職決定率
平成21年から10年間で知的障害者の新規求職登録者数は1万人増加していますが、就職決定率は50%以上と高い数値を誇っているのが特徴です。
精神障害者の新規求職登録者数と就職決定率
精神障害者の求職登録数は10年間で7万人増加しています。母体が増えているのにもかかわらず、就職件数は50%弱と、高い数値を誇っています。しかしながら約半数の人は就職が決定していないのが現状であり、精神障害の方は積極的に就労移行支援サービスなどを活用した方が良いでしょう。
こんな人はハローワークがおすすめ
• 豊富な求人の中から就職先を選びたい
• 職業訓練なども視野に入れつつ就職活動を行いたい
求人数が豊富なのはハローワークの最大のメリットです。また、職業訓練では専門的なスキルを身につけることもできますので、活用したいですね。
ハローワークと就労移行サービスの違い
ハローワークと就労移行サービスの違いをまとめると以下のようになります。
就労移行支援 | ハローワーク | |
---|---|---|
費用 | 収入に応じて発生する | 無料 |
期間 | 2年間 | 期限なし |
条件 | 65歳未満 | 年齢制限なし |
就労移行サービスとハローワークはどちらか一方しか利用できないわけではなく、両立しながら求職活動を行うことも可能です。それぞれメリット・デメリットがありますので、上手に2つのサービスを活用する事が、就職成功の鍵になると言えるでしょう。
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