双極性障害でも就職できる?オススメの仕事と注意点

双極性障害でも就職できる?オススメの仕事と注意点

双極性障害の就職には困難が多く、現状のところ業種や職種も限られています。

双極性障害の就職で大事なのは、まず働く本人と雇用する企業が障害の症状を理解すること。その上で対応方法や配慮事項について検討していかなければなりません。

この記事では、双極性障害の症状や特徴から考えられるオススメの仕事と働く上で注意したいポイントをご紹介します。

双極性障害の特徴から考えられる適職

双極性障害は「気分が落ち込みやる気が出ないうつ状態」と「やる気もアイデアもどんどん出てくる躁状態」を繰り返す障害。「躁うつ病」とも呼ばれており2種類に分けられますが、症状の重さによって就職の困難度は変わります。

双極I型障害 「うつ病と著しい躁状態」のある双極性障害。双極I型の躁状態は明らかな異常行動が見られ、一方的に話し続けたり大声を出したり、時に衝動的に走り回ったり高い買い物をしたりという行動を起こすことがある。
双極II型障害 「うつ病と軽度の躁状態」のある双極性障害。うつ病と生活に支障をきたすほどではない軽躁状態を繰り返すのが特徴で、躁状態の時は周囲の人が「なんだかテンションが高いな」と気づく程度の症状となる。

双極性障害の人でも就職は可能ですが、障害を伏せる「クローズ就職」なのか、障害者であることを告げる「オープン就職」なのかで就職の難易度は違ってくるでしょう。

クローズ就職だと周囲の人が症状を理解・把握していないのに加え、安定的に仕事に取り組めないためトラブルになりがちです。結果、周りに迷惑をかけるだけでなく、最悪の場合、退職にもつながりかねません。

クローズ就職の場合、就職してもすぐに退職してしまうケースが少なくないため、双極性障害の人が就職する場合、以下のような仕事が適職と言えるでしょう。

・対人関係をあまり重視しない仕事
・マイペースに取り組める仕事
・うつ状態になっても替えが利く仕事
・業務量や作業ペースが一定の仕事

双極性障害ならチェックしておきたい業種

では、双極性障害に向いている業種や職業には具体的にどんなものがあるか見ていきましょう。実は双極性障害に限らず、障害者の雇用者数は業種によって大きな偏りがあります。

【参考】厚生労働省 令和元年 障害者雇用状況の集計結果

グラフは2019年12月に厚生労働省が発表した業種別の精神障害者の雇用状況です。精神障害者には発達障害も含まれますが、雇用者数は「医療・福祉」「製造業」「卸売業・小売業」「サービス業」に大きく偏っているのが分かります。

このデータから医療関係や製造、小売、サービスといった業種が適職と言えますが、双極性障害の症状を考えると、どの業種においても代えがきく仕事や対人関係をあまり必要としない事務作業等がメインになるでしょう。

双極性障害は対人関係に難があったり気分のムラがあるため、接客やコミュニケーションを主とする業種にはあまり向いていないと言えます。

双極性障害でも対応できる仕事一覧

では実際に双極性障害の人はどんな職種や仕事で活躍しているのでしょうか。双極性障害に絞った統計データはありませんが、一つ参考になるデータがあります。

以下は障害者雇用支援総合ポータルサイト「ATARIMAEプロジェクト」で紹介されている、1021社における精神障害者の雇用事例を先ほどご紹介した業種に絞ってご紹介します。

【医療・福祉】
介護補助/洗濯/掃除/食事の準備・後片付け授産事業所支援業務看護補助業務清掃/老人介護業務特別養護老人ホームの厨房業務地域在宅サービスステーションの業務経理事務/指導員補助・見本帳作成/調理補助一般事務/介護/清掃洗濯身体障害者の在宅補助業務宅配弁当の配達
【製造業】
袋詰/商品最終工程の補助、塗装業務補助/接種作業/検品・箱詰作業/掻き出し作業、システムバス製造/金型製造、食鳥処理及び食肉加工/事務/野菜加工、機械加工/清掃/部品製造工、事務/庶務/出荷/製造補助、部品組立/修正加工/スライズ版/クリップ工、ダンボール梱包箱・木製パレットの製造、パン・菓子製造補助/清掃/畜産・食料品加工製造、パン製造/機械管理/クリーニング/ウエス裁断/洋服の選別、製袋機オペレーター/荷物運搬/袋詰め、電子部品点灯検査/電子部品ロット印刷、訂正シール貼り/廃棄物の分別処理/出庫/検品/縁取り、知的障害者の業務援助/菓子製造及び製造補助、製品修正/パック詰め/寿司づくり/洋菓子の製造・販売、ハーネス組立作業/シートヒーラ/モーターコイル受入検査、パンの製造・販売/工房内でのパン製造担当/店舗内レジ担当/外商担当、ハーネスの導通検査/組立ラインの部品準備・組立/研磨、フォークリフト操作/計量後の青果物の袋詰め作業/印刷機械操作、金属プレス作業/納品物の梱包作業、ダイカスト金型の部品やさまざまな機械部品の製造・切削・点検作業、電気系統の配線の製造・組立/段ボールの整理/アウトレット用の品出し、電気コードの加工・箱詰め、印刷機械・紙折り機への紙積/印刷物・製本の梱包/雑務、印刷封入/封緘/接着の加工業務、配送/倉庫整理/組み立て作業/製造、旋盤/機械/データ入力/工場内財務・清掃、ミシン縫製/プレス/刺繍/検品/内装
【卸売・小売業】
洗車/工場内清掃、清掃/検品/商品補充/ファーストフード作成/レジ接客/清掃、カート回収/整理/事務、青果・鮮魚・精肉・グロサリー・ベーカリー業務/精肉加工、商品補充/検収/店舗業務、販売店におけるパック詰め/陳列/商品整理/惣菜加工/レジ/事務、商品の箱詰め・発送、洗車/社内清掃/材料搬入、食品の陳列・補充、ベーカリーでの販売、洋菓子の製造・販売、シートヒーラ、商品仕分け/空容器の洗浄/選別/整理、パン製造/レジ/外商、精肉加工センター業務/スーパーマーケット(一般食品雑貨・青果・ベーカリー・鮮魚)業務
【サービス業】
選別/機械管理/作業補助/清掃、入力/流通・仕分け/洗浄・調理補助/調理補助、資源選別作業/選別/コンテナ洗浄、工場内における仕分・洗浄・包装等の軽作業、事務/タオルたたみ、事務、総務・人事業務/清掃/シュレッダー処理/紙漉、経理/文書データ化/名刺印刷/事務補助、テクノアート/清掃、浴衣機械操作及び挿入作業、印刷/DM発送/データ入力/経理補助/ファイリング/電話応対、アイロンがけ/包装/洗濯/集配/事務処理/庶務、駐車場清掃/植栽の手入れ、パチンコホール清掃/包装・結束、文書管理/データ入力、回収箱の仕分け・荷造り・積み込み・箱ラベル剥がし・箱入れ・ラインへの瓶下ろし・木箱製造、ベーカリーでの販売/清掃、ハードウェアの分類作業、データ入力/ホームページの作成・管理/文書の編集・校正・管理/調査・データベース作成/システム管理/総務事務/名刺作成/不動産管理/保険代理店業務/就職促進委託訓練事業の運営、パンの製造・販売、事務/軽作業、リネン洗濯、調理補助、機械操作/品物を移す・製品を束ねて袋詰めする作業、ビル清掃/クレーン操作

【引用】ATARIMAEプロジェクト業種別雇用事例・1012社

業種に則した仕事もありますが、どの業種でも事務や軽作業といったところで共通しています。接客が重要になる仕事はあまりなく、やはり双極性障害においても同様と言ってよいでしょう。

双極性障害の就職で注意すべき点

そもそも双極性障害は、単にうつ状態になる障害ではありません。「うつ病」と決めつけて接してしまうと思わぬトラブルになりかねないため、まずは働く本人と雇用する企業の双方が症状の特性を理解している必要があります。

【うつ状態】
・気分が深く落ち込み食欲もなくなる
・眠気や疲れやすさでやる気が出ない
・些細なことで罪悪感を感じて自分を責める
【躁状態】
・自信過剰になったり怒りっぽくなったりする
・寝ないでも平気だと思い込んでしまう
・一方的にしゃべり続けたり注意力が散漫になったりする
など

では、双極性障害の症状について就職や仕事の上でどんな注意をすべきかご覧ください。

【双極性障害の就職で注意しておきたい点】
・うつ状態と躁状態の時にどうなるか本人と雇用者側が把握しておく
・うつ状態と躁状態の両方で対応方法を予め決めておく
・躁状態を普通の状態と決めつけて放置しない
・症状が緩和されても通院や服薬などを自己判断でやめない
・気分の波や仕事の進捗を日報などで記録する
・症状が出てしまったときの代わりを準備して気持ちに余裕を持たせる
・働く本人が相談や報告ができる体制を必ず構築する
・症状が出てしまった時に一人で休める場所を決めておく

双極性障害で特に注意したいのは、軽躁状態を「元気だ」と安易に判断しないことです。躁状態が落ち着くと今度はうつ症状が出るケースが多いため、周囲の人が早めに気づく環境づくりが重要になります。

もちろん全ては医師との相談の上で決めるべき注意点ですが、まずは障害者本人が症状を理解して障害との付き合い方を考え、その上でオープン就労が可能な企業に就職するのがベストと言えます。

さらに企業側も個々の障害の症状に配慮した環境作りができれば、働く人と雇用する側のWin-Winの関係を実現できるでしょう。

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