発達障害関連の記事や書籍では、稀に「カサンドラ症候群」という名称を目にすることがあります。
一見、発達障害の症状や関連する疾患の一部かと思えますが、実はASDを持つ人のパートナーに起こる精神疾患です。
「精神疾患が感染するの?」と思ってしまう方もいるかもしれませんが、カサンドラ症候群は相手と良い関係を築きたいと思うからこそ起きる心の病です。
そんなカサンドラ症候群とは一体どのような病気なのでしょうか。この記事ではカサンドラ症候群になる原因や治療方法まで詳しく解説します。
医師も診断しづらい「カサンドラ症候群」とは?
カサンドラ症候群とは、主にASD(自閉症スペクトラム障害)である家族と上手くコミュニケーションできないことで引き起こされる二次障害です。
「理解してもらえない」「信じてもらえない」などの心的なストレスが溜まり、うつ病や不眠症、時には身体的にも悪い症状が出ます。
一般的には、夫と妻という関係でカサンドラ症候群になったと報告されるケースがほとんどですが、ASDの人と親しい関係にあれば、以下のような関係でもカサンドラ症候群になる可能性があるとされています。
- 恋人同士
- 親子関係
- 兄弟間
- 友人関係
- 職場の同僚
また、カサンドラ症候群は医学的な正式名称ではなく、明確な定義づけもされていません。そのため、専門医であっても「カサンドラ症候群です」とはっきり診断するのは難しいと言われています。
カサンドラ症候群が発症するきっかけや症状が述べられる際には、必ず「ASDのパートナー」というキーワードが登場します。では、そもそもASDとは何でしょうか。
ASDのパートナーがカサンドラ症候群を発症しやすい理由
ASDについては当メディアでも何度か解説していますが、主に以下のような症状のある発達障害の一種です。
- マイルールへの強いこだわりがある
- 自分の興味があること以外に関心を示さない
- 相手の状況を考慮せず自分の都合を優先する
- チームワークが必要な場面で単独行動をする
ASDと診断される前段階、またはASDだと知らされていない人にとって、その症状は「身勝手」「極端なマイペース」な性格と捉えられがちです。
そのため、ASDを持っている人がパートナーにもかかわらず、ASDと認識していなかった為、その症状に耐えられなくなって精神的に追い詰められてしまうのです。
事実、個人ブログやSNSなどでもカサンドラ症候群に悩む人たちが数多く声を上げています。
夫見てると自分を大事にすることに異様に長けてるなと感じる
自分が何かを成し遂げるために平気で嘘をつくし(注意欠陥ですぐバレる)
嫌な話題になるとすぐ話を逸らそうとするし(バレバレ)
話逸らせないことがわかるとシャッター降ろして閉店、そして寝る#カサンドラ症候群— あざらし (@azadarake_) September 10, 2019
夫は自分の事以外は意思ゼロ。
結局、家も教育も旅行も計画・実行は全て私。夫は決定もできない。
「そうしよう!」が言えない。
必ず「じゃあ…そうする…?」と、
文末で責任を逃れる。私も傾向あるから、物事に対処するのはすごく大変。
残りの人生、荷が重すぎる。#カサンドラ症候群— ぎんた (@0cdyUtvqJfYSyI8) September 5, 2019
うちの旦那、
アスペやわ間違いなく
そして私はカサンドラ症候群。最近もう無理すぎて
拒絶反応で震える。
でも話すの自体が嫌。
話しても絶対分かり合えないの
分かってるから。
だってアスペだもん。— 君だよ君?大っ嫌い。 (@1nwKtPLp6KwLJkV) September 11, 2019
ASDと知らずに結婚し、しばらくしてから夫(または妻)がASDの可能性があると気づいたというケースも多く見られます。
そのため離婚を希望するカサンドラ症候群の方も多く、時には殺人事件にまで発展することもあるため、決して軽く見てはいけない病気と言えます。
カサンドラ症候群の診断基準とは?
最初にお伝えした通り、カサンドラ症候群は医学的な正式名称ではありません。
診断するにも正確な基準がないため、アメリカ人の研究者による論文により、以下が判断ポイントになるとされています。
- ①1人以上のパートナーが次の1つ以上の診断基準を満たす
-
・低い感情知能
・失感情症
・低い心の指数 - ②人間関係において次の1つ以上に該当する
-
・激しい対立関係
・家庭内における身体的、または精神的虐待
・人間関係における不満足感
・人間関係の低下 - ③カサンドラ症候群における心理的または身体的症状
-
・自尊心が低くなる
・混乱する
・怒りやうつ病、不安感の症状
・罪悪感
・喪失感
・恐怖症
・心的外傷後ストレス反応
・疲労
・睡眠不足
・偏頭痛
・体重の増減
・月経前緊張症などの婦人科の病
自分自身に③の症状があったとしても、①にあるパートナーの症状が見られないとカサンドラ症候群と診断されないことが多いとされています。
そのため、実際にカサンドラ症候群の症状が出ているのに「うつ病」と診断されるなど、適切な治療が受けられないケースも少なくありません。
カサンドラ症候群への対処法や相談先
本来はカサンドラ症候群になる前から対処できるのが望ましいですが、最初に良い関係を築けているとなかなかそう上手くはいきません。
では、ASDのパートナーが原因でカサンドラ症候群なってしまった可能性がある場合はどう対処したらよいのでしょうか。
- パートナーの言動やASDに対する観察や理解
- 可能なら発達障害の受診を勧める
- 衝突してしまう原因やコミュニケーションの方法を話し合う
- パートナーとの距離感を改める
- 関係機関に相談する
最後の「関係機関に相談する」という点ですが、主に3つの相談先が考えられます。
- 各自治体の発達障害者支援センター
- カサンドラ症候群の診療を行うクリニック
- カサンドラ症候群の方同士の自助グループ
特にカサンドラ症候群同士の自助グループは大きな組織ではないため、インターネットでもなかなか見つけられませんが、「カサンドラ症候群 会」と検索すればいくつかヒットしますので、お悩みの方はお近くの自助グループを探してみるのもよいでしょう。
まとめ
発達障害において、怖いのは本人だけでなく周りの人にも起こり得る二次障害です。
何でも早めの対処が大事ですが、カサンドラ症候群によって正常な判断ができなくなる前に、一人で悩むことだけは避けたほうが良いでしょう。
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