昔から精神障害者の就活は難しいと言われていますが、理由をご存知でしょうか。
「精神障害に対して企業側の偏見や誤解がある」
「精神障害があるため就職しても長く続かない」
どちらも間違いではありません。
ただ、精神障害自体が就職活動を難しくしているのではなく、実は障害者本人と企業の間にある誤解こそが就職活動を難しくしている要因と言えるのです。
例えば、精神障害者の採用基準と精神障害者の働く意欲がマッチしていないのは良くあるケースです。
そこでこの記事では、精神障害者が就職活動においてどんな困難に直面するのか、その対処方法について解説します。
精神障害者と企業の双方にとって大事なポイントもご紹介しますので、精神障害者の方の就職活動、そして精神障害者雇用を検討する企業の参考になれば幸いです。
精神障害者の就職が難しい本当の理由
「就活」の視点だけで見るなら、「精神障害者は就職が難しい」というのは少し誤解があるかもしれません。
実際に「身体障害者」「知的障害者」「精神障害者」の就職件数データを見ると、精神障害者の就職割合は決して低くありません。
むしろ障害別で見た精神障害者の就職率は最も高くなっています。
精神障害者の就職が難しいと言われがちな理由は、就職活動時点の話ではなく離職率の高さです。つまり、会社に入ってから継続雇用が実現できていないケースが多いのです。
以下の記事でも解説していますが、精神障害者は就職して1年以内に半分以上が退職してしまうというデータもあります。
精神障害者の就職は「就職活動」と「安定した就労」の2点で考えなければいけないのです。
精神障害者が就職活動で直面する困難
それにしてもなぜ精神障害者は退職する人が多いのでしょうか。理由として主に以下のような点が度々指摘されます。
・仕事内容や負担に耐え切れない
・欠勤や早退が多くなりがち
・人間関係が上手くいかない
・通勤自体が負担になっている
・給与が低い
・社内の精神障害に対する理解が浅い
・うつ病などの障害が悪化してしまう
上記は推測ではなく、多くのメディアやクチコミで度々登場する精神障害者の退職理由です。
実際にTwitterでも以下のような投稿があります。
作業所で就職が決まったことを言ったら、みんな驚いていた。そのぐらい精神障害者の就職って難しいのです。
— ゆず (とし) (@natural_yuzu23) September 24, 2019
今僕は、転職をしています。精神障害の病気てんかんを持っています。てんかんだからと理由で差別をされて就職ができない。てんかん病気を持ってるからという理由で差別をされる。こんな世の中許されるのでしょうか?病気があるからという理由で就職できないはひどい差別です。
— 黒の剣士ヒロマツ (@hiromatu20) December 16, 2019
更に精神障害者が退職する理由は統計データでも明らかになっています。
もちろん精神障害者が退職する原因は、全て企業側に責任があるわけではありません。
障害者雇用促進法においても、障害者に対する企業側の配慮は負担が重くなり過ぎない程度で良いとされています。
ただ退職する精神障害者が多いという事実は、精神障害者と企業の双方を疑心暗鬼にさせている可能性も否めないでしょう。
精神障害者の就職活動で押さえておくべき対処法
では精神障害者と企業の双方にとって、一番良い就職活動の形とは何でしょうか。
まず大事なのは信頼関係を築けるかどうか。最初から双方の理解に誤解があれば、就職後の継続雇用は難しくなるでしょう。
よって精神障害のある本人と企業側は、面接等のタイミングで以下を明確にする必要があります。
・どういう配慮があればしっかり働けるか
・スキルだけでなく、実際に本人が出来る事は何か
・うつ病など障害の症状に対して本人はどう対処しているか
・通院が必要になる日や通院のペースはどうか
・何かあれば家族への連絡やサポートが可能かどうか
就職活動をする精神障害者は、就職を焦るあまり企業が求めている人材を演じがちです。
精神障害者は障害の症状だけでなく、どのような支援や配慮が必要か、また出来ない仕事内容を伝えることも重要です。
そして企業側は負担が重くなり過ぎない範囲でどこまで配慮できそうか考えなければいけません。
両者にとって必要な情報を提供し合う姿勢こそが最も大事なポイントと言えるでしょう。
精神障害者雇用後の注意点と就職した人の声
精神障害者の就職活動が上手くいっても、必ずしも安心とは言えません。
精神障害者が採用されても、以下のようなケースで退職するケースが少なくないのです。
・うつ病などで症状は安定したと思っていたが悪化の予兆や不安で退職
・就職先の責任者が変わり業務内容やルールが大きく変わったため退職
・他の人より明らかに給与や待遇が悪かったため退職
・退職者の業務を回されて対処しきれなくなったため退職
・就職活動と退職の繰り返しに慣れてしまっている
実際に就職活動をしている、または就職した精神障害者の心境も複雑なようです。
就労移行支援で一年中同じ顔ぶれで、就職できるのは数人です。
半分以上が諦めるか、2年通うかです。
精神障害者の離職率も高いと思います。
良い事業所でも定着率2割って言っていました。
精神障害の人は危なくなる前に結構辞めているんです。
私もです。
— さば (@jOYwK19aqJ3atHn) December 8, 2019
ADHDの特異な能力で就職はできたけど、精神障害者だから仕事がしんどい。
こんな僕って健常者の皆さんと違って特別な存在ですよね?— TKの遺志を継ぐ者 (@1026tktkbmx) November 18, 2019
面接受けて
就職して
持病で引っかかり
ショックで精神障害顕著に出て
鬱になって仕事出来なくなって通院して薬増量して
其れでもダメで入院して
何とか立ち直って
働いて得た給与が無くなり
また面接して
就職しての繰り返し— 1326の別腹 まだ何も無い (@biribiridebuu) October 7, 2019
ツイートの中には「運よく就職できてよかった!」などの明るい投稿もありましたが、どちらかというとネガティブな投稿が多いのが現状です。
自身の障害と上手く付き合えていなかったり、会社都合による退職者も後を絶ちません。
就職後に労働環境や症状が変わるかどうかは誰にも予測できません。だからこそ精神障害者の就職活動は最初が肝心です。
面接やトライアル雇用などを通じて精神障害者と企業がどこまで信頼関係を築けるかは、就職活動とその後の結果を大きく左右します。
精神障害者の就職活動は、継続雇用までを視野に入れた本人と企業の歩み寄りが欠かせないと言えるでしょう。
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