筋トレで精神障害を克服!そのメカニズムと実際の回復事例

筋トレで精神障害を克服!そのメカニズムと実際の回復事例


「筋トレでうつ病が治る!」という記事や書籍を見かけたことはないでしょうか。

たまにSNSで話題になることもあるこのネタですが、筋トレでうつ病やパニック障害が治るということに、批判的な意見を述べる方もがいるのも事実です。

では、実際に筋トレが精神障害を回復させるのに何らか効果があるのか、筋トレが精神障害に及ぼす効果やメカニズム、事例などを基に検証していきます。

筋トレは精神障害を回復させる?

「筋トレで精神障害が治るかどうか議論」は、ここ数年で多くなったように感じられます。

インターネットで「筋トレ うつ」「筋トレ 効果 メンタル」「筋トレ 不安障害」などと検索してみると、非常に多くの記事がヒットします。

ただ実際は、筋トレの効果に対する意見は真っ二つに分かれている状況と言っても過言ではありません。

「筋トレで精神障害は治らない派」の多くは「そもそも気分が最悪の時に筋トレやろうなんて思えない!」というところに集約されます。

「筋トレで精神障害が治るなら、今頃うつ病の人はいない」という意見すらあるほどです。

また、各メディアが紹介する事例によっては、皮肉にも筋トレが理由でうつ病になる人が紹介されていたりもします。

しかし、実際に筋トレを始めたことで「精神疾患が治った」という人がいるのも事実。なぜここまで意見が分かれてくるのでしょうか。

精神障害のメカニズムを知ると、筋トレで精神障害が克服できると言われる理由が見えてきます。

筋トレが精神障害の治療になる理由とメカニズム

精神障害の原因は未だ研究が続けられていますが、一般的に「モノアミン仮説」が有力とされています。

モノアミンとは、「セロトニン」「ドーパミン」「ノルアドレナリン」などの神経伝達物質の総称であり、それぞれ精神を安定させるための役割があります。

セロトニン ドーパミン、ノルアドレナリンのバランスを調整する
ドーパミン やる気や意欲をもたらし幸福感を得られる
ノルアドレナリン 行動力や積極性、集中力を高める

【出典】大原薬品工業株式会社 けんこう名探偵

モノアミン仮説では各神経伝達ホルモンが欠乏することで意欲や行動力が低下し、セロトニンも正常ではないため心の調整が上手くできない状態であるとされています。

つまり、うつ病など精神障害は各神経伝達物質で構成されるモノアミンが不足しているのが原因。筋トレなどの運動は、モノアミンの分泌を促して精神を安定させると言われています。

【出典】医療法人財団厚生協会 東京足立病院

また、モノアミン仮説とは別に「BDNF仮説」というものもあります。

BDNFとは神経細胞の成長や維持、再生を促すたんぱく質です。「記憶力」や「感情」、「認知機能」などにおいて、重要な働きをしています。

九州大学健康科学センターの研究では、運動によってBDNFが増加。うつ病や認知症の改善に寄与する可能性があるとしています。

運動は脳BDNFとその受容体(高親和性チロシンプロテインキナーゼ受容体; TrkB)の発現を増加させ、げっ歯類の記憶と学習の改善を媒介しました。また、糖尿病性肥満マウスへのBDNFの投与は、体重増加を抑制し、グルコース代謝を改善しました。これらの証拠は、運動がBDNF-trkB経路を介して認知症、うつ病および糖尿病の予防または改善に寄与する可能性を高めます。

【引用】CiNii 脳由来神経栄養因子(BDNF)の役割と運動の影響 抄録

「筋トレをすればモノアミンが増加する」「筋トレでBDNFが増加する」という説はまだ研究段階。特にモノアミン仮説を証明するのは物理的に不可能なため、信ぴょう性に薄いという声もあるほどです。

各メディアを見る限り、他にも精神障害に対する筋トレの効果を述べる記事は多くあります。

・テストステロンが分泌され交感神経と副交感神経の切り替えにメリハリが出る
・脳内麻薬と言われるエンドルフィンの分泌により幸福を感じられる
・身体的な疲労により質の良い睡眠ができる
・血圧が安定するため不安感や焦燥感が無くなりストレス耐性もできる

いずれにせよ、うつ病などの精神障害に対する筋トレの効果は、科学的にハッキリしているわけではありません。

ではなぜ、各メディアはここまで「筋トレで精神障害を克服!」といったような記事を掲載するのでしょうか。

理由は、「実際に筋トレで精神障害を回復させた人がいる」ためです。

筋トレで精神障害を回復させた3人の実例

「筋トレは精神障害の治療に効果があるか」という議論が止まないのは、各メディアの記事や有名トレーナーの書籍などが元になっているという印象は否めません。

ただ、SNSやブログによる情報も議論の一端になっていると言えるでしょう。

そこでうつ病を始めとした精神障害を筋トレで克服した3名の事例ご紹介します。

【事例1】筋トレと鍼治療の継続でパニック障害を克服

【出典】sasshiの雑記Blog 筋トレを始めた理由はパニック障害克服のため

かつて「パニック障害」で10年も苦しんでいたというsasshiさん。

自身でブログも運営されており、筋トレでパニック障害をほぼ回復できたと報告されています。

sasshiさんは、満員電車や会議室などの拘束される場面でパニック障害を発症することがあり、徐々に人付き合いも避けるようになります。

ふとしたきっかけで自分の症状について深く理解する機会があり、筋トレを開始し、約7カ月間、筋トレと鍼治療を続けた結果、一度も発作を起こすことなく過ごせているそうです。

【事例2】筋トレ、睡眠、食事の管理でうつ病から回復

【出典】マイノリティ入門 僕とうつ病のあれこれ

元々は新聞社に勤めていたKADAPARIさん。

ストレスが主な原因となってうつ病を発症します。

その後、会社を退職してしまい、さらに退職後に症状が悪化。休息を理由に退職したことへの葛藤が逆効果となりました。

しかし、徐々に回復してきたため筋トレを開始。睡眠や食事の管理も同時に行い、現在は復職するに至っているそうです。

【事例3】自宅トレーニングでパニック障害から回復

最近Twitterでも話題なのが3.8万人のフォロワー数を誇るSeiyaさん。

過去にパニック障害を経験されていますが、筋トレで障害を克服した人として有名になりました。

そんなSeiyaさんは、筋トレを中心としたライフスタイルに切り替えます。

外に出られる精神状態ではなかったため、自宅で筋トレをされたとのこと。

Seiyaさん曰く、自分自身に変化をもたらせたのは以下の生活習慣だと語っています。

  • 睡眠
  • 運動(筋トレ)
  • 食事
  • 瞑想
  • ストレス管理

特にブログなど運営されている様子はありませんが、上記の呟きがキッカケで瞬く間に有名人となりました。

「程よい運動」こそ精神障害を克服するカギ!

「結局、筋トレは精神障害に良い効果をもたらすの?」

ここまでお読みいただき、あなたはそんな風に感じているのではないでしょうか。

精神障害の治療としてどの程度の筋トレをするかは、個人の精神状態や医師への相談などで決めるべきです。

先ほどご紹介した方々も、筋トレだけを挙げる人もいれば鍼治療や食事管理などをセットにされている人もいます。

そもそも、うつ病を始めとした精神障害を克服するのに大事な要素は3つ。

運動 有酸素運動と低強度の筋トレ
食事 栄養バランスを考え1日3食
睡眠 寝る前にスマホをいじるなどせず質の良い睡眠を心がける

3つの要素は全て相互関係にあります。運動不足なら食事量が減り、睡眠も浅くなります。

また、食事のバランスが悪ければ、筋肉の増強を始めとした運動効果は発揮されません。

つまり「筋トレすれば精神障害を克服できる!」という偏向しすぎた考え、そして単に筋トレをやりすぎるだけなのは危険なのです。

筆者自身も筋トレを趣味としていますが、ハードなトレーニング後は精神の安定どころか最悪の気分になります。

トレーニング直後は体がだるく、何もする気が起きませんが、トレーニングからしばらくすると気分が晴れやかになるのも事実です。

まず無理のない運動から始めて、徐々にトレーニングの負荷を上げていくのがオススメです。

程よい運動を継続させることこそ、精神障害を克服するのに最も効果的な方法と言えるでしょう。

執筆者プロフィール

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