「障害者雇用率が高い会社」ランキング(2023年版)

「障害者雇用率が高い会社」ランキング(2023年版)

毎年9月の「障害者雇用促進月間」に合わせて東洋経済社が「障害者雇用率ランキング」を発表しました。
このランキングの対象となるのは「CSR企業総覧(雇用・人材活用編)」2023年版掲載企業1702社のうち、2021年度に障害者を3人以上雇用している企業1195社です。
ちなみに「障害者雇用月間」には、国や地方公共団体を中心に障害者雇用についてのセミナーや事例紹介が開催されています。「障害者雇用をしてみたいけど情報がほしい」という企業の担当者の方は、そういったセミナーを利用するのも手です。

障害者雇用促進の歴史

障害者雇用の基準となっているのが障害者雇用率です。障害者雇用率とは、「身体障害者雇用促進法」に基づき1960年から開始された制度。その後、1976年の法改正によって、法定雇用率が達成すべき義務となり、合わせて雇用給付金制度も設けられました。
1987年に法令の名称が「障害者雇用促進法」に変更され、1998年には知的障害者が雇用義務の対象に含まれます。さらに2018年には発達障害を含む精神障害者も雇用義務に含まれるようになりました。

令和5年度から法定雇用率が段階的に引き上げ

障害者の法定雇用率は少なくとも5年ごとに勘案されるように定められています。そして、令和5年1月に行われた労働政策審議会障害者雇用分科会によって、令和5年度からの障害者雇用率は2.7%(国・地方公共団体は3.0%、教育委員会は2.9%)とされました。

ただし、雇入れの計画的な対応を実現するために、
・令和5年度から:2.3%
・令和6年度から:2.6%
・令和8年度から:2.7%
と段階的に雇用率が上げられていきます。

また、特定の業種に設定されている除外率は10ポイントの引き下げが決定されました。除外率の引き下げは、雇用率の引き上げと重ならないように、令和7年度から開始されます。

2023年版 障害者雇用率の高い企業TOP10

それでは、東洋経済社の発表した「障害者雇用率ランキング」から上位10社をご紹介します。

順位 会社名 雇用率(%) 雇用人数(人) 業種
1 ゼネラルパートナーズ 15.55 41 サービス業
2 エフピコ 12.60 365 化学
3 MRKホールディングス 8.00 4 小売業
4 キトー 6.89 35 機械
5 関通 6.29 26 倉庫・運輸関連業
6 JSP 5.78 49 化学
7 コンセック 5.37 13 卸売業
8 AOKIホールディングス 4.89 6 小売業
9 ファーストリテイニング 4.60 1,111 小売業
10 白鳩 4.59 7 小売業

1位 ゼネラルパートナーズ

ゼネラルパートナーズは6年連続で雇用率1位となりました。障害者向けの人材紹介や求人情報サービス、就労移行支援事業、就労定着支援事業、メディア運営、農業生産事業、障害者雇用の研究など多岐にわたる事業を行っています。
障害者の職場への定着率は、情報不足や企業のノウハウ不足から低い傾向がありました。そこで、ゼネラルパートナーズは障害者への就職サポート、企業への障害者雇用のノウハウ提供を行い、ベストマッチングの職場探しの場を提供しています。
就職支援サービスでは、障害の特性ごとにトレーニングのカリキュラムを選択することができ、自分らしく働き続けることを目指しています。
「社会問題の解決」を起点に事業を創造するという理念のもと、さまざまな社会課題の解決に取り組む事業を生み出している会社です。

2位 エフピコ

エフピコは広島県に本社を置く食品トレーや弁当・惣菜容器の最大手。上場企業ではトップの障害者雇用率です。エフピコの障害者雇用のきっかけは知的障害者を持つ親の会「あひるの会」とのつながりでした。
その後、民間の営利法人で初となる就労継続支援A型事業の「エフピコ愛パック」の設立など拠点整備が進められました。現在では365名の障害者が現場で活躍しています。
基幹業務の正社員雇用という方針で、全国の事業所で障害者に雇用機会を提供しています。さまざまな地域に事業所があるので、生活の基盤を変えずに就職できるというのは大きなメリットです。

3位 MRKホールディングス

MRKホールディングスはRIZAPグループ傘下の企業です。多様性の尊重主に事務業務やアシスタント業務で障害者雇用を積極的に行っています。
事業内容は「すべての女性の心と身体の美の追求」という企業理念で体型補正下着、化粧品、サプリの提供を行っています。

4位 キトー

キトーは関東を中心に工場用搬送機器を製作している老舗メーカーです。企業設立当初から障害者雇用に力を入れており、雇用する人数だけでなく、雇用の質も重視しています。障がい者雇用マスタープランを策定し、障害者のキャリアアップを企業ぐるみで行っているのが特徴です。
障害特性に合わせた職場でのサポートがしっかりしており、手話ボードや自動ドア・スロープ、トイレを障害者が利用しやすく改修するといった取り組みがなされています。
ハード面の整備だけでなく、障害のある社員と障害のない社員のコミュニケーションを積極的に推し進めるソフト面のサポートも行っています。

そういった取り組みが評価され、平成29年度には「障害者雇用優良事業所等の厚生労働大臣表彰」で、障害者雇用職場改善好事例の最優秀賞(厚生労働大臣賞)を受賞しています。

5位 関通(かんつう)

関通は関西を中心に物流サービスを展開する上場企業です。企業の社会貢献活動(CSR) の一環として、就労移行支援事業や発達障害者児童向けに放課後デイサービス「ハッピーテラス 俊徳道教室」を運営するなど、さまざまな福祉サービスも展開しています。
また、「2030年までに、若者や障害者を含む全ての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、並びに同一労働同一賃金を達成する」という目標を発表しています。

6位 JSP

自動車の軽量化部材、各種梱包材など樹脂発泡製品の専業大手、JSPは特例子会社JSPモールディングを中心に障害者雇用に取り組んでいます。
JSPモールディングでは、障害者職員への指導体制の整備や、複数人によるサポーターで業務指導とマネジメントを実施しています。それぞれの適性に応じてリーダーを任命し、就労を通じての成長機会を提供しています。
また、平成27年度には、ソニー創業者である井深大氏が設立した障害者就労施設「社会福祉法人 希望の家」に長年役務を発注していることが評価され、優先発注企業等の厚生労働大臣賞を受賞しています。

7位 コンセック

コンセックは広島に本社を置く上場企業で、建設向けダイヤモンド工具を手がける大手企業です。2025年3月期までの中期経営計画では、「働きがいのある職場環境の醸成」を掲げ、職場環境の充実を通じて離職率を減らす取り組みが計画されています。

8位 AOKIホールディングス

AOKIホールディングスは紳士服販売でお馴染みの会社です。AOKIの障害者雇用は始めからうまく行っていたわけではありません。常用従業員が大幅に増えていた時期は障害者雇用数が伸びず、障害者雇用率が不足する事態になりました。労働局から特別指導を受け、2013年には企業名公表をされるかもしれないという危機がありました。そこから、障害者雇用に力を入れ始め、今では東証プライム上場企業としては有数の障害者雇用率となりました。
雇用定着のために、本社施設のバリアフリー化や障害者オフィスの設立を行っており、就業しやすい環境整備に力を入れています。
また、特別支援学校の生徒を職場体験で受け入れるといった新たな試みを行なっているのも特徴です。

9位 ファーストリテイニング

「ユニクロ」でお馴染みのファーストリテイニングは障害者雇用数が1,111人と際立って多いのが特徴です。今回のランキングでも、雇用率こそ前年より下がったものの、雇用人数は前年を10人上回りました。
「1店舗1人以上の障害者雇用」を目標に、障害者支援の相談窓口や障害者雇用の専任社が職場定着をサポートしています。

ファーストリテイニングが障害者雇用に力を入れ始めたきっかけは、ある店舗で障害者を雇用したところ、他の従業員が自発的にサポートを始め、結果として店舗のコミュニケーションが活発になり仕事の効率が上がったことでした。
多様性を企業の活力にするという「攻めの障害者雇用」でファーストリテイニングは結果を残しました。現在では、世界中の店舗を合わせて約1,500人の障害者が働いています。

10位 白鳩(しろはと)

白鳩は京都にある下着専門の通信販売会社。障害者を積極的に雇用してることを示す「京都はあとふる企業」の一つです。
白鳩の障害者雇用はトップダウンで進みました。最初は現場から否定的な意見もあったそうですが、今では現場の従業員も積極的に障害者雇用のサポートを行なっています。
白鳩の方針は障害者だからといって特別扱いせず、特性にあった業務をこなしながら、スキルアップをするというもの。それが行えるのは、従業員たちの自発的なサポートに自信がある表れでしょう。

会社選びのポイント

障害のある人が仕事を選ぶときは、まずは自分の障害の特性に合った、もしくは配慮してくれる会社を選ぶのがポイントです。障害を理由に休みを取りやすいかや、悩んだ時に相談できる窓口はあるかなどは重要なポイントです。

一方で、テクノロジーの発達や企業側の理解が進み、さまざまな業種や会社で障害者雇用が進んでいます。初めから「この業種しかできないんじゃないか」と可能性を狭めるのでなく、やってみたい仕事の会社を調べてみると、意外とサポートが手厚いということがあります。

会社の情報は、ハローワークで調べたり、「独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構」が提供する「障害者雇用リファレントサービス」で全国の障害者雇用の事例をすぐに調べることができます。

会社側としても、会社の社会的な取り組みに興味を持ってもらうことは嬉しいことです。気後れすることなく、積極的にサポート体制などを聞いてみましょう。

障害者雇用を促進するメリット

近年、ますます「企業の社会的責任(CSR)」が問われています。これはグローバルに活動をする大企業だけでなく、中小企業でも同様です。

なぜなら、インターネット・SNSの発達により、情報チャネルが爆発的にしかも双方向に増えているからです。

現代ではかつてのように、マスメディア向けの発信だけでは企業価値・信頼を生み出すことが困難になっています。一方で、企業の不祥事が信頼性に与えるダメージはこれまで以上に大きくなっているのが現状です。

そのような情勢の中で、コンプライアンスを徹底し内部を統制するだけでなく、社会へ積極的に働きかけることによって、企業の信頼性や価値を向上させることが重要です。

これは、SNSの双方向性を生かし、消費者を積極的にその企業のファンにする戦略にもなります。

また、ユニバーサルデザインの考えを応用するなら、障害者のようなサポートが必要な従業員が問題なく働ける職場ということは、他の従業員にとっても働きやすい職場であると言えます。

今後、予想される人手不足の解消のためにも、CSR活動やその一環としての障害者雇用とそれに合わせた職場環境の改善は、より重要になっていくでしょう。

 

 

【参考】

https://www.jeed.go.jp/disability/activity/education/index.html(障害者雇用月間)

https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/000657531.pdf(障害者の職場定着率)

https://core.ac.uk/download/pdf/233923662.pdf(SNSと企業の情報管理)

https://www.chukiken.or.jp/wp-content/uploads/2021/11/2019_01.pdf(CSR活動と離職率)

 

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