障害者雇用を促進するサテライトオフィス・リモートワークのメリット

障害者雇用を促進するサテライトオフィス・リモートワークのメリット


近年では障害者専用のサテライトオフィスやリモートワークという働き方を提供する企業が増えてきました。

企業にとってオフィスの拡大や新たな設置が不要になるだけでなく、人件費削減を行いつつ地方エリアの優秀な人材を確保できる可能性もあり、最近では新たな働き方として広く認知されるようになりました。

障害者雇用においてもサテライトオフィスやリモートワークを活用することで同様のメリットが享受できますが、特にこれから障害者雇用を検討する企業にとっては他にも多くのメリットがあります。

この記事では障害者雇用の促進に繋がるサテライトオフィスやリモートワークの活用が、具体的にどのようなものでどんなメリットがあるのかを解説いたします。

障害者の雇用を妨げる4つの壁

もし企業側が障害者を積極雇用する方針でも労働環境や就労条件によって思うように採用が進まないことも考えられます。なぜなら、障害者雇用における労働環境や就労条件は個別に対応する必要があるからです。

それは企業側だけでなく、雇用される障害者の方にとっても乗り越えなければならない壁です。具体的に障害者雇用の壁となりがちな例を以下に挙げてみましょう。

1. 通勤自体が困難
例えば精神障害者の方の場合、人混みが苦手であったり不安を感じやすい、疲労しやすいなどといった症状が出る方もいますし、そもそも危険の伴う通勤経路を使わないといけないなど、都市部の会社に通勤すること自体が難しいケースもあります。
2. 就労先が遠い
障害をお持ちの方の就労意欲やスキルが高かったとしても、働きたいと思える職場が近くになければ、上記の理由などから雇用に繋がらないことが少なくありません。
3. 不特定多数とのコミュニケーションが困難
障害者を雇用するとなれば、社内周知や教育を行って理解を深める必要があります。しかし、それをすれば問題ないということはなく、社員の何気ない一言がトリガーとなって次の日から出勤しなくなるという事例もあります。
4. バリアフリーが未整備
身体障害者の場合、やはり建物やその周辺設備等のバリアフリー化が整備されていないと、就労だけでなく移動自体が難しいケースも考えられます。

これらの課題をクリアするにはどうすればよいでしょうか?そこで近年注目されているのが「サテライトオフィス」「リモートワーク」という働き方です。

サテライトオフィスとリモートワークの仕組み

サテライトオフィスというのは、一般的に企業の本社・支社から離れた場所に設けるオフィスの事を指します。働く側は通勤圏外の地方に住んでいても働きたい企業に雇用してもらえるメリットがあり、企業には出勤を要さず優秀な人材を雇用できるメリットがあります。

一方、リモートワークはテレワークとも呼ばれ、分かりやすく言うと在宅勤務のことです。連絡手段や通信環境さえ整っていれば、会社からの指示によって自宅にいながら仕事ができ、様々なコスト削減に繋がります。

これらは既に障害者雇用の現場での活用が始まっていますが、一般的なサテライトオフィスやリモートワークとは少し事情が違います。

まずサテライトオフィスの場合、ある企業がサテライトオフィスを構えます。その企業が障害者を雇用するのではなく、障害者本人と障害者を雇用したい会社のマッチングを行い、雇用契約はあくまで双方で直接契約を結んでもらいます。

雇用された障害者は遠方まで通勤する必要がなく、作業はサテライトオフィスで行い、業務のマネジメントもサテライトオフィスのスタッフが行う形態が一般的です。「障害者雇用の代行サービス」と言い換えると分かりやすいかも知れません。

対するリモートワークですが、一般のリモートワークと違うのは、会社側には障害者雇用の理解を深めることが求められたり、本人の体調や就労条件などに関して配慮しながら業務指示を出すといったところにあります。

サテライトオフィス・リモートワークサービスを提供する主な企業

ここまでの説明ではいまいちイメージが湧かないという方もいるかと思いますので、ここで実際にサテライトオフィス事業を行っている企業をご紹介します。

株式会社みんなの福祉村「じゃがいも」

じゃがいもというのは、事業所の名称です。「色んな食材を受け入れるカレーライスのような事業所を目指す」ということで、最初はじゃがいも、後に「にんじん」「ライス」なんて名前の事業所も開設されたいのだそうです。

じゃがいもは名古屋にある就労継続支援B型事業者ですが、サテライトオフィス事業を展開しています。

企業と障害者の方との間で雇用契約を結んでもらい、じゃがいもの施設で作業を行う。もちろん、施設の担当者が様々なサポートを行いますので、企業側も障害者の方も安心して仕事を継続していけるというメリットがあります。

導入までの支援やサポートプランの提案、週1回のカウンセリング面談から緊急時対応まで行ってくれていますので、企業側にも働きたい障害者の方にも魅力的なサービスと言えるのではないでしょうか。

【参考】株式会社みんなの福祉村「じゃがいも」

株式会社スタートライン「障害者向けサテライトオフィスサービス」

株式会社スタートラインは障害者雇用を主とした事業を行う会社です。スタートラインのサテライトオフィスサービスでは、定着率80%を実現しており、東京、埼玉、神奈川に9つのサテライトオフィスを構えています。

職域の開拓や採用業務はもちろん、バリアフリー設備の充実と常駐スタッフによるサポートもあり、障害者雇用の大半をワンストップで受けています。有名企業も多数導入しているサービスでもありますので、こちらも注目度の高いサテライトオフィスサービスと言えるでしょう。

【参考】株式会社スタートライン

サテライトオフィス・リモートワーク導入のメリット

さて、障害者雇用の現場でサテライトオフィスやリモートワークを導入するメリットは何でしょうか。通勤が不要である、企業側のコスト削減なども大きなメリットですが、他にも以下のようなメリットがあります。

  • 障害者雇用率の改善や社会貢献に繋がる
  • 障害者の雇用環境が未整備の会社でも雇用できる
  • 障害者雇用が初めてでも企業側の負担が少ない
  • 障害者の雇用を生み出しやすい
  • スタッフによるサポートが受けられる(サテライトオフィス)
  • 人手不足の解消になる

一部メディアや障害者雇用の関係者の話では、サテライトオフィスやリモートワーク自体を「雇用率を達成するだけの中身のない雇用」といった意見が聞かれることもあります。

しかし、IT時代だからこそ実現できるサテライトオフィスやリモートワークという働き方は、「人前に出たくない」「身辺処理に自信がない」などの不安を抱える障害者の方にとって、働くことの最初の入口としてメリットの方が大きいと言えるでしょう。

障害者の雇用を検討する企業は、専門機関やスタッフの支援を受けつつ、サテライトオフィスやリモートワークの活用から始めてみても良いかもしれません。

まとめ

障害者雇用が盛んなスウェーデンには、福祉先進国としてのモデルとされることが何かと多くあります。

しかしよくある話として、スウェーデンで暮らす人は障害者を障害者と思っておらず、だからこそ「障害を持ってても雇用されている人」「雇用されている障害者」といったニュアンスの違いや言葉の使い方で差別と捉えられてしまうこともあります。それは、障害者が雇用されるのは当然のことという認識が浸透している国民性だと言えるでしょう。

日本においても障害者雇用の機会は一昔前までより随分と改善されてきました。しかし、障害者への理解が深まったと言えるかというと、改善の余地がまだまだありそうだというのが正直なところです。

様々な意見はありますが、働き方改革による障害者のためのサテライトオフィスやリモートワークの活用が、今後の障害者雇用に大いに貢献してくれることを願ってやみません。

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