障害者控除は聞いたことがあっても、自分や家族が対象なのか、年末調整と確定申告のどちらで手続きすべきかわからず、後回しにしている方もいるでしょう。障害者控除とは、本人や、生計を一にする配偶者・親族が所得税法上の障害者に該当し、必要な要件を満たす場合に、所得税の計算で所得から一定額を差し引ける制度です。
本記事では、令和8年分(2026年分)の所得税を中心に、障害者控除の基本から手続きまでを解説します。過去年分を申告する場合は、その年の所得要件や税制で判定してください。
障害者控除とは?まず知っておきたい仕組みと控除額
障害者控除の全体像をつかむために、仕組みと金額、対象となる家族の範囲の順に見ていきましょう。
障害者控除は「所得から差し引ける」税金の軽減制度
障害者控除は、税金の負担を軽くする「所得控除」の一つです。国税庁のタックスアンサー(No.1160)では、納税者本人、同一生計配偶者または扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合に、一定額の所得控除を受けられると説明しています。
差し引かれるのは税金そのものではなく、税額のもとになる所得です。たとえば、27万円の控除額全体に所得税率5%が適用される場合、復興特別所得税を除いた単純計算では、所得税の軽減額は1万3,500円になります。
ただし、実際の軽減額は課税所得やほかの控除によって異なります。もともと所得税がかからない場合は、障害者控除を追加しても所得税の軽減や還付は生じません。
控除額は障害者27万円・特別障害者40万円・同居特別障害者75万円
所得税の障害者控除額は、対象となる人1人につき、障害者27万円、特別障害者40万円、同居特別障害者75万円です。
「同居特別障害者」とは、特別障害者に当たる同一生計配偶者または扶養親族のうち、納税者本人、その配偶者、納税者と生計を一にするその他の親族のいずれかとの同居を常況としている人を指します。
75万円の控除は、対象となる配偶者や扶養親族についてのものです。納税者本人が特別障害者である場合、自身について受けられる障害者控除は40万円であり、家族と同居していても75万円にはなりません。
本人だけでなく配偶者や扶養親族の分も対象になる
障害者控除は、納税者本人のほか、同一生計配偶者と扶養親族についても受けられます。
令和8年分では、対象となる配偶者や扶養親族の合計所得金額は62万円以下が要件です。給与収入だけで、特定支出控除などの適用がない場合は、給与収入136万円以下に相当します。令和7年分の合計所得金額58万円以下、給与収入123万円以下から、判定の範囲が広がっています。
配偶者や扶養親族については、所得要件に加え、納税者と生計を一にしていることなどの要件も満たす必要があります。単に家族であるという理由だけで対象になるわけではありません。
この62万円以下という所得要件は、対象となる配偶者や扶養親族についてのものです。納税者本人が自身の障害者控除を受ける場合に、同じ所得上限はありません。
なお、16歳未満の扶養親族は扶養控除の対象になりませんが、障害者控除の対象にはなります。
障害者控除の対象になる人は?手帳の種類と範囲を整理
対象かどうかの判断材料になる手帳の種類と、手帳がない場合の扱いを確認しましょう。
身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の扱い
身体障害者手帳に身体上の障害がある人として記載されている人は、障害者控除の対象です。そのうち、障害の程度が1級または2級と記載されている人は、特別障害者に区分されます。
精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人も対象となり、障害等級が1級の人は特別障害者です。
知的障害については、児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医の判定により、知的障害者と判定された人が対象です。そのうち、重度の知的障害者と判定された人は特別障害者に当たります。
療育手帳の交付を受けている人も、障害者控除の対象です。国税庁は、重度を示す表示として「A」「マルA」「A2」などを例示しています。ただし、手帳の名称や判定表示は自治体によって異なるため、記号だけで判断せず、重度の判定に当たるかを確認してください。
手帳がなくても対象になる場合
手帳がなくても、所得税法上の要件を満たせば対象になります。
精神上の障害により、物事の道理や善悪を判断する能力を欠く状態が常に続いている人は、特別障害者に該当します。
また、その年の12月31日の現況で、身体の障害により引き続き6か月以上寝たきりの状態にあり、複雑な介護を必要とする人も、特別障害者に該当します。国税庁は、介護を受けなければ自ら排便などをすることができない程度の状態を示しています。
満65歳以上で、障害の程度が所得税法上の障害者に準ずるものとして市町村長、特別区長や福祉事務所長の認定を受けている人も対象です。特別障害者に準ずるものとして認定された場合は、特別障害者として控除を受けられます。認定の申請方法は、お住まいの市区町村に問い合わせてください。
身体障害者手帳または戦傷病者手帳の交付前でも、次の両方を満たす場合は、障害者控除を受けられます。
申告書などの提出時に、手帳の交付を申請中であるか、その手帳の交付を受けるための医師の診断書を持っていること。
その年の12月31日などの判定時点で、明らかにその手帳に記載され、または交付を受けられる程度の障害があると認められること。
この申請中の取扱いは、国税庁No.1186が説明している身体障害者手帳・戦傷病者手帳についてのものです。療育手帳や精神障害者保健福祉手帳について、申請中という理由だけで同じ取扱いになるとは判断せず、税務署に確認してください。
要介護認定だけでは対象にならない
介護保険の要介護認定を受けただけでは、障害者控除の対象にはなりません。障害者控除の要件に該当するかを、別に確認する必要があります。
身体の障害が7級相当で身体障害者手帳が交付されていない場合、その障害だけを理由に障害者控除を受けることはできません。ただし、満65歳以上で障害者に準ずるものとして市町村長などの認定を受けている場合や、ほかの対象要件に該当する場合は、控除を受けられます。
手帳の有無だけでなく、認定や心身の状態など、所得税法上の要件に該当するかを確認してください。
年末調整で障害者控除を受ける方法

会社員やパートの方が、年末調整で控除を受けるための手続きを説明します。
そもそも年末調整とは何のための手続きか
年末調整とは、毎月の給与などから源泉徴収された所得税と復興特別所得税を、その年の給与に対する正しい税額と精算する手続きです。
毎月の源泉徴収税額の合計と、本来納めるべき年税額は一致しないことがあるため、年末に差額を計算します。多く徴収していれば還付し、不足していれば追加で徴収します。
一般に、その年最後の給与を支払う際に行われます。年末調整の対象となる給与所得者の多くは、この手続きで所得税の精算が完了します。ただし、副業の所得などによって、別に確定申告が必要になる場合があります。
「扶養控除等(異動)申告書」で障害者控除を申告する
年末調整で障害者控除を受けるには、勤務先に提出する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に、必要な事項を記載します。
本人、同一生計配偶者または扶養親族が障害者や特別障害者に当たる場合は、障害者に関する欄に該当区分や対象者の情報などを記載してください。
所得要件に当たるか、手帳の種類・等級や認定内容に誤りがないかを確認し、勤務先が指定する期限までに提出してください。
年の途中で状況が変わったときの申告と、年末調整後のやり直し
年の途中で本人や家族が新たに障害者控除の対象となった場合は、扶養控除等(異動)申告書の内容を更新し、勤務先に提出してください。
年末調整後、その年の12月31日までに本人や家族が障害者控除の対象となった場合や、控除の申告漏れに気づいた場合は、速やかに勤務先へ申し出てください。その年分の源泉徴収票を作成・交付する時までであれば、年末調整をやり直せる場合があります。
翌年になって初めて障害者控除の要件に該当した場合は、それだけを理由に前年分の控除を受けることはできません。どの年分の対象となるかは、その年の判定時点の状態などで確認してください。
勤務先で年末調整をやり直さない場合は、確定申告によって控除を受けられます。還付申告は翌年1月1日から提出できるため、勤務先での再計算期限が過ぎるまで待つ必要はありません。
確定申告で障害者控除を受ける方法

年末調整で控除を受けなかった場合や、自分で申告する場合の手続きを確認しましょう。
確定申告とはどんな手続きなのか
確定申告とは、その年の申告対象となる所得や控除をもとに税額を計算し、源泉徴収された税金や予定納税した税金との過不足を精算する手続きです。
年末調整は勤務先が行いますが、確定申告は納税者が申告書を作成し、税務署へ提出します。e-Taxによる電子申告も利用できます。
令和7年分(2025年分)の所得税・復興特別所得税の通常の確定申告期間は、2026年2月16日から3月16日まででした。令和8年分の申告に関する案内は、国税庁の公式サイトで確認してください。なお、還付申告は通常の確定申告期間より前でも提出できます。
申告書は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で、画面の案内に沿って作成できます。
申告書のどこに障害者控除を書くのか
障害者控除は、確定申告書の第一表と第二表に記入します。
第一表では、「所得から差し引かれる金額」の障害者控除欄に控除額を記入します。
第二表では、本人が対象の場合は「本人に関する事項」に、配偶者や扶養親族が対象の場合は「配偶者や親族に関する事項」に、氏名などの必要事項と該当する障害者の区分を記入します。
確定申告書等作成コーナーを利用する場合は、対象者や区分などを入力すると、控除額の計算や申告書への反映が行われます。入力前に、手帳や認定内容を確認してください。
会社員は確定申告が必要?不要?の見分け方
給与所得者の多くは年末調整で精算が完了しますが、給与収入が2,000万円を超える場合や、給与を1か所から受け、その全部が源泉徴収の対象となり、給与・退職所得以外の所得が合計20万円を超える場合などは、原則として確定申告が必要です。還付となる場合などには例外があるため、国税庁の案内で確認してください。
申告義務がなくても、年末調整で障害者控除が反映されず、所得税を納め過ぎている場合は、還付申告によって取り戻せます。
還付申告をする場合は、給与・退職所得以外の所得が20万円以下でも、申告対象となるその所得を併せて申告してください。20万円以下という基準は、一定の給与所得者の申告義務を免除するものであり、その所得を非課税にするものではありません。
年末調整と確定申告の違い、そして還付申告の方法

両者の違いと、納め過ぎた所得税を取り戻す方法を整理します。
年末調整と確定申告の違いを整理する
年末調整では、納税者が勤務先に扶養控除等(異動)申告書を提出し、勤務先が障害者控除などを反映して税額を計算します。
確定申告では、納税者が対象となる所得や控除を申告書に記入し、税務署へ提出します。
年末調整で障害者控除を受けていれば、その控除のためだけに確定申告をする必要はありません。控除が反映されていなかった場合や、年末調整の対象でない場合は、確定申告で控除を受けられます。
還付申告とは?原則5年間提出できる
還付申告とは、確定申告義務のない人が、源泉徴収や予定納税によって納め過ぎた所得税の還付を受けるために行う申告です。
原則として、対象となる年の翌年1月1日から5年間提出できます。令和7年分(2025年分)は2026年1月1日から2030年12月31日まで、令和3年分(2021年分)は2026年12月31日までです。
ただし、期限内の申告が適用要件となる特例もあります。また、確定申告義務がある人に、この5年間という期限がそのまま適用されるわけではありません。
過去の控除漏れに気づいた場合は、対象年の所得要件や障害の状態を確認してください。今年の所得要件を過去年分に当てはめることはできません。
なお、源泉徴収された所得税も予定納税した所得税もない場合は、申告しても所得税の還付は生じません。
還付申告の進め方と、申告内容を間違えたときの更正の請求
源泉徴収票、対象者の手帳や認定内容がわかる資料、その他の所得・控除に関する資料などを用意し、確定申告書等作成コーナーで申告書を作成してください。提出は、e-Taxのほか、郵送や税務署の窓口でも行えます。資料の準備と、申告書への添付・提示の要否は別です。提出方法に応じた案内を確認してください。
すでに申告した内容に控除漏れがあった場合、法定申告期限前であれば、正しい内容の申告書を作成して再提出する方法があります。
法定申告期限後に、納める税金が多過ぎた、または還付額が少な過ぎたことに気づいた場合は、「更正の請求」によって訂正を求められます。
更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。ただし、確定申告義務のない人が提出した還付申告については、原則として還付申告書を提出した日から5年以内です。
所得控除を追加しても、最終的な税額または純損失の金額に変動がない場合は、更正の請求はできません。
「年末調整がよくわかるページ(令和8年分)」とは?2026年の変更点
国税庁のページの内容と、令和8年分の主な変更点を確認しましょう。
国税庁が公開する「年末調整がよくわかるページ(令和8年分)」の中身
このページには、年末調整の手順を解説する動画やパンフレット、必要な様式、記載例などへの案内がまとめられています。
給与所得者向けの説明や「令和8年分 年末調整のしかた」、扶養控除等(異動)申告書の様式などを確認できます。年末調整の書類を作成するときは、令和8年分の資料を使用してください。
昨年と比べて変わった点(基礎控除の引上げ等)
令和8年分の主な変更点として、基礎控除の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げ、扶養親族等の所得要件の改正、23歳未満の扶養親族を有する場合の生命保険料控除の特例が案内されています。
基礎控除などの改正は、原則として2026年12月1日に施行され、令和8年分の所得税から適用されます。2026年11月までの給与などの源泉徴収事務は変更されず、12月の年末調整などで改正後の内容が反映されます。
令和8年分の基礎控除は、合計所得金額に応じて最大104万円です。すべての人が104万円の控除を受けられるわけではありません。
給与所得控除の最低保障額は、令和8・9年分の特例を含めて74万円となります。令和10年分以後は取扱いが異なるため、74万円が恒久的に続くという説明は避けてください。
障害者控除にとって今年の改正はどう関わるのか
障害者控除そのものの金額である27万円・40万円・75万円に変更はありません。
一方、同一生計配偶者や扶養親族の合計所得金額の要件は62万円以下となり、給与収入だけの場合は原則136万円以下に相当します。令和7年分の給与収入123万円以下から範囲が広がるため、これまで所得要件を超えていた家族が、新たに対象になる場合があります。
新たに対象となる家族について年末調整で控除を受けるには、扶養控除等(異動)申告書に必要事項を記載して提出してください。勤務先の提出期限までに、家族の年間所得の見込みと、手帳や認定の内容を確認してください。
まとめ
障害者控除は、納税者本人、同一生計配偶者または扶養親族が所得税法上の障害者に該当する場合に受けられる所得控除です。控除額は、障害者27万円、特別障害者40万円、同居特別障害者75万円です。75万円は、対象となる配偶者や扶養親族についての金額です。
手帳がなくても、一定の心身の状態や満65歳以上での認定などにより対象になります。身体障害者手帳・戦傷病者手帳の交付前については、申請中または所定の診断書を持っていることに加え、判定時点で交付を受けられる程度の障害があることなどが必要です。
年末調整の対象となる方は、勤務先に扶養控除等(異動)申告書を提出してください。年末調整後に控除漏れなどに気づいた場合は、源泉徴収票を作成・交付する時までに勤務先へ相談してください。
勤務先でやり直さない場合は、確定申告で控除を受けられます。申告義務のない人の還付申告は原則として翌年1月1日から5年間、更正の請求は原則として法定申告期限から5年以内です。ただし、申告義務のない人が提出した還付申告の更正の請求は、原則として提出日から5年以内です。
令和8年分は家族の所得要件などが変わっています。国税庁の令和8年分の資料を確認し、対象となる年分に合った条件で手続きを進めてください。
参考:
国税庁「No.1160 障害者控除」国税庁「No.1185 市町村長等の障害者認定と介護保険法の要介護認定について」国税庁「No.1186 身体障害者手帳等の交付を申請中である場合の障害者控除の適用について」国税庁「No.2671 年末調整の後に扶養親族等の人数が異動したとき」国税庁「令和8年分 年末調整Q&A」国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」国税庁「No.2030 還付申告」国税庁「No.2026 確定申告を間違えたとき」国税庁「年末調整がよくわかるページ(令和8年分)」国税庁「令和8年分 年末調整のしかた:昨年と比べて変わった点(基礎控除の引上げ等)」情報確認日:2026年10月13日
執筆者プロフィール

ウェブ・コピーライターとしてクライアントワークを中心に活動中。