
9月10日から9月16日までは自殺予防週間です。
本記事では、自殺予防週間とは何か、なぜこの時期に実施されるのか、どのような取り組みが行われているのかを解説するとともに、2026年に実施される主なイベントを紹介します。
自殺予防週間とは?
法律で定められた9月10日から16日の1週間
自殺予防週間とは、毎年9月10日から9月16日までの1週間を指す法律で明確に位置づけられた期間です。根拠となっているのは平成18年に成立した自殺対策基本法で、その第7条には自殺対策の重要性への理解と関心を国民の間に広めるとともに、対策の総合的な推進に役立てるため、自殺予防週間と自殺対策強化月間を設けるという趣旨が明記されています。
同じ条文の第2項では、自殺予防週間を9月10日から16日まで自殺対策強化月間を3月とすると具体的な期間まで規定されており、法律上の制度として運用されている点が大きな特徴です。さらに第3項では、国および地方公共団体が啓発活動を広く展開し、それにふさわしい事業を実施するよう努めるとも定められており、国と自治体へ具体的な行動を促す内容になっています。
世界自殺予防デーと重なる9月10日
自殺予防週間の初日である9月10日は、世界保健機関(WHO)と国際自殺予防学会(IASP)が共同で定めた「世界自殺予防デー」でもあります。厚生労働大臣指定法人である一般社団法人いのち支える自殺対策推進センターの解説によると、2003年にWHOとIASPがスウェーデンのストックホルムで共同開催した世界自殺防止会議の初日を最初の世界自殺予防デーとし、世界全体で自殺対策に取り組む責任があると決意表明された日です。
なぜ9月というタイミングなのか
9月という時期には、もう一つ大事な理由があります。厚生労働省は夏休みなどの長期休暇が明けた前後にこども・若者の自殺リスクが高まる傾向を踏まえ、自殺予防週間に先駆けて8月から集中的な啓発活動を行っています。
実際に文部科学省も、夏期休業のあとに児童生徒の自殺が急増する傾向があることを教育委員会へ周知し、組織的な見守り体制の強化を依頼してきました。9月という設定は単なる区切りではなく、実際のリスクの高まりに合わせた実務的な判断に基づくものといえるでしょう。
自殺予防週間の取り組み
相談体制を手厚くする動き
自殺予防週間の期間中、国は相談支援体制を通常より手厚くする取り組みを実施しています。令和7年度の実績では、都道府県と指定都市の14自治体が「こころの健康相談統一ダイヤル」の運用時間を延長するなどの拡充を行いました。SNSや電話による相談事業を手がける民間団体5団体でも、相談員の増員や相談時間の延長が進められているのです。
悩み別、相談方法別、地域別に検索できる「支援情報検索サイト」も用意されており、全国の自治体や関係団体が実施する相談会や啓発活動の情報を、一覧でまとめて確認できるようになっています。
ポスターや動画を使った呼びかけ
視覚に訴える啓発活動も、自殺予防週間の柱の一つです。厚生労働省は関係府省庁や自治体、関係団体、鉄道各社などを通じて広報ポスターを全国に配布し、駅舎や学校、医療機関、スーパーなどへ掲示しています。令和7年度の実績では全国の約615の自治体が約829件もの取り組みを実施したと公表されており、その規模の大きさがうかがえます。
インターネット上でも、YouTubeやYahoo!の広告枠を使った動画配信、厚生労働省公式SNSでの発信など、さまざまな方向からの呼びかけが展開されました。人々が日常的に接する媒体を幅広く活用している点が特徴といえるでしょう。
こども・若者に向けた重点的な発信
近年、特に力を入れているのがこども・若者に向けた対策です。2026年3月に警察庁と厚生労働省が公表した確定値によると、2025年の小中高生の自殺者数は538人で、前年の529人から9人増え、統計のある1980年以降で最多となりました。この状況を受けて、厚生労働省はこども家庭庁や文部科学省、内閣府孤独・孤立対策推進室と連携し、自殺予防週間に先立つ8月上旬からこども・若者向けの集中的な啓発活動を進めています。
令和7年度には、厚生労働大臣、文部科学大臣、こども政策担当大臣、孤独孤立対策担当大臣の連名によるメッセージが発信されました。若い世代へ向けて、一人で抱え込まないでほしいという呼びかけがなされています。
自殺予防週間に行われる主なイベント

無料相談会や電話相談の拡充
自殺予防週間には、期間限定で相談窓口の対応時間や体制を拡充する動きが集中します。一般社団法人日本いのちの電話連盟は、フリーダイヤルによる24時間体制の電話相談を、令和7年度は9月10日8時から17日8時までの168時間にわたって実施しました。特定非営利活動法人自殺対策支援センターライフリンクも、期間中はSNS相談や電話相談、メール相談の対応時間を広げています。
一般社団法人日本産業カウンセラー協会は、世界自殺予防デーに合わせて「働く人の電話相談室・働く人のSNS相談室」を開設しており、カスタマーハラスメントを含む職場のストレスに悩む労働者やその家族からの相談に応じる取り組みです。
シンポジウムや研修会
学術的な催しも実施されています。一般社団法人日本自殺予防学会は令和7年度に生きづらさに向き合いながら効果的なアプローチの実現を目指すというテーマで総会を開催し、あわせて心理職向けの危機介入研修会やゲートキーパー養成指導者研修会も行いました。日本いのちの電話連盟と島根いのちの電話が主催するシンポジウムでは、孤独・孤立と自殺予防をテーマに、いのちの電話相談員の役割について議論が交わされています。
こうした場は、支援に関わる人たちが知識を深め、横のつながりを築く機会にもなっているといえるでしょう。
2026年 各自治体で行われる主なイベント
| 地域 | イベント名 | 日時・会場 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 自殺予防週間パネル展 | 9月10~11日 | 北海道庁の道政広報コーナーで自殺予防に関するパネルを展示 |
| 秋田県 | 暮らしとこころの相談会 | 9月11日 10:00~16:00 | 秋田弁護士会が面談・電話による無料相談を実施 |
| 東京都 | 第39回「自殺防止!東京キャンペーン」 | 9月を中心に実施 東京芸術劇場は9月10~16日など |
24時間特別相談、街頭啓発、パネル展、都内施設のライトアップなどを展開 |
| 千葉県 | 県内8施設ブルーライトアップ | 9月10~16日 | 千葉県庁、千葉ポートタワー、館山城、銚子ポートタワーなどを青色に点灯 |
| 神奈川県 横須賀市 | 自殺予防街頭キャンペーン・ライトアップ | 街頭キャンペーン:9月10日 11:00~12:00・17:00~18:00 ライトアップ:9月10~12日 |
学生ボランティアやゲートキーパー登録者が相談窓口冊子を配布。本庁舎ライトアップや企画展示も実施 |
| 福井県 | 悩みごと総合相談会 | 9月12日 9:00~12:00 若狭健康福祉センター |
弁護士、精神科医、臨床心理士、保健師、相談支援員などが対応 |
| 名古屋市 | 「こころの絆創膏」パネル展 | 8月20日~9月16日 鶴舞中央図書館 |
自殺予防・いのちの支援に関するパネルや図書、相談窓口資料を展示 |
| 京都市 | 啓発キャンペーン・「きょう ほっと あした~くらしとこころの総合相談会~」 | 相談会:9月12日 13:00~17:00 京都市呉竹文化センター |
市役所パネル展示や市役所本庁舎ライトアップのほか、相談会も実施。弁護士、心理士、僧侶、産業カウンセラー、保健師、自死遺族支援者などが対応 |
| 岡山県 | 「暮らしとこころの相談会」 | 津山:9月5日 10:00~16:00 岡山:9月12日 10:00~16:00 |
弁護士、司法書士、臨床心理士、社会福祉士などによるワンストップ相談。岡山県と岡山弁護士会が共催 |
| 愛媛県 西条市 | 若年者向け自殺予防パネル展 | 9月1~30日 西条・東予・丹原・小松温芳の4図書館 |
相談窓口や心のSOS、ゲートキーパーについて紹介 |
| 北九州市 | 自殺予防に関するシンポジウム | 9月5日 13:30~17:00 ウェルとばた大ホール 定員500人・無料 |
「市販薬オーバードーズの理解と援助」など、依存と自殺をテーマに開催 |
| 鹿児島県 鹿屋市 | 自殺予防週間パネル展 | 市役所:9月7~11日 鹿屋市立図書館:9月8~30日 |
相談窓口、こころの状態を確認する「こころの体温計」、ゲートキーパーなどを紹介 |
その他、全国の自治体で行われる主な取り組みはこちら
厚労省|各自治体における令和8年度自殺予防週間の主な取組[Excelファイル|349KB]
まとめ
自殺予防週間とは、自殺対策基本法という法律に基づいて毎年9月10日から16日に実施される、国を挙げた啓発期間です。9月10日という起点はWHOとIASPが定めた世界自殺予防デーとも重なっており、最初の自殺総合対策大綱の策定時に、この日からの1週間を自殺予防週間とすることが定められた経緯があります。
この1週間には、国や自治体による相談体制の拡充、ポスターや動画を使った広報、こども・若者への重点的な呼びかけ、そして弁護士会や学会、鉄道各社まで巻き込んだ幅広いイベントが用意されています。2025年の全体の自殺者数は1万9188人と、統計開始以降で初めて2万人を下回りました。その一方で、小中高生の自殺者数は538人と過去最多を更新しており、課題が完全に解消されたわけではありません。自殺予防週間は、身近な人への声かけや、困ったときに利用できる相談窓口について改めて知る機会でもあります。
参考:厚生労働省|自殺予防週間(9月10日~16日)厚生労働省|9月10日から9月16日は「自殺予防週間」です
いのち支える自殺対策推進センター|9月10日~16日は「自殺予防週間」 いのちを守る一歩を
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