
障害者雇用枠で働くには、応募条件となる手帳・判定などを確認し、希望する仕事と必要な配慮を整理したうえで、求人に応募します。
ハローワークの障害者専門窓口では、求職登録、求人紹介、応募書類の作成や面接に関する相談ができます。手帳の取得前でも利用できる支援があるため、手帳の交付を待たずに相談してください。
ハローワークへの登録やトライアル雇用の利用は、障害者雇用枠で働くための一律の必須条件ではありません。企業への直接応募や民間の職業紹介サービスを利用する方法もあります。この記事では、ハローワークを活用する場合を中心に、手続きと制度を整理します。
この記事は誰のための記事か
障害者雇用枠での就職・転職を考えている方、家族や支援者として手続きを手伝いたい方、一般枠で働きながら必要な配慮を受ける方法を知りたい方に向けた記事です。
まず知っておきたい「法定雇用率」の基本
法定雇用率とは、企業や公的機関が雇用すべき対象障害者の割合です。2026年7月1日から、民間企業の法定雇用率は2.7%に引き上げられています。
| 区分 | 2024年4月〜2026年6月 | 2026年7月〜 |
|---|---|---|
| 民間企業 | 2.5% | 2.7% |
| 国・地方公共団体・一定の特殊法人 | 2.8% | 3.0% |
| 都道府県等の教育委員会 | 2.7% | 2.9% |
民間企業で障害者を1人以上雇用する義務がある事業主の範囲は、2026年7月から常用雇用労働者37.5人以上になりました。人数は、短時間労働者の換算など、制度上の算定方法に基づきます。
ただし、法定雇用率は企業側の雇用義務に関する制度です。対象規模の企業すべてが常に障害者向け求人を出しているわけではなく、対象規模未満の企業でも障害者を採用できます。
「求人への応募条件」と「雇用率制度の対象」は区別する
障害者雇用枠の求人では、障害者手帳の所持を応募条件としている場合があります。応募前に、求人票の対象者欄と必要書類を確認してください。
雇用率制度の対象となる障害者の確認に使われる主な書類は、次のとおりです。
| 区分 | 主な確認書類 |
|---|---|
| 身体障害者 | 身体障害者手帳。対象となる障害の範囲は障害者雇用促進法に基づきます。 |
| 知的障害者 | 療育手帳など、または所定の機関・専門家による知的障害の判定。 |
| 精神障害者 | 精神障害者保健福祉手帳。雇用率への算定には、原則として有効な手帳が必要です。 |
「手帳がない人は一切応募できない」「診断書があれば必ず雇用率に算定される」という説明は、どちらも正確ではありません。求人の応募条件、雇用率制度の対象、支援制度の利用条件を分けて確認してください。
発達障害や難病などがあり、手帳を持っていない方も、ハローワークや地域障害者職業センターなどで利用できる支援があります。
ステップ1:応募条件を確認し、必要に応じて手帳を申請する
手帳を持っていない場合は、希望する求人の応募条件をハローワークなどで確認してください。手帳の申請については、住所地の市区町村の障害福祉担当窓口と主治医に相談します。
手帳の種類によって申請方法が異なる
| 手帳の種類 | 主な手続き |
|---|---|
| 身体障害者手帳 | 指定医が作成する診断書・意見書などを用意し、市区町村の窓口などで申請します。 |
| 療育手帳 | 市区町村の窓口などに相談し、児童相談所や知的障害者更生相談所などで判定を受けます。名称や申請方法、判定基準は自治体によって異なります。 |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 所定の診断書、または精神障害を支給事由とする障害年金の受給を証する書類などを使って申請します。申請方法により必要書類が異なります。 |
申請書、写真、本人確認書類、マイナンバーに関する書類などの必要書類は、手帳の種類と自治体によって異なります。診断書を依頼する前に、申請先の公式案内で様式と必要書類を確認してください。
診断書の作成費用は医療機関によって異なります。自治体による費用助成の有無も確認してください。交付までの期間も、判定・審査の状況や書類の補正によって変わるため、申請窓口で確認します。
精神障害者保健福祉手帳を診断書で申請する場合:精神障害に係る初診日から6か月を経過した日以後の診断書が必要です。診断書以外の書類で申請できる場合もあるため、主治医と申請窓口に確認してください。
ステップ2:ハローワークの障害者専門窓口に相談・求職登録する
ハローワークには、障害のある方の就職相談に対応する専門窓口があります。「専門援助部門」など、窓口の名称はハローワークによって異なります。
手帳の申請前・申請中でも、まず相談してください。障害や疾病の状況に応じて、利用できる支援や必要な確認書類の案内を受けられます。
登録・相談の手順
1.利用するハローワークを確認する
所在地と障害者専門窓口の受付時間、予約の要否を確認してください。家族や支援者の同席を希望する場合も、事前に伝えます。
2.必要な持ち物を確認する
手帳を持っている方は、持参を案内されることがあります。手帳がない方や申請中の方は、その状況を伝えてください。障害や疾病を確認する書類、主治医の意見書などが必要となる場合があります。
履歴書や職務経歴書は、作成済みであれば相談に活用できます。初回相談・求職登録の全国共通の必須書類とは限らないため、未作成でも窓口に相談してください。
3.求職登録を行い、希望条件を伝える
希望する職種、勤務地、勤務時間、これまでの経験、通院の状況、仕事で必要な配慮を伝えてください。「口頭の指示に加えてメモがあると理解しやすい」など、具体的に整理すると相談に役立ちます。
4.求人紹介や応募支援を受ける
求人紹介のほか、応募書類の作成や面接について相談できます。本人の状況や地域の支援体制に応じて、職業評価、職場実習、就労支援機関などの案内を受けることもあります。
ハローワークの求職登録・職業相談・職業紹介は無料です。
ステップ3:求人に応募し、必要に応じてトライアル雇用を活用する
障害者トライアル雇用は、一定期間の雇用を通じて、仕事との適性や業務を行ううえでの課題を確認し、継続雇用につなげる制度です。利用は任意で、通常の求人に応募する方法もあります。
手帳や求職登録だけで利用が決まる制度ではない
障害者トライアル雇用には、本人の希望に加え、未経験の職業への就職を希望している、一定の離転職歴や離職期間がある、重度身体障害・重度知的障害・精神障害があるなどの対象要件があります。
手帳を持っていることだけで利用できるわけではなく、手帳がない方でも対象となる場合があります。ハローワークまたは制度を取り扱う民間の職業紹介事業者などで、対象となるか確認してください。
期間・賃金・助成金の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 雇用期間 | 原則3か月。精神障害者は原則6〜12か月で、本人と企業の合意により3〜5か月とすることもできます。テレワーク勤務などには別の取扱いがあります。 |
| 賃金・労働条件 | 雇用契約に基づき、企業から賃金が支払われます。労働基準法や最低賃金法などの労働関係法令が適用されます。 |
| 終了後 | 仕事への適応状況などを確認し、継続雇用への移行を判断します。移行が保証される制度ではありません。 |
| 企業への助成金 | 精神障害者以外は、対象者1人につき月額最大4万円・最長3か月。精神障害者は、月額最大8万円を3か月、月額最大4万円を3か月で、助成は最長6か月です。別途支給要件があります。 |
トライアル雇用の実施期間と、企業への助成金の支給期間は異なります。精神障害者のトライアル雇用が12か月の場合でも、この助成金が12か月支給されるわけではありません。また、助成金は企業に支給されるもので、本人に直接支給される手当ではありません。
利用の流れ
まず、紹介機関に利用希望を伝えて対象要件を確認します。次に、対象求人への紹介と面接を経て、雇用契約を結びます。開始前に、賃金、勤務時間、仕事内容、期間、終了後の移行条件を確認してください。
注意:障害者トライアル雇用は、無給の実習ではありません。労働条件通知書などで条件を確認し、求人票と異なる点がある場合は、契約前に企業と紹介機関に確認してください。
短い勤務時間から始めたい精神障害者・発達障害者には、週10時間以上20時間未満から開始し、期間中に週20時間以上を目指す「障害者短時間トライアル雇用」もあります。通常の障害者トライアル雇用とは条件が異なるため、窓口で相談してください。
就労パスポートで「得意なこと」と「必要な配慮」を整理する

就労パスポートは、厚生労働省が作成した情報共有ツールです。働くうえでの自分の特徴、アピールポイント、希望する配慮などを整理し、企業や支援機関に伝えるために使います。
得意な作業、苦手な作業、体調管理の工夫、指示の受け取り方、通院や休憩への配慮などを具体的に記載します。支援機関の担当者と相談しながら作成・更新できます。
作成・活用は任意です。採用のために一律に提出する義務はありません。誰に何を共有するかも本人の意向を踏まえて決めます。様式と活用の手引きは、厚生労働省のウェブサイトからダウンロードできます。
障害者雇用枠と一般枠の違い
| 比較項目 | 障害者雇用枠 | 一般枠 |
|---|---|---|
| 応募条件 | 障害のある方を対象とする求人。手帳や判定などの確認条件は求人ごとに異なる。 | 職務経験・資格など、求人ごとの応募条件による。 |
| 障害情報の共有 | 応募条件の確認や配慮の調整に必要な範囲で、企業に障害の状況などを伝える。 | 障害を伝えて応募する方法と、伝えずに応募する方法がある。 |
| 合理的配慮 | 障害者雇用促進法に基づく提供義務の対象。 | 同法の対象となる障害者であれば、一般枠でも提供義務の対象。 |
| 仕事内容・賃金・雇用形態 | 求人と契約内容による。障害者雇用枠であることだけでは決まらない。 | 求人と契約内容による。 |
雇用分野の合理的配慮は2016年4月から義務化
民間企業の募集・採用や職場での合理的配慮は、障害者雇用促進法により2016年4月1日から義務化されています。2024年4月施行の改正障害者差別解消法による事業者の義務化とは区別してください。
対象は障害者手帳の所持者に限定されません。一般枠で働く場合も、同法の対象となる障害者であれば合理的配慮の対象です。
ただし、希望した措置がすべてそのまま実施されるわけではありません。本人と企業が話し合い、企業に過重な負担とならない範囲で必要な措置を検討します。必要な配慮がある場合は、仕事で困る状況と希望する対応を具体的に伝えてください。
よくある質問
Q1:手帳の申請中でも応募できますか?
応募先の条件によります。「採用時点で必ず手帳が必要」と全国一律にはいえません。手帳の申請状況を伝え、応募できる時期と必要書類を企業または紹介機関に確認してください。ハローワークでの相談は、交付を待たずに始められます。
Q2:障害者雇用枠だと給料は低くなりますか?
障害者雇用枠であることだけで賃金が決まるわけではありません。障害者であることを理由とする不当な差別的取扱いは禁止されています。
一方で、仕事内容、勤務時間、責任の範囲、能力などの評価によって賃金は異なります。「同じ職種名なら必ず同額」とは限りません。基本給、勤務時間、賞与、昇給、契約更新の条件を求人票と労働条件通知書で確認してください。
Q3:障害の情報は職場でどこまで共有されますか?
応募条件の確認や配慮の実施に必要な範囲で、人事担当者、上司、支援担当者などが情報を扱うことがあります。障害の内容を社員全員に知らせる必要があるわけではありません。
入社前に、共有する情報、共有先、利用目的、同僚への説明方法について企業と確認してください。病名や手帳の等級と、仕事上必要な配慮を分けて整理することも役立ちます。
相談できる窓口と費用
相談窓口と、訓練などを行う障害福祉サービスでは、費用の仕組みが異なります。
| 窓口・支援機関 | 主な役割・費用 |
|---|---|
| ハローワークの障害者専門窓口 | 求職登録、職業相談、求人紹介、応募支援、トライアル雇用の相談。職業相談・紹介は無料。 |
| 障害者就業・生活支援センター | 就職活動や職場定着、就労に伴う生活面の相談・支援。相談・支援は無料。 |
| 地域障害者職業センター | 職業相談・評価、職業準備支援、ジョブコーチ支援など。支援は無料ですが、交通費や昼食代などは自己負担。直接の職業紹介は行いません。 |
| 就労移行支援事業所 | 就職に向けた訓練や求職活動支援など。標準利用期間は原則2年で、延長が認められる場合があります。利用には市区町村の支給決定が必要です。費用は原則1割負担で、所得に応じた月額上限があります。 |
| 市区町村の障害福祉担当窓口 | 障害者手帳や障害福祉サービスの申請・相談。手帳申請の診断書代などは別途確認が必要です。 |
就労移行支援などの障害福祉サービスは、生活保護受給世帯や市町村民税非課税世帯では、サービス費の負担上限が0円です。課税世帯には所得区分などに応じた上限があります。食費や交通費などの実費は、サービス費と別に確認してください。
まとめ:応募条件を確認し、相談と就職活動を進める
障害者雇用枠での就職を考えたら、まず希望する求人の対象者と必要書類を確認してください。手帳の申請が必要な場合も、就職相談と並行して進められます。
ハローワークなどで希望する仕事と必要な配慮を整理し、求人に応募します。トライアル雇用や就労パスポートは、本人の希望と利用条件に応じて活用してください。
働き始めた後も、障害者就業・生活支援センターや地域障害者職業センターなどに相談できます。最初の相談先に迷ったら、ハローワークの障害者専門窓口に連絡してください。
参考:
ハローワーク千歳「障害者雇用率の引き上げ等について」高齢・障害・求職者雇用支援機構「雇用支援施策の適用範囲のご案内」厚生労働省「障害者手帳について」厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳制度実施要領について」厚生労働省「障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース」厚生労働省「就労パスポート」高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者雇用関係のご質問と回答」長野労働局「障害者就業・生活支援センターのご案内」
執筆者プロフィール

主に福祉関連を中心に活動するライター
制度の枠組みから心の機微までを丁寧に言語化する傍ら、暮らしを彩るモノ・コトへの感性も鋭い。専門性の高い記事から、軽やかなエッセイ、実用的なレビューまで、多角的な視点で「日常の価値」を編み直す。