
結論:まず「相談支援専門員」か「市区町村の障害福祉課」に連絡する
利用中のA型事業所が閉鎖(廃止)することになったら、まず担当の相談支援専門員または市区町村の障害福祉課に連絡してください。次の利用先の候補探し、支給決定や受給者証に関する手続き、収入が途切れる期間の生活について相談する出発点になります。
閉鎖に伴う相談は、現在そのA型事業所を利用している方ができます。ただし、新たなサービスの利用や給付制度の受給には、それぞれ要件があります。閉鎖を知った時点で、できるだけ早く相談してください。
この記事でわかること
・A型事業所の閉鎖通知を受けたあとに確認すること
・別のA型事業所、B型事業所、就労移行支援、一般就労の違い
・相談先、持ち物、手続きの流れ
・収入が途切れるときに確認したい制度
A型事業所の閉鎖と報酬改定の背景
就労継続支援A型は、原則として利用者と雇用契約を結び、働く機会と就労に必要な支援を提供する障害福祉サービスです。雇用契約を結ぶ利用者には、最低賃金などの労働関係法令が適用されます。
2024年度の障害福祉サービス等報酬改定後、A型事業所の廃止やB型への転換、利用者の解雇が問題になりました。
A型の基本報酬にはスコア方式が用いられています。2024年度の報酬改定では、生産活動収支が利用者への賃金総額を上回る場合を高く評価し、下回る場合の評価を厳しくする見直しが行われました。
閉鎖の理由や対応は事業所によって異なります。利用中の事業所から閉鎖の説明を受けたら、閉鎖日と今後の支援について確認してください。
参考:厚生労働省「武見大臣会見概要(令和6年6月18日)」参考:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定後の状況に関する意見等(概要)」
1. 閉鎖を知ったらやること
① 閉鎖通知と雇用契約に関する説明を確認する
・閉鎖日と最終利用日
・雇用契約の終了日と終了理由
・次の利用先についての説明や調整の予定
・未払いの賃金や最終給与の支払日
・離職票などの発行について
通知や説明資料は、書面で受け取り保管してください。利用契約の終了と雇用契約の終了は分けて確認することが大切です。
解雇の場合は、原則として30日前の予告、または予告日数が30日に満たない分の平均賃金の支払いが必要です。解雇予告や未払い賃金に疑問がある場合は、労働基準監督署や都道府県労働局の総合労働相談コーナーに相談してください。
② 担当の相談支援専門員に連絡する
担当の相談支援専門員がいる場合は、閉鎖日と事業所から受けた説明を伝えてください。今後の働き方や生活について相談し、必要に応じてサービス等利用計画を見直します。
連絡先がわからない場合は、市区町村の障害福祉課に確認してください。セルフプランで利用していたなど、担当の相談支援専門員がいない場合は、障害福祉課に直接相談してください。
③ 市区町村の障害福祉課に連絡する
次の利用先やサービスの種類に応じて、支給決定の変更や受給者証に関する手続きが必要になります。現在の支給決定で利用できる範囲と、新たに必要な手続きを確認してください。
なお、制度上の「暫定支給決定」は、一定期間サービスを利用し、本人にそのサービスが適しているかを評価する仕組みです。次の利用先が決まるまでの生活費を支給する制度ではありません。
参考:厚生労働省「介護給付費等に係る支給決定事務等について(令和8年7月版)」
④ 次の支援先を見学・体験する
候補となる事業所の仕事内容、通所日数、作業時間、賃金・工賃、通勤方法などを確認してください。可能であれば複数の事業所を見学し、体験利用について相談してください。
相談支援専門員に、見学の調整や同行を相談することもできます。
⑤ 必要な手続きを済ませ、新しい事業所を利用する
市区町村と新しい事業所に、支給決定や受給者証の手続き、契約、利用開始日の順序を確認してください。別のA型事業所を利用する場合は、福祉サービスの利用契約に加えて、雇用契約の内容も確認してください。
ポイント:事業所には、支援の継続に向けた連絡調整などを行う義務があります
事業を廃止する指定障害福祉サービス事業者には、引き続きサービスを希望する利用者に必要な支援が継続して提供されるよう、他の事業者や関係者との連絡調整などを行う義務があります。これは、新たな事業所への採用や就職を保証するものではありません。次の利用先について説明や調整がない場合は、市区町村の障害福祉課に相談してください。
参考:厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者の事業廃止(休止)に係る留意事項等について」
2. 次の選択肢を比較する
主な選択肢は、別のA型事業所、B型事業所、就労移行支援、一般就労です。体調や希望する働き方、生活費を踏まえて、相談支援専門員などと一緒に検討してください。
| 選択肢 | 雇用契約 | 収入の目安 | 利用期間 | 検討の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 別のA型事業所 | 原則あり | 雇用契約に基づく賃金。全国平均月額91,451円※ | 一律の利用期間上限なし。支給決定の更新が必要 | 支援を受けながら、雇用契約に基づいて働きたい方 |
| B型事業所 | なし | 生産活動に対する工賃。全国平均月額24,141円※ | 一律の利用期間上限なし。支給決定の更新が必要 | 雇用契約に基づく働き方が難しく、体調などに合わせた支援が必要な方 |
| 就労移行支援 | なし | 雇用契約に基づく賃金は原則なし。生産活動に参加する場合は工賃あり | 標準利用期間は2年。要件に応じた例外あり | 訓練や実習などを通じて一般企業への就職を目指したい方 |
| 一般就労(障害者雇用枠を含む) | あり | 企業や労働条件による | 福祉サービスの利用期間上限は適用されない | 一般企業への就職を希望し、求人への応募を進めたい方 |
※平均月額は厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」(2026年3月修正版)に基づきます。実際の賃金・工賃は、事業所、仕事内容、利用日数や労働時間などによって異なります。平均額が個人に保証されるものではありません。
参考:厚生労働省「平均工賃(賃金)月額の実績について」
別のA型事業所に移る場合
希望する地域の募集状況を確認してください。相談支援専門員や障害福祉課に加え、ハローワークにも相談できます。
仕事内容、勤務時間、賃金、通勤距離、交通費などを確認してください。利用希望だけで採用が決まるわけではないため、応募や選考の流れも事業所に確認してください。
65歳以上の方のA型利用には、65歳になる前の障害福祉サービスの利用状況などの条件があります。該当する方は、市区町村の障害福祉課に確認してください。
B型事業所に移る場合
B型は雇用契約を結ばず、生産活動などの機会と支援を提供するサービスです。通所日数や作業時間の調整については、体調や希望を伝えて事業所と相談してください。
A型の賃金と比べて工賃が低くなる可能性があります。見学時に工賃の仕組みや見込額を確認し、生活費が不足する場合は、障害年金や生活保護などの受給要件について相談してください。
A型からB型に移る際は、市区町村でサービスの種類に応じた支給決定の変更などが必要です。相談支援専門員がいる場合は、サービス等利用計画の見直しも相談してください。
2025年10月から、新たにB型を利用する場合は、原則として就労選択支援によるアセスメントが必要です。ただし、50歳以上の方、障害基礎年金1級の受給者、就労経験があり年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難になった方などは、アセスメントなしで利用できます。A型からB型に移る場合も、自分に必要な手続きを障害福祉課に確認してください。
就労移行支援を利用する場合
対象は、原則として65歳未満で、一般企業への就職を希望し、就職が可能と見込まれる障害のある方です。65歳以上の継続利用には条件があるため、市区町村に確認してください。
一般企業への就職を目指し、職業訓練、ビジネスマナーの習得、職場実習、求職活動の支援などを受けます。標準利用期間は2年間です。期間の延長などには要件があるため、市区町村に確認してください。
雇用契約に基づく賃金は原則としてありませんが、生産活動に参加する場合は工賃が支払われます。活動内容と工賃の有無・金額は、事業所に確認してください。
利用には市区町村の支給決定が必要です。利用者負担の上限月額は、所得などに応じて0円、9,300円、37,200円に区分されます。食費などの実費が別途かかる場合があります。
参考:厚生労働省「障害福祉サービスの内容」参考:厚生労働省「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(第184条・工賃支払いに関する規定の準用)」参考:厚生労働省「障害者の利用者負担」
一般就労を目指す場合
ハローワークの障害者の就職支援を担当する窓口で、求人紹介や職業相談を受けられます。窓口の名称はハローワークによって異なるため、「障害があり、就職について相談したい」と伝えてください。
障害者雇用枠の求人では、対象となる障害者手帳などの確認が必要です。応募条件は求人ごとに確認してください。手帳がない場合も、職業相談についてハローワークに問い合わせてください。
A型・B型や就労移行支援などを利用して一般企業に就職した方は、就職から6か月経過後、要件に応じて「就労定着支援」を利用できます。就職に伴う生活上の課題について、企業や関係機関との連絡調整などを受けるサービスです。
3. 相談時に用意するものと窓口
以下は相談時に用意すると役立つものです。正式な申請に必要な書類は、相談先に確認してください。書類がそろっていなくても、まず連絡してください。
相談支援専門員・障害福祉課への相談
用意すると役立つもの:障害福祉サービス受給者証、閉鎖に関する通知文書、障害者手帳(持っている場合)
窓口:担当の相談支援事業所、または市区町村の障害福祉課
費用:相談支援事業所の計画相談支援と、市区町村の障害福祉課への相談は無料です。
新しい事業所の見学・体験利用
持ち物:受給者証や障害者手帳など、必要なものを事業所に事前に確認してください。手帳は持っている場合に用意してください。
窓口:希望する事業所に直接連絡するか、相談支援専門員を通じて調整してください。
費用:体験の扱いや、食費・交通費などの負担を事前に確認してください。
ハローワークでの相談
用意すると役立つもの:障害者手帳(持っている場合)、職歴や希望する働き方がわかるメモ、本人確認書類など。失業給付の申請には別途必要書類があります。
窓口:最寄りのハローワーク。失業給付の手続きは、原則として住所を管轄するハローワークで行います。
費用:無料
予約:担当窓口や予約の要否を事前に確認してください。
4. 収入が途切れるときに確認したい制度

A型事業所の閉鎖後、次の仕事や利用先が決まるまで、収入が途切れることがあります。以下の制度について、自分が要件を満たすか確認してください。
雇用保険の基本手当(失業給付)
雇用保険に加入していた方は、離職票を受け取り、ハローワークで受給資格を確認してください。働く意思と能力があり、求職活動をしているにもかかわらず就職できないことなどが条件です。
以下は、主に65歳未満で離職した方の基本手当についての説明です。
原則として、離職前2年間に被保険者期間が通算12か月以上必要です。ただし、倒産・解雇等による離職では、離職前1年間に通算6か月以上で受給資格を満たす場合があります。
閉鎖に伴う離職理由は、離職票の内容や事実関係に基づきハローワークが判定します。離職票の記載が実際の理由と異なる場合は、手続き時に伝えてください。
会社都合と認定された場合は自己都合退職の給付制限はありませんが、受給資格決定後、通算7日間の待期があります。給付制限がなくても、すぐに入金されるわけではありません。受給資格、給付日数、支給までの流れを確認してください。
なお、65歳以上で離職した高年齢被保険者は、基本手当ではなく「高年齢求職者給付金」の対象となります。必要な加入期間や受給要件をハローワークに確認してください。
参考:厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」参考:厚生労働省「基本手当について」参考:ハローワークインターネットサービス「よくあるご質問(雇用保険について)」参考:群馬労働局「離職されたみなさまへ・高年齢求職者給付金のご案内」
障害年金
事業所の閉鎖を理由に、障害年金が自動的に停止されるわけではありません。ただし、障害状態の確認や、20歳前の傷病による障害基礎年金の所得制限などは引き続き適用されます。
まだ申請していない方は、初診日や保険料納付状況、障害の状態などの受給要件を、年金事務所や市区町村の国民年金窓口に確認してください。申請先は年金の種類などによって異なります。
参考:日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」(2026年10月1日更新)参考:日本年金機構「障害基礎年金を受けられるとき」
生活保護
収入や資産、他の制度などを活用しても生活を維持できない場合は、生活保護について相談・申請できます。窓口は、お住まいの地域を担当する福祉事務所です。
失業給付や障害年金などを受け取っている場合も、その金額を含めて生活状況を伝えてください。受給できるかどうかは、世帯の状況に基づいて判断されます。
生活に困っている場合は、他の給付制度の手続きが完了するまで待たず、福祉事務所に相談してください。必要な書類がそろっていなくても、生活保護の申請はできます。
参考:厚生労働省「生活保護を申請したい方へ」参考:厚生労働省「生活保護制度」
生活福祉資金貸付制度
低所得世帯、障害者世帯などを対象とする貸付制度です。生活費などに利用できる資金がありますが、資金の種類ごとに対象や要件が異なります。
給付ではなく、原則として返済が必要な貸付です。お住まいの市区町村の社会福祉協議会に、利用できる資金と返済条件を確認してください。
よくある質問
Q. 閉鎖を知ってから次の事業所が決まるまで、どれくらいかかりますか?
A. 地域の空き状況、本人の希望、応募・選考、必要な手続きによって異なります。一律の期間は示せません。閉鎖日までに利用開始できるか、相談支援専門員と市区町村の障害福祉課に確認してください。間に合わない場合は、その間の支援や生活費についても相談してください。
Q. A型からB型に移ると、障害福祉サービスの利用者負担は変わりますか?
A. サービス費の利用者負担の基本的な仕組みは共通です。市町村民税の課税状況などに応じて負担上限月額が決まります。成人の場合、所得判定の世帯の範囲は原則として本人と配偶者です。
市町村民税非課税世帯では、サービス費の利用者負担は0円ですが、食費などの実費が別途かかる場合があります。また、賃金から工賃に変わるため、実際の見込額と生活費を確認してください。収入が減っても、利用者負担が直ちに変わるとは限らないため、負担の見直しについて障害福祉課に相談してください。
Q. 相談支援専門員がついていない場合はどうすればいいですか?
A. 市区町村の障害福祉課に連絡してください。セルフプランで利用していた方も相談できます。相談支援専門員の支援を希望する場合は、相談支援事業所の紹介と計画相談支援の利用について相談してください。計画相談支援の利用者負担はありません。
まとめ:動き出すチェックリスト
☐ 閉鎖日、最終利用日、雇用契約の終了日を確認した
☐ 次の利用先についての説明や調整の予定を確認した
☐ 最終給与、未払い賃金、解雇予告などを確認した
☐ 相談支援専門員または障害福祉課に連絡した
☐ 雇用保険の加入状況と離職票の発行について確認した
☐ 次の働き方や支援の選択肢を相談した
☐ 候補の事業所の仕事内容、賃金・工賃、通勤方法を確認した
☐ 支給決定や受給者証に関する手続きを確認した
☐ 収入が途切れる期間の生活費について相談した
迷ったときは、市区町村の障害福祉課に「利用しているA型事業所が閉鎖するので、次の利用先と生活について相談したい」と伝えてください。必要な手続きや相談先を、一つずつ確認して進めてください。
参考:厚生労働省「ハローワーク」
※障害福祉サービスの利用手続きは市区町村の障害福祉課、失業給付はハローワーク、障害年金は年金事務所など、制度ごとの窓口に確認してください。
制度・資料の確認日:2026年10月9日
執筆者プロフィール

主に福祉関連を中心に活動するライター
制度の枠組みから心の機微までを丁寧に言語化する傍ら、暮らしを彩るモノ・コトへの感性も鋭い。専門性の高い記事から、軽やかなエッセイ、実用的なレビューまで、多角的な視点で「日常の価値」を編み直す。