
障害者手帳を取得しても、それだけで健康保険の自己負担割合が自動的に下がるわけではありません。
医療費の負担を軽減するには、病気や障害、治療内容に応じて、自立支援医療や自治体の重度障害者医療費助成などの対象になるか確認し、必要な申請を行ってください。
障害者手帳と自立支援医療は、目的や対象、申請手続きが異なる制度です。この記事では、それぞれの違いを整理し、主に精神障害者保健福祉手帳と自立支援医療(精神通院医療)の申請手順・必要書類を紹介します。
※必要書類や独自の助成内容は自治体によって異なります。
この記事は誰のための記事か
障害者手帳を取得したが、医療費が変わらず疑問を感じている方
精神疾患で通院しており、医療費の負担を減らしたい方
家族や支援者として、本人の制度利用を調べている方
障害者手帳とは?
障害者手帳には、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の3種類があります。障害の種類や程度に応じて交付され、各種支援やサービスを利用する際に使います。
| 手帳の種類 | 主な対象 | 制度の根拠 |
|---|---|---|
| 身体障害者手帳 | 視覚・聴覚・肢体不自由・内部障害など、一定以上の身体障害がある方 | 身体障害者福祉法 |
| 療育手帳 | 児童相談所または知的障害者更生相談所で、知的障害があると判定された方 | 国の通知を踏まえ、各自治体が定める要綱等により運用。名称や判定基準は自治体によって異なる |
| 精神障害者保健福祉手帳 | 統合失調症、うつ病、てんかん、発達障害などの精神疾患により、一定程度の日常生活・社会生活の制約がある方 | 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律 |
精神障害者保健福祉手帳は、病名だけで交付が決まるものではありません。精神疾患の状態と、それによる生活上の制約を総合的に審査します。
手帳で受けられる主な支援
手帳の種類や等級、所得、事業者の規定などに応じて、次のような支援の対象になります。
所得税・住民税の障害者控除
鉄道・バス・タクシーなどの運賃割引
NHK受信料の免除
障害者雇用での応募・就職活動
自治体独自のタクシー券や施設利用料の減免など
手帳があれば、すべての支援を無条件で受けられるわけではありません。支援ごとに対象条件や申請の要否を確認してください。
手帳だけで医療費は安くならないのか?
手帳を持っているだけで、健康保険の自己負担割合が自動的に下がるわけではありません。
ただし、自治体の「重度障害者医療費助成」などでは、手帳の種類・等級等を対象条件として、保険診療の自己負担額を助成する場合があります。対象等級、所得制限、入院・通院の扱い、助成方法は自治体によって異なります。
医療費の負担を減らしたい場合は、自立支援医療だけでなく、自治体の医療費助成の対象になるかも確認してください。相談窓口は障害福祉担当や医療費助成担当など、自治体によって異なります。
自立支援医療とは?
自立支援医療は、障害者総合支援法に基づき、心身の障害を除去・軽減するための対象医療について、自己負担額を軽減する制度です。次の3種類があります。
| 種類 | 対象 | 対象医療の例 |
|---|---|---|
| 精神通院医療 | 精神疾患があり、継続的な通院による精神医療が必要な方 | 対象となる診察、薬、精神科デイケア、訪問看護など。入院医療は対象外 |
| 更生医療 | 18歳以上で身体障害者手帳を持ち、対象となる治療によって障害の除去・軽減について確実な効果が期待できる方 | 人工関節置換術、ペースメーカー埋込術、人工透析など |
| 育成医療 | 身体に障害がある、または放置すると将来障害を残すと認められる疾患がある18歳未満の児童で、対象となる治療によって確実な効果が期待できる方 | 障害を除去・軽減するための手術・治療など |
精神通院医療は、障害者手帳がなくても申請できます。育成医療も、身体障害者手帳の所持を必須条件とする制度ではありません。一方、更生医療は身体障害者手帳が必要です。
自己負担は原則1割。所得や病状に応じて上限額を設定
自立支援医療の認定を受けると、対象となる医療費の自己負担は原則1割になります。通常の健康保険の自己負担割合は、年齢や所得などによって異なります。
さらに、所得区分や「重度かつ継続」への該当状況に応じて、月額の自己負担上限額が設定されます。
精神通院医療の月額自己負担上限額
| 所得区分 | 「重度かつ継続」に該当しない場合 | 「重度かつ継続」に該当する場合 |
|---|---|---|
| 生活保護 | 0円 | 0円 |
| 市町村民税非課税世帯・本人収入82万6,500円以下 | 2,500円 | 2,500円 |
| 市町村民税非課税世帯・本人収入82万6,500円超 | 5,000円 | 5,000円 |
| 市町村民税課税世帯・所得割額3万3,000円未満 | 医療保険の自己負担限度額 | 5,000円 |
| 市町村民税課税世帯・所得割額3万3,000円以上23万5,000円未満 | 医療保険の自己負担限度額 | 10,000円 |
| 市町村民税所得割額23万5,000円以上 | 原則として自立支援医療の対象外 | 20,000円(2027年3月31日までの経過的特例) |
非課税世帯の収入基準82万6,500円は、2026年7月1日からの基準です。上限額は定額の利用料ではなく、対象医療の自己負担がその金額に達するまで支払い、到達後はその月の対象医療について追加の自己負担がなくなる仕組みです。
所得区分の判定には、住民税全体の金額ではなく、制度上の計算による市町村民税の所得割額を使います。均等割だけが課税されている場合も、課税世帯として扱います。政令指定都市の税率や税額控除の調整があるため、納税通知書の金額だけで自己判断せず、窓口で確認してください。
この制度の「世帯」は、原則として同じ医療保険に加入している人の単位です。住民票上の世帯とは必ずしも一致しません。
非課税世帯の収入判定には、障害年金などの非課税収入も含まれます。また、受診者が18歳未満の場合は、本人ではなく保護者の収入で判定します。収入の算定方法や確認書類は窓口で確認してください。
「重度かつ継続」とは?
精神通院医療では、次のいずれかに該当する方が「重度かつ継続」の対象になります。
対象疾患に該当する方
統合失調症、うつ病・双極性障害などの気分障害、てんかん、認知症などの器質性精神障害、アルコール・薬物などによる精神及び行動の障害が該当します。
一定の症状について、医師が継続的な対象医療を必要と判断した方
情動・行動の障害や不安・不穏状態があり、精神医療に3年以上の経験を有する医師が、計画的・集中的な通院医療を継続的に必要と診断し、認定された方です。状態の維持や悪化予防のための医療も含まれます。
医療保険の高額療養費の多数回該当となる方
病名による条件とは別に、高額な医療費負担が継続することによって対象になる場合があります。
「3年以上」は判定する医師の経験年数です。患者本人が3年間通院することを求める条件ではありません。
対象医療と利用できる医療機関に制限がある
精神通院医療の対象は、精神疾患と、その精神疾患に起因して生じた病態に対する通院医療です。診療科名だけで対象・対象外が決まるわけではありません。
利用できるのは、受給者証に登録された指定自立支援医療機関・薬局・訪問看護事業者等です。指定を受けた医療機関であっても、受給者証への登録がなければ利用できません。通院先や薬局を変更する場合は、変更手続きをしてください。
精神疾患と関係のない病気の治療、入院医療、保険適用外の治療、診断書料などは、精神通院医療の対象外です。
障害者手帳と自立支援医療の違いを整理
| 項目 | 障害者手帳 | 自立支援医療 |
|---|---|---|
| 制度の目的 | 障害の状態の認定、各種支援・サービスの利用 | 対象医療の自己負担額の軽減 |
| 医療費への効果 | 手帳だけで健康保険の自己負担割合は変わらない。ただし、自治体の医療費助成の対象条件になる場合がある | 対象医療の自己負担が原則1割。所得や病状に応じて月額上限を設定 |
| 相談・申請窓口 | 市区町村の障害福祉担当など | 市区町村の障害福祉担当、保健・子ども関連の担当など。制度の種類や自治体によって異なる |
| 主な必要書類等 | 手帳の種類によって異なる。身体は指定医の診断書・意見書等、療育は判定、精神は診断書または対象となる障害年金の証明書類等 | 制度の種類によって異なる。精神通院医療は申請書、指定様式の診断書、医療保険の加入状況・所得等の確認書類など |
| 有効期間・再認定 | 身体は原則更新なし。ただし再認定の場合あり。療育は自治体による再判定あり。精神は2年 | 精神通院医療は原則1年。ただし認定期間が短くなる場合あり。更生医療・育成医療は必要な治療期間等に応じて認定 |
| 手帳の所持条件 | それぞれの手帳の交付基準により審査・判定 | 精神通院医療と育成医療は手帳の所持が必須ではない。更生医療は身体障害者手帳が必要 |
精神障害者保健福祉手帳と自立支援医療(精神通院医療)は、同時に申請できます。手帳用診断書を自立支援医療の申請にも利用できる場合がありますが、必要事項の記載や追加書類が必要です。診断書を依頼する前に、窓口と医療機関に同時申請することを伝えてください。
申請手続きの流れ

精神障害者保健福祉手帳の申請手順
1.主治医と自治体の窓口に相談する
手帳の取得を考えていることを主治医に伝えてください。診断書による申請では、手帳の交付を求める精神疾患の初診日から6か月以上経過した時点の診断書が必要です。
2.申請書と診断書の指定様式を入手する
市区町村の担当窓口またはホームページで入手してください。自立支援医療も同時に申請したい場合は、この段階で伝えてください。
3.診断書を依頼する
指定様式で主治医に作成を依頼してください。診断書料は医療機関によって異なるため、依頼前に確認してください。
精神障害を理由とする障害年金を受給している場合は、年金証書等を用いて申請できることがあります。必要な証明書類や同意書を窓口で確認してください。
4.必要書類をそろえて提出する
主な書類は次のとおりです。写真の規格や診断書の作成日など、自治体の条件を確認してください。
申請書
指定様式の診断書、または対象となる障害年金の証明書類等
顔写真
マイナンバー確認書類
本人確認書類
そのほか自治体が求める書類
5.審査・交付を受ける
審査期間や受け取り方法は自治体によって異なります。申請時に確認してください。
身体障害者手帳は指定医による診断書・意見書が必要です。療育手帳は児童相談所または知的障害者更生相談所での判定が必要で、上記の精神障害者保健福祉手帳とは手続きが異なります。
自立支援医療(精神通院医療)の申請手順
1.主治医に相談する
精神疾患に対する継続的な通院医療が必要か、自立支援医療の対象になるかを確認してください。精神科や心療内科に通っているという理由だけで、自動的に認定されるわけではありません。
2.自治体の窓口で申請方法と必要書類を確認する
申請書と診断書の指定様式を入手してください。医療保険の加入状況、所得、登録する医療機関・薬局等について、必要な書類を確認します。
3.医師に診断書を作成してもらう
指定自立支援医療機関で精神通院医療を担当する医師に、指定様式の診断書を依頼してください。手帳と同時申請する場合は、手帳用診断書の兼用や追加書類の要否を確認してください。
4.必要書類をそろえて申請する
主な書類は次のとおりです。加入している医療保険や所得の確認方法によって、必要書類が異なります。
申請書
指定様式の診断書
資格確認書、資格情報のお知らせ、マイナポータルの資格情報など、自治体が指定する医療保険の加入状況確認書類
マイナンバー確認書類
本人確認書類
所得・課税状況や年金等の収入を確認する書類(必要な場合)
そのほか自治体が求める書類
5.審査・受給者証の交付を受ける
認定されると、自立支援医療受給者証が交付されます。受給者証が届くまでの支払方法、適用開始日、払い戻しの手続きを申請窓口と医療機関で確認してください。
受給者証が届く前の期間について、認定された有効期間内の対象医療の自己負担を後から精算できる場合があります。領収書と申請の控えは保管してください。申請前に受けた医療費まで、さかのぼって対象になると考えないようにしてください。
6.登録した医療機関・薬局等で受給者証を提示する
受診時や薬の受け取り時は、受給者証と、マイナ保険証または資格確認書を提示してください。自己負担上限額管理票が交付されている場合は、あわせて提示してください。
よくある質問
Q1.障害者手帳を持っていれば、自立支援医療は不要ですか?
手帳と自立支援医療は別の制度です。精神通院医療を利用するには、手帳の有無とは別に申請と認定が必要です。
ただし、自治体の医療費助成などを利用できる場合もあります。どの制度が対象になるか、併用時にどのような手続きが必要かを窓口で確認してください。
Q2.障害者手帳がなくても精神通院医療を申請できますか?
申請できます。精神疾患があり、継続的な通院による精神医療が必要であることなどが条件です。精神障害者保健福祉手帳の交付基準とは異なります。
Q3.精神科以外でも使えますか?
精神通院医療は、診療科名だけで対象が決まる制度ではありません。精神疾患と、その精神疾患に起因する病態に対する対象医療を、受給者証に登録された指定医療機関等で受ける場合に適用されます。
精神疾患と関係のない病気の治療や入院医療は対象外です。身体障害に対する対象治療には、更生医療や育成医療を利用できる場合があります。主治医と自治体の担当窓口に確認してください。
Q4.精神通院医療の更新を忘れるとどうなりますか?
精神通院医療の有効期間は原則1年です。ただし、手帳の診断書を利用する場合や経過的特例の適用を受ける場合などは、認定期間が短くなることがあります。必ず受給者証に記載された有効期限を確認し、継続して利用する場合は期限内に更新申請をしてください。通常は有効期限のおおむね3か月前から申請できます。
有効期限が切れると、自立支援医療が適用されない期間は、加入する医療保険の通常の自己負担になります。期限切れ後の申請の扱いは自治体に確認してください。
更新時の診断書は、病状や治療方針に変更がない場合など、条件を満たせば原則2年に1度の提出となります。毎年不要になるわけではないため、受給者証の記載や窓口の案内を確認してください。
Q5.手帳と精神通院医療を同時に申請すれば、必ず診断書1通で済みますか?
必ず1通で済むとは限りません。手帳用診断書に精神通院医療の認定に必要な事項が記載されていれば、兼用できる場合があります。申請内容によっては追加の意見書等が必要です。
診断書の作成を依頼する前に、自治体の窓口と医療機関に「手帳と自立支援医療を同時に申請したい」と伝えてください。
まとめ:まず何をすればいいか
精神疾患の通院費を軽くしたい方
主治医に自立支援医療(精神通院医療)の対象になるか相談し、市区町村の担当窓口で申請方法を確認してください。
各種割引・控除・障害者雇用などの支援を利用したい方
障害の種類に応じた手帳の対象になるか、主治医や市区町村の障害福祉担当に相談してください。
手帳を持っている方、これから取得する方
自治体の重度障害者医療費助成などの対象になるかも確認してください。
精神障害者保健福祉手帳と精神通院医療の両方を申請したい方
同時申請の方法と、診断書の兼用・追加書類の要否を確認してください。
最初の相談先が分からない場合は、お住まいの市区町村の障害福祉担当に連絡し、「医療費の負担を減らせる制度と、障害者手帳の申請について相談したい」と伝えてください。
参考:
厚生労働省「障害者手帳について」厚生労働省「自立支援医療制度の概要」大阪府「自立支援医療費(精神通院医療)支給認定申請について」品川区「自己負担について」横浜市「横浜市自立支援医療(精神通院医療)」(2026年10月7日更新)横浜市「各区役所窓口での申請について―自立支援医療(精神通院医療)―」横浜市「重度障害者医療費助成の概要」神奈川県「精神障害者保健福祉手帳」神奈川県「自立支援医療診断書(精神通院医療用)の書き方について」
執筆者プロフィール

福祉制度・法律分野に詳しく、事業者や支援者、当事者にとって実践的な記事の執筆を行っている。複雑な制度の背景や目的まで丁寧に読み解くことを得意とする。