聴覚情報処理障害(APD )とは?原因や症状・対処法について紹介

聴覚情報処理障害(APD )とは?原因や症状・対処法について紹介

聴覚情報処理障害とは、聴力には問題なく音は聞こえるのに言葉として理解できないという困難がみられる状態を指します。まだ社会全体の認知度が低く、言葉がよく聞き取れないことで「やる気がない」「集中力がない」と捉えられるなど周りからの理解が得にくいです。

しかし、環境を整えたり、補助機器やツールを利用したりすることで、言葉が聞き取りやすくなり周囲とコミュニケーションが取りやすくなります。

この記事では、聴覚情報処理障害の原因や症状、対処法について解説しています。聴覚情報処理障害について知りたい方は参考にしてください。

聴覚情報処理障害とは

聴覚情報処理障害(Auditory Processing Disorder)とは、一般的な聴力検査では異常が見られないにもかかわらず、日常生活において「音は聞こえるのに言葉として理解できない」という困難が生じてしまう状態を指します。

脳内の音に関する情報処理がうまくいかないことが原因と考えられており、耳の機能や聴力自体に異常は見られません。一般的な聴覚検査では正常だと判断され、聴覚情報処理障害の認知度も低いため、病院を受診しても診断が下りない場合も多いです。

海外では、LiD(Listening Difficulties)が使われていることから、「聞き取り困難症」と呼ばれる場合もあります。近年、日本でも「LiD/APD」という名称で少しずつ認知が広がってきています。

聴覚情報処理障害の原因

聴覚情報処理障害は、耳の構造や聴力に問題があるわけではなく、脳が音の情報を処理する際に何らかの問題があることで発症します。原因は1つではなく、複数の原因が絡み合って症状が現れると考えられています。

原因となる要因として挙げられるのは以下の3つです。

発達障害と併発している

自閉症スペクトラム症(ASD)や注意欠陥多動性症(ADHD)などの発達障害と併発しているケースです。

自閉症スペクトラムの方は、雑音から必要な音を選ぶことが難しかったり、周囲の音に慣れるのに時間がかかったりします。注意欠陥多動性症の方は、注意力の維持が難しく会話の途中で意識が逸れてしまい、聞き返しや聞き間違いが多くなってしまいがちです。

このように、発達障害のある方は耳から情報を得ることが苦手な傾向があるケースも多く、特性の一つとして聞き取りに困難が見られる場合があります。

認知機能や注意力に偏りがある

発達障害の診断基準には至らなくても、脳の情報処理に対する特性が原因となる場合もあります。
聞いた言葉を一時的に保持しながら理解したり、複数の情報を同時に処理したりする力が弱いと、長い説明や複数の指示を理解することが難しくなります。また、多くの音の中から特定の音にだけ集中する力が弱いため、騒がしい環境での聞き取りに困難が見られる場合も多いです。

強いストレスや不安を感じている

強い不安やストレスといった心理的な負荷も、聴覚情報処理障害の症状を引き起こしたり、悪化させたりする要因となり得ます。緊張や不安を強く感じると、周りとの会話に意識を向けづらくなり、結果的に聞き漏らしが多くなりがちです。

これらは「心因性難聴」として現れることもあり、ストレスが注意力の低下を招くことで、雑音がある中での聞き取りがより困難になってしまいます。

聴覚情報処理障害の主な症状

聴覚情報処理障害の主な症状は以下の6つです。

  • 雑音の中で話の内容や指示を聞き取ることが難しい
  • 聞き間違いや聞き逃しが多い
  • 口頭の指示が理解しにくく忘れてしまう
  • 早口や小さな声だと聞き逃す
  • 長文だと頭に残らない
  • 視覚情報に依存しがちである

それぞれ解説していきます。

雑音の中で話の内容や指示を聞き取ることが難しい

通常は、周囲がザワザワしている環境でも、必要な声だけを選び取って聞くことができます。
しかし、聴覚情報処理障害がある方にとって、騒がしい環境の中では、必要な音も不要な音も同じように聞こえるため聞き分けることが容易ではありません。
そのため、教室のざわめきや混んでいる飲食店など周囲が騒がしい場所では、相手が何を言っているのかわからなくなってしまいます。

聞き間違いや聞き返しが多い

会話をしている際に相手の言葉が理解できずに、「え?」「何?」と何度も聞き返す様子が頻繁に見られます。
例えば、「いしゃ」と「きしゃ」など似た言葉を聞き分けられず、言葉を正確に判別することが難しいです。そのため、言葉を聞き違えたり、何度も聞き返してしまいます。

口頭の指示が理解しにくくすぐに忘れてしまう

耳だけで得た情報を覚えておくことが苦手で、口頭だけの指示ではすぐに抜けてしまいがちです。
「〇〇した後に△△して」など一度に複数の指示を出されると、混乱したり、後半の指示内容を忘れてしまったりします。また、説明が長くなると、最初の方に聞いた内容を忘れてしまい全体像を把握できなくなってしまう傾向が見られます。

早口や小さな声だと聞き逃す

相手が早口だったり、声が小さかったりすると、言葉が聞き取れずに意味が理解できません。相手の表情や口の動きが見えない電話越しでの会話やマスク越しの会話なども聞き取りにくいです。

長文だと頭に残らない

会議や授業など長時間にわたって話を聞き続ける場面では、集中力が維持できずに話の内容が頭に残りにくいです。資料や映像など視覚情報がなく口頭での説明が続くと、次第にわからなくなり話についていけなくなってしまいます。

視覚情報に依存しがちである

耳からの情報だけでは正確に理解できるか不安なため、無意識に目で見てわかる情報で補おうとします。
相手の口の動きや表情、ジェスチャーを見て話の内容を推測したり、字幕や図解付きの資料など、視覚情報があるほうが理解しやすく情報を処理する際の負担が軽減します。

聴覚情報処理障害への対処法

聴覚情報処理障害による困りごとは、以下の4つの対処法を取り入れることで、軽減させることができます。

  • 環境を整える
  • 補助機器やツールを利用する
  • 聞き取りのトレーニングをおこなう
  • 周囲の理解や協力を得る

1つずつ見ていきましょう。

環境を整える

脳の情報処理にかかる負担を減らすために、環境を整え情報の受け取り方を変えていくと効果的です。
周囲がザワザワしている環境ではなく、静かな場所で話すようにします。テレビやエアコンの音、周囲の話し声など会話の妨げになる音はなるべく避けるようにしましょう。
また、口頭だけの指示ではなく、メモやメール、チャットツールなど文字や図を用いて情報を共有してもらうようにすると理解しやすくなります。

補助機器やツールを利用する

補助機器やツールを利用して必要な音を強調したり文字化することで理解しやすくなります。
音声認識アプリやオンライン会議等の字幕表示機能などを活用すると、話し言葉がリアルタイムで文字として表示されるので便利です。また、周囲の音を抑えて人の声を強調するデジタル補聴器や、ワイヤレス集音システムが効果を発揮する場合がありますので取り入れてみるとよいかもしれません。
その他にも、ノイズキャンセリング機能付きのイヤホンやイヤーマフを使用して、周囲の不要な音をカットする方法もあります。

聞き取りのトレーニングをする

聞き取りのトレーニングによって、聞き取る力を高め負担を和らげることができます。
ラジオや朗読CDを聞いて聞き取るトレーニングを積んだり、好きな曲を聞いて文字起こしすることで聞いて理解する力を高められます。
外国語を聞き取る際に語彙力がある方がより聞き取れるように、新聞や本を読み言葉の知識を増やすことで、聞き取れなかった部分を文脈から推測しやすくなるため効果的です。

周囲の理解や協力を得る

聴覚情報処理障害は外見から分かりにくいため、自分の特性を説明し周囲の理解を得ることが不可欠です。
サポートをお願いする場合には、「話しかける前に名前を呼ぶ」「1対1ではっきり話す」「指示は短く1つに絞る」など具体的にお願いするとよいでしょう。
また、 LiD/APDのシンボルマークには「コアラのマーク」があります。シンボルマークを身につけることで、周囲にさりげなく聞き取りづらさを伝えられます。

【参考】聞き取り困難症・聴覚情報処理障害(LiD/APD)| 当事者ニーズに基づいた聴覚情報処理
障害の診断と支援の手引きの開発
聴覚情報処理障害リーフレット聞き取り困難(LiD)/聴覚情報処理障害(APD)ってなに?

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