グループホームは「施設」か「家」か——障害者の暮らしの場が問い直されている

グループホームは「施設」か「家」か——障害者の暮らしの場が問い直されている

この制度(用語)って何?——グループホームの基本を押さえよう

「グループホーム」と聞いて、どんな場所をイメージしますか? 大きな建物に大勢が暮らす施設でしょうか。それとも、街の中にある普通の一軒家でしょうか。

グループホーム(共同生活援助)とは、障害のある人が少人数(通常2〜10人程度)で共同生活を送りながら、日常生活上の支援を受けられる住まいの形態です。障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つで、世話人や生活支援員が食事の準備、入浴、金銭管理などの支援を行います。

2024年時点で、全国のグループホームの事業所数は約1万9,000カ所、利用者数は約18万人に達しています。10年前と比べると利用者数は約2倍に増えており、障害のある人の暮らしの場として急速に広がっています。

利用者の自己負担は、原則として家賃と食費・光熱費などの実費です。家賃については、低所得者向けに月額1万円を上限とする「特定障害者特別給付費(補足給付)」が支給されます。グループホームの家賃は地域によって異なりますが、月額3万〜5万円程度が多く、補足給付を差し引くと実質的な家賃負担は2万〜4万円程度になるケースが一般的です。

ここまで聞くと、「いい制度じゃないか」と思われるかもしれません。でも、グループホームをめぐっては、今、大きな問いが投げかけられています。それは——グループホームは「施設」なのか、「家」なのか、という問いです。

なぜこの制度は生まれたのか——脱施設化の理想と現実

グループホームの歴史は、「脱施設化」の歴史と重なります。

かつて日本では、障害のある人の暮らしの場といえば大規模入所施設が中心でした。1960年代から70年代にかけて、知的障害者のための入所施設が全国に建設されました。しかし、施設の中では集団生活のルールが優先され、起床時間、食事時間、入浴時間——すべてが管理されていました。個人の意思や好みが尊重される余地は限られていたのです。

1980年代から、北欧発のノーマライゼーションの理念が日本にも広がり始めます。「障害のある人も、地域の中で普通の暮らしを送るべきだ」という考え方です。この流れの中で、大規模施設に代わる地域生活の受け皿として、グループホームが注目されるようになりました。

制度としてのグループホームは、1989年に知的障害者を対象に創設されました。その後、2006年の障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)の施行により、身体障害・精神障害のある人も対象に含まれるようになり、現在の形に至っています。

2023年には、新たに「一人暮らし等に向けた支援を行うグループホーム」という類型が創設されました。これは、グループホームを「終の棲家」ではなく、地域での一人暮らしに移行するためのステップとして位置づけようという考え方です。

しかし、現実はそう単純ではありません。

問い直される「暮らしの質」——何が問題になっているのか

社会保障審議会の障害者部会と障害児支援部会の合同会議では、障害福祉計画の見直しが議論されていますが、グループホームに関しては複数の課題が指摘されています。

第一に、「大規模化」の問題です。制度上は少人数での共同生活を想定していますが、同一法人が同じ敷地内に複数のグループホームを設置し、実質的に数十人規模の「ミニ施設」となっているケースがあります。外から見れば地域の住宅ですが、中の暮らしは入所施設と変わらない——そんな実態が報告されています。

第二に、「選べない」問題です。グループホームの空きが少ない地域では、本人が希望する場所に入れず、「空いているところに入る」しかないという状況があります。誰と暮らすか、どこで暮らすかを自分で選べない——これは「家」と言えるでしょうか。

第三に、「出られない」問題です。一人暮らしを希望しても、「まだ難しい」と支援者に判断されたり、地域に適切な住まいや支援がなかったりして、グループホームから出られないケースがあります。2023年に創設された新類型も、実際の移行実績はまだ限られています。

当事者の声を聞くと、この問題の深刻さがよくわかります。ある知的障害のある30代の男性は、「グループホームは安心だけど、自分の部屋で好きなときにご飯を食べたい」と話します。精神障害のある女性は、「ここは私の家なのに、スタッフが鍵を持っていて、私は持っていない。それっておかしくないですか?」と問いかけます。

海外ではどうしているか——スウェーデンの「自分の住まい」という原則

海外の脱施設化の動きは、日本よりもはるかに進んでいます。

スウェーデンでは、1985年から大規模入所施設の閉鎖が進められ、1999年までにすべての知的障害者入所施設が閉鎖されました。現在、障害のある人の暮らしの場は、グループホーム型の「集合住宅(gruppbostad)」と、より独立性の高い「サービス付き住宅(servicebostad)」に分かれています。いずれも「自分の住まい」であることが大前提で、入居者は賃貸契約を結び、借家人としての権利を持ちます。スタッフが勝手に部屋に入ることはできません。

イタリアは、精神科病院の全廃で知られています。1978年の「バザーリア法」により精神科病院の新規入院が禁止され、地域精神保健センターを中心とした支援体制に移行しました。

ニュージーランドでは、2023年に政府が「Enabling Good Lives」という障害者支援の新しい枠組みを全国展開し、本人が支援の内容と提供者を自分で選ぶ「個別予算」方式を導入しています。

これらの国々に共通するのは、「どこで、誰と、どのように暮らすかは本人が決める」という原則です。グループホームはあくまで選択肢の一つであり、唯一の選択肢であってはならない——これが国際的な潮流なのです。

私たちが考えなくてはいけないこと——「暮らしの場」を選べる社会へ

国連障害者権利条約第19条は、「障害者が、他の者との平等を基礎として、居住地を選択し、及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有する」と定めています。2022年に国連障害者権利委員会が日本に出した総括所見(勧告)では、施設収容の廃止と地域生活への移行を加速するよう求められました。

グループホームは、大規模施設から地域生活への架け橋として、大きな役割を果たしてきました。しかし、その「架け橋」が「終着点」になってしまっていないか——私たちはそこを問い直す必要があります。

大切なのは、グループホームを「良い」「悪い」と二項対立で語ることではありません。グループホームで暮らしたい人にはグループホームを、一人暮らしをしたい人には一人暮らしの支援を、家族と暮らしたい人にはそのための支援を——多様な選択肢が用意され、本人が選べる状態をつくることが、真の「脱施設化」なのではないでしょうか。

あなたは今、自分の住む場所を自分で選んでいますか? その「当たり前」が、すべての人に保障されているかどうか。グループホームをめぐる議論は、そのことを私たちに問いかけています。

もう少し知りたい方へ

厚生労働省「障害福祉サービスについて」:グループホームを含む各サービスの概要 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/index.html

国連障害者権利委員会「日本の第1回報告に関する総括所見」(2022年):脱施設化に関する勧告を含む https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html

参照元(出典)

  1. 第154回 社会保障審議会障害者部会・第18回 こども家庭審議会障害児支援部会 合同会議(令和8年1月19日開催)(wam.go.jp)
  2. 第153回 社会保障審議会 障害者部会(令和7年12月8日開催)(wam.go.jp)
  3. 第87回 障害者政策委員会(令和8年1月29日開催)(wam.go.jp)
  4. 障害保健福祉関係主管課長会議(令和8年3月26日開催)(wam.go.jp)
  5. Homepage – European Disability Forum(edf-feph.org)

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