
「約201万人」が意味すること
厚生労働省が毎月公表している「被保護者調査」。2024年5月分の概数によれば、被保護実世帯数は1,651,829世帯(約165万世帯)、被保護実人員数は2,013,709人(約201万人)です。いずれも保護停止中を含みます。
この数字を見て「多い」と感じる人もいれば、「思ったより少ない」と感じる人もいるかもしれません。けれど大切なのは、その一人ひとりに、朝起きてごはんを食べ、夜に眠る暮らしがあるということです。
今回は、2024年5月分の調査データを読み解きながら、生活保護制度の役割と、支援を必要とする人の暮らしについて考えます。
参考:厚生労働省「被保護者調査(令和6年5月分概数)」(2024年8月7日公表)
高齢者世帯が半数を超えている現実
被保護者調査の世帯類型別データを見ると、最も多いのは「高齢者世帯」です。2024年5月分では910,946世帯で、全体の55.4%を占めています。そのうち単身世帯は846,328世帯です。なお、世帯類型別の集計は保護停止中を含まず、総世帯数は1,643,938世帯です。
高齢者世帯全体は前年同月より728世帯減少した一方、単身の高齢者世帯は前年同月より2,099世帯増加しています。「高齢者世帯が増え続けている」と一括りにせず、世帯構成と比較する時点を分けて読む必要があります。
2024年度の老齢基礎年金の満額は、1956年4月2日以降生まれの方で月額68,000円、1956年4月1日以前生まれの方で月額67,808円です。これは満額の場合の金額であり、実際の受給額は保険料の納付状況などによって異なります。
高齢期の暮らしを考えるうえでは、年金収入だけでなく、家賃や生活費、貯蓄、世帯構成にも目を向ける必要があります。ただし、世帯類型別の数字だけでは、それぞれの世帯が生活保護を利用するに至った理由までは分かりません。
参考:厚生労働省「被保護者調査(令和6年5月分概数)」(2024年8月7日公表)参考:日本年金機構「令和6年4月分からの年金額等について」(2024年4月1日更新)
働いていても生活保護を利用できる
生活保護は、収入がまったくない人だけを対象とする制度ではありません。働いていても、利用できる資産や働く能力、年金・手当などを活用したうえで、世帯の収入が最低生活費に満たない場合には、保護の対象になります。
最低生活費は、地域や世帯の人数、年齢などによって異なります。給与の額だけで受給の可否が決まるわけではありません。
支給される保護費は、最低生活費と、制度上認定される収入との差額を基本として計算します。働いているという理由だけで、生活保護の対象外になるわけではありません。
なお、世帯類型の「その他の世帯」は、就労している世帯だけを表す区分ではありません。この区分の世帯数から、働いている受給者の人数や割合を判断することはできません。
参考:厚生労働省「生活保護制度」(2026年10月7日確認)
統計に表れない困窮にも目を向ける

被保護者調査で分かるのは、生活保護の対象となっている人や世帯、申請件数などの状況です。この調査だけでは、保護を必要としながら利用していない人がどれくらいいるのかは分かりません。
生活保護の利用状況を考える際に使われる「捕捉率」は、対象となる人や世帯の範囲、推計方法を確認して読む必要があります。所得だけを基準にした推計を、そのまま「生活保護の受給要件を満たす人のうち、実際に受給している人の割合」とみなすことはできません。生活保護の判断では、収入以外に資産なども確認するためです。
受給者数だけで支援が十分に届いているかを判断せず、必要な人が相談や申請につながれる仕組みについても考える必要があります。
生活に困っている方は、お住まいの地域を担当する福祉事務所の生活保護担当に相談してください。
参考:厚生労働省「被保護者調査(令和6年5月分概数)」(2024年8月7日公表)参考:厚生労働省「生活保護制度」(2026年10月7日確認)
制度への偏見をどうほぐすか
生活保護について考えるときは、個別の不正受給の問題と、制度を適切に利用している人の暮らしを区別する必要があります。
偏見をほぐすために大切なのは、制度の仕組みを正確に知り、受給者をひとくくりにしないことです。当事者の日常を描いた映画やドキュメンタリー、書籍などに触れることも、暮らしを具体的に考えるきっかけになります。
フィクションに触れる際も、作品の描写と実際の制度を区別しながら、「自分とは関係ない世界の話」と距離を置かず、一人ひとりの生活を想像することが大切です。
制度の改善に向けて動いていること
2026年10月から、生活扶助基準の特例加算は、一人当たり月額1,500円から2,500円へ増額されました。期間は2027年9月までの1年間で、今回の増額分は一人当たり月額1,000円です。2,500円全額が今回新たに上乗せされるわけではありません。
制度の改善を考える際には、こうした基準の見直しとあわせて、必要な人が相談や申請につながれる体制にも目を向ける必要があります。暮らしの状況を把握し、その人に合った支援を考えるためには、窓口での説明や継続的な支援も大切です。
参考:厚生労働省「第55回 社会保障審議会生活保護基準部会 議事録」(2026年10月7日確認)
数字の向こうにある暮らしを想像する
数字が並んだ表だけでは、一人ひとりの暮らしは見えてきません。けれど、約165万世帯という数字の向こうには、それぞれ異なる生活と事情があります。
生活保護は、日本国憲法第25条の理念に基づき、生活に困窮する人の最低限度の生活を保障するとともに、自立を支える制度です。
制度の課題を指摘することと、制度を必要としている人の尊厳を守ることは、矛盾しません。「こうなったらもっといいのに」と考えることが、次の制度改善につながります。被保護者調査の数字を、社会の現在地を知るための手がかりとして読む。その際に、数字の向こうにある暮らしにも目を向けていきたいと思います。
参考:厚生労働省「生活保護制度」(2026年10月7日確認)参考:厚生労働省「生活保護法」(第1条)
執筆者プロフィール

介護や高齢者問題に関する執筆を多数担当。介護に携わる家族や支援者の視点を大切にしながら、現場で役立つ情報をわかりやすく発信している。