社会福祉施設の退職手当共済制度、見直し議論が始動ー持続可能性と現場負担の両立が焦点

社会福祉施設の退職手当共済制度、見直し議論が始動ー持続可能性と現場負担の両立が焦点

厚生労働省は4月23日、「社会福祉施設職員等退職手当共済制度の在り方に関する検討会」の初会合を開き、制度の見直しに向けた本格的な議論をスタートさせました。長年にわたり福祉現場を支えてきた退職手当共済制度ですが、近年は財政的な課題が顕在化しており、制度の持続可能性が大きなテーマとなっています。

人材定着を支えてきた退職手当共済制度

社会福祉施設職員等退職手当共済制度は、福祉施設で働く職員の退職後の生活を支える重要な仕組みです。退職手当の保障を通じて、福祉人材の確保や定着にも一定の役割を果たしてきました。実際、福祉医療機構(WAM)の退職手当共済制度に加入している法人の離職率は10.9%で、産業計14.2%、介護職員計12.4%を下回っており、人材定着への効果がうかがえます。

財政を圧迫する支給額の増加

一方で、制度を取り巻く環境は大きく変化しています。

資料によると、退職者の平均年齢はこの10年で40.9歳から44.2歳へ上昇し、平均在籍期間も75か月から89か月へと延びています。勤続年数の長期化は、職員の定着という意味では望ましい傾向ですが、その分、一人当たりの退職手当支給額が増加し、制度財政への負担も大きくなっています。

さらに、制度加入者数は近年ほぼ横ばいです。新規加入者数は平成27年度以降減少傾向が続き、退職者数が新規加入者数を上回る状況が続いています。その結果、掛金収入が伸びにくくなり、支出増への対応が難しくなっています。

掛金引き上げと準備金減少の現実

こうした状況を受け、掛金の引き上げが進められています。職員1人当たりの年間掛金は、令和6年度に引き上げられたのに続き、令和7年度、令和8年度も段階的な増額が予定されています。制度を維持するためには一定の負担増が避けられない現実があります。

これまで掛金の急激な上昇を抑えるため、支払準備金の取り崩しも行われてきました。しかし、その残高は令和3年度末の505億円から令和6年度末には294億円まで減少しています。準備金に頼った対応には限界が見え始めており、抜本的な制度設計の見直しが求められています。

問われる「制度維持」と「現場負担」の両立

今回の検討会では、こうした財政課題を踏まえながら、制度の持続可能性と現場負担のバランスをどう取るかが大きな論点となります。

福祉現場では、慢性的な人材不足や処遇改善が大きな課題です。掛金負担の増加は法人経営に影響を及ぼす一方で、退職手当制度の縮小は人材確保や定着に悪影響を及ぼしかねません。制度を守ることは、単なる福利厚生の問題ではなく、福祉サービスの質を支える基盤をどう維持するかという課題でもあります。

今後の議論では、現場の実情を丁寧にくみ取りながら、持続可能で納得感のある制度の在り方を示せるかが問われます。福祉を支える人材を守るための制度改革に向けて、検討会の行方に注目が集まります。

執筆者プロフィール

TOPへ