予期せずうつ病が発症する「侵襲」とは?メカニズムや防止方法を解説

予期せずうつ病が発症する「侵襲」とは?メカニズムや防止方法を解説

「術後うつ」という病気があるのをご存知でしょうか。

これは手術後に発症するうつ病を指し、手術による身体的負担と不安や心細さといった精神的負担が主な要因です。特に昨今は「高齢者の術後うつ」の話題を目にする機会が多くなりました。場合によっては認知症の原因にもなると言われています。

術後うつに限らず、身体に異変をきたす原因を医療関係者の間では「侵襲(しんしゅう)」と呼んでおり、術後うつは手術という侵襲が原因であり、言ってしまえば妊娠後のマタニティブルーもホルモンバランスの乱れという侵襲によるものと言えます。

今回は、うつ病の原因ともなる侵襲について、そのメカニズムや防止方法などを分かりやすく解説します。

うつの原因にもなる「侵襲」とは?

侵襲とは、体内の安定した状態を阻害する要因を指します。体内のあらゆる機能は常に安定して動いていますが、その安定した状態ではなくなる要因が侵襲です。

侵襲(しんしゅう)とは侵入し襲うこと。英語のinvasionの訳語。医学では、外的要因によって生体内の恒常性を乱す事象全般を指す用語として使われる。

【引用】フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

身近な例で言えば、薬の副作用とか火傷の跡が残ってしまうのも侵襲に対する身体の反応です。侵襲後の体内では、身体を通常の状態に戻そうとする機能が働きます。その機能を働かせるきっかけが侵襲です。

大きなケガや病気の話ではないため、大したことではないと思われるかも知れませんが、場合によっては、深刻な症状を引き起こす可能性もあります。

侵襲のメカニズムと具体例

「これって侵襲?」と思える場面はいくつかあります。例えば、トレーニング後の筋肉痛や倦怠感で気分が落ち込むとか、禁煙を始めて精神的にイライラしやすくなったなど。こんな経験をされた方も多いのではないでしょうか。

侵襲のメカニズムは非常に複雑であり、医療関係者も患者に対して分かりやすく説明するのに苦労すると言います。そこで侵襲を分かりやすい例で考えてみましょう。

  1. 運動して体温が上がる
  2. 人間の冷却システムにより、体温が上がると汗をかく
  3. 汗をかいた分、体内の水分が少なくなる
  4. 体内の水分が少ないため、利尿を止めるホルモンも分泌される
  5. 利尿が少なくなると排泄物を出すことができない

体内が通常の状態であることを阻害する原因が侵襲。上記の流れでいえば、「1. 運動して体温が上がる」の部分が侵襲に当たります。一見して、人間に元々備わった機能のように思えますが、侵襲の怖いところは、身体を安定した状態に保とうと体内の機能が働いたにもかかわらず、結果的に悪い影響が出るかもしれないという点。上記でいえば「5.」の部分です。

自分の身体は体温を一定に保とうとしますが、汗をかきすぎれば抗利尿作用が働きます。その結果、排泄物を外に出せなくなるという悪影響を及ぼす可能性があるのです。医学的に見た時、侵襲となる要因には2種類あります。

外部要因:「ケガ」「手術」「やけど」「出血」「中毒」「感染」「脱水」など
内部要因:「膵炎」「悪性腫瘍」「精神的なショック」など

侵襲は上記のような簡単なものではなく、未だ研究され続けている非常に難しい仕組みです。人の身体に何らかの刺激があれば、常に一定の状態を保とうと反応を示します。この反応を「ホメオスタシス」と言い、ホメオスタシスが乱される原因が侵襲なのです。

人気お笑い芸人に起こった侵襲とうつ病

冒頭でお伝えした通り、外部要因による侵襲により精神障害を引き起こすケースがあります。その証拠に、最近お笑いトリオ「ネプチューン」の名倉潤さんがヘルニア手術後にうつ病を発症。本記事執筆時点で、休業を余儀なくされています。報道を見る限り、うつ病の原因は侵襲とのことです。

では一体、侵襲とうつ病に何の関係があるのでしょうか。名倉潤さんがうつ病を発症した原因について詳しいことは分かっていませんが、現在のところ2つの見方がなされています。

  • 仕事を休むわけにはいかないというプレッシャー
  • 手術後の痛みが常にあったことによる継続的なストレス

うつ病は活発で責任感のある人がなりやすいと言われます。名倉潤さんが仕事に対してどう感じていたかは不明ですが、うつ病を発症して休業に至ったのは事実。仕事とメンタルへの影響として、手術という外的要因の侵襲は決して軽いものではなかったと言えるのではないでしょうか。

「外部刺激を少なくする」が侵襲によるうつ病を防ぐ

一部報道によれば、名倉潤さんのケースは非常に稀だとする医師の見解が示されています。しかし、昨今は医療現場においても「低侵襲治療」「低侵襲手術」といった考え方があるほどで、侵襲自体は小さなものであっても軽視しすぎてはいけないと言えるでしょう。

では、侵襲によるうつ病の予防方法や侵襲によるうつ病の可能性が出てきたらどうすべきでしょうか。

うつ病自体が簡単に治せる精神障害ではないため、一概には言えませんが、多くの医療関係メディアでは、以下のような予防や対策を有効としています。

・医療機関での治療開始前に副作用や症状が出るか確認する
・低侵襲性の治療を行う医療機関を選ぶ
・適度な運動や規則正しい生活
・手術や治療後に身体や精神的な違和感があれば早めに医師に相談する
・家族や知人などの周囲の人による気づき

先ほどお伝えした通り、侵襲による影響は内部要因と外部要因があります。同時にうつ病の原因も、内因性と外因性に分かれています。

つまり、侵襲もうつ病も、外部要因となる刺激を和らげることが一番の予防策。手術や薬物治療を避けられないとしても、治療後における自分自身と周囲の人によるメンタルケアは大事なのです。

今後何らかの治療を受ける可能性がある方は、この機会に侵襲について意識的に医師に相談してみてはいかがでしょうか。

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