
結論:児童発達支援は、発達が気になる未就学児(原則、小学校入学前の0〜6歳)のうち、市区町村が支援の必要性を認めた子どもが専門スタッフの支援を受けられる通所サービスです。療育手帳がなくても利用でき、利用料の自己負担には世帯の所得に応じて月0円・4,600円・37,200円の上限額が設定されます。また、満3歳になって初めての4月1日から小学校入学前までの利用料は無償です。利用には「障害児通所受給者証」が必要で、お住まいの市区町村の窓口で申請できます。
この記事では、初めて児童発達支援の利用を考えている保護者に向けて、申請の手順・費用・事業所の選び方を具体的にまとめました。
児童発達支援とは
児童発達支援は、児童福祉法に基づく障害児通所支援の一つです。対象は原則として未就学児(小学校入学前の0〜6歳)で、市区町村が支援の必要性を認めた子どもです。以下のような子どもについて、利用の相談ができます。
- 言葉の遅れが気になる
- 集団生活になじみにくい
- 身体の発達に不安がある
- 医師から発達障害の診断を受けた
事業所に通い、日常生活の基本動作の指導、集団生活への適応に向けた支援、言語・運動などの個別プログラムを受けることができます。具体的な支援内容は、お子さんの状態や個別支援計画、事業所の体制によって異なります。
「児童発達支援センター」と「児童発達支援事業所」の違い
| 項目 | 児童発達支援センター | 児童発達支援事業所 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 地域の中核的な支援施設 | 身近な通所施設 |
| 主な機能 | 専門的な通所支援+家族や地域の事業所などへの相談・援助 | 通所支援や家族支援など |
| 設置状況 | 設置数や担当する地域の範囲は自治体によって異なる | 事業所数や支援内容は地域によって異なる |
どちらも児童発達支援を提供しますが、専門職の配置や支援内容、地域支援の役割は異なります。お子さんの状態や通いやすさに合わせて選びましょう。
利用開始までの手順
以下の5ステップで進めます。自治体によって順序が前後する場合がありますので、最初の相談時に確認してください。事業所の見学や空き状況の確認は、受給者証の申請前から進めておくと安心です。
ステップ1:市区町村の窓口に相談する
- 窓口:市区町村の障害福祉課、こども家庭支援課、保健センターなど(自治体により名称が異なります)
- 持ち物(初回相談時):母子健康手帳、お子さんの健康診断の結果や発達検査の記録(あれば)。必要な持ち物は事前に窓口へ確認してください。
- ポイント:1歳半健診・3歳児健診で発達について指摘を受けた場合、保健師から案内されることもあります。電話で事前に予約の要否を確認するとスムーズです。
ステップ2:発達についての評価を受ける
利用の要否を判断するため、お子さんの状態を確認する面談や、以下のような資料の提出が求められます。必要な資料は自治体やお子さんの状況によって異なります。
- 医師の診断書または意見書
- 自治体が行う発達相談・発達検査の結果
- 保健センターなどの相談・経過観察の記録(自治体が支援の必要性を確認する資料として認める場合)
療育手帳や障害者手帳がなくても申請できます。ただし、利用には市区町村による支援の必要性の確認と支給決定が必要です。自治体の相談窓口で「発達が気になる」と伝えれば、必要な手続きを案内してもらえます。
ステップ3:「障害児支援利用計画案」を作成する
受給者証の支給決定に向けて、原則として「障害児支援利用計画案」を提出します。作成方法は2つあります。
- 指定障害児相談支援事業所に依頼する(無料):相談支援専門員がお子さんの状態や保護者の希望をヒアリングし、計画案を作成します。障害児相談支援の費用は公費で賄われるため、保護者の自己負担はありません。
- 保護者自身が作成する(セルフプラン):自治体の窓口で様式や提出方法を確認し、自分で記入します。書き方が分からない場合は窓口に相談してください。
初めて利用する場合は、相談支援事業所に依頼すると、事業所選びのアドバイスも受けられるためおすすめです。
ステップ4:受給者証を申請する
申請先:市区町村の障害福祉課など(自治体により名称が異なります)
主な必要書類(自治体やお子さんの状況によって異なります):
- 障害児通所給付費支給申請書など(窓口や自治体のウェブサイトで入手)
- 障害児支援利用計画案またはセルフプラン(提出時期は自治体に確認)
- 障害者手帳、医師の診断書・意見書、発達相談・発達検査の結果など、支援の必要性を確認できる資料
- 保護者の本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
- マイナンバーが確認できるもの(対象者は自治体に確認)
- 印鑑や世帯の課税状況が分かる書類など(自治体から求められた場合)
発行までの期間:自治体や申請内容によって異なります。例えば横浜市は約2週間〜1か月と案内しています。必要書類や面談の日程などによって前後するため、申請先に確認してください。
受給者証には「支給量」(月に利用できる日数の上限)が記載されます。月10日、月15日など、お子さんの状態や保護者の希望、支援の必要性などを踏まえて市区町村が決定します。
ステップ5:事業所と契約し、利用を開始する
受給者証が届いたら、希望する事業所と利用契約を結びます。契約前に見学を行い、空き状況や支援内容、個別支援計画について確認しましょう。
費用はいくらかかるか

児童発達支援の利用者負担は、無償化の対象期間を除き、サービス費用の原則1割です。ただし、世帯の所得に応じて月額の負担上限額が設定されており、支給決定の範囲内で利用したサービスの利用者負担は上限を超えません。食費などの実費は別途かかる場合があります。
月額負担上限額の目安
| 世帯の区分 | 月額負担上限額 |
|---|---|
| 生活保護世帯 | 0円 |
| 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 市町村民税課税世帯(所得割28万円未満) | 4,600円 |
| 上記以外(所得割28万円以上) | 37,200円 |
※上記は国の制度に基づく全国共通の基準です。所得を判断する世帯の範囲は、保護者の属する住民基本台帳上の世帯です。区分は年収そのものではなく、市町村民税所得割額などに基づいて認定されます。多子軽減や自治体独自の助成が適用される場合もあります。
このほか、事業所によっては食費・おやつ代・教材費・行事費など、利用料とは別の実費がかかることがあります。費用の内容や金額は、契約前に事業所へ確認してください。
幼児教育・保育の無償化との関係
2019年10月から、満3歳になって初めての4月1日〜小学校入学前までの児童発達支援の利用料は無償化の対象です。上記の自己負担(1割負担)がかかりません。ただし、食費やおやつ代などの実費は無償化の対象外です。0〜2歳児や、満3歳になってから最初の4月1日を迎えるまでの子どもは、国のこの無償化の対象期間外のため、原則として上の表の負担上限額が適用されます。ただし、非課税世帯などはもともと利用者負担が0円で、自治体独自の助成などにより無料になる場合もあります。
事業所の選び方
1. 候補を探す
- 市区町村の窓口で地域の事業所リストをもらう
- 障害福祉サービス等情報検索サイト(WAM NET)で所在地・定員・サービス内容を検索する
- 相談支援専門員に候補を提案してもらう
2. 見学・体験で確認するポイント
- お子さんへの声かけや関わり方は丁寧か
- 個別支援計画をどのように作成しているか
- スタッフの資格・経験(保育士、言語聴覚士、作業療法士など。配置は事業所によって異なります)
- 送迎の有無と範囲
- 1日のスケジュールとプログラム内容
- 保護者への報告・連携の方法(連絡帳、面談の頻度など)
3. 複数の事業所を併用できる
受給者証に記載された支給量の範囲内で、複数の事業所を併用することも可能です。例えば、週2日はA事業所で集団プログラム、週1日はB事業所で個別の言語訓練、といった使い方ができます。利用日程や支援内容は事業所間で調整し、児童発達支援は、同じ日に複数の事業所で利用することはできません。事業所を追加する際の手続きや、利用者負担がある場合の上限額管理についても、市区町村や事業所に確認してください。
よくある質問
Q1. 療育手帳がないと利用できませんか?
いいえ、療育手帳は必須ではありません。医師の診断書や意見書、自治体の発達相談の記録などにより、市区町村が支援の必要性を確認して支給決定します。必要な資料は自治体によって異なります。「発達が気になるが診断名はついていない」という段階でも、まずは市区町村の窓口に相談してください。
Q2. 受給者証の有効期間と更新はどうなりますか?
受給者証には支給決定の有効期間があり、一般に1年程度を区切りに更新しますが、年度末までとするなど自治体や支給決定の内容によって異なります。必ずお手元の受給者証の期限を確認してください。更新の案内の有無や申請時期も自治体によって異なるため、有効期限の1〜2か月前を目安に、自分から窓口に確認すると安心です。更新時には障害児支援利用計画なども見直します。
Q3. 保育園・幼稚園に通いながら併用できますか?
はい、併用できます。保育園や幼稚園に通いながら、降園後や休みの日などに児童発達支援を利用することができます。利用日程や支援内容については、園・事業所・相談支援専門員などと相談してください。事業所によっては保育園・幼稚園への送迎に対応している場合もありますので、見学時に確認してみてください。
確認先・問い合わせ先
| 相談内容 | 問い合わせ先 |
|---|---|
| 受給者証の申請・費用 | お住まいの市区町村の障害福祉課(こども家庭支援課などの場合もあり) |
| 事業所の検索 | WAM NET「障害福祉サービス等情報検索」 |
| 制度全般 | こども家庭庁 支援局 障害児支援課(制度情報は同庁ウェブサイト「障害児支援施策」を参照。個別の利用相談は市区町村へ) |
| 発達の相談 | 市区町村の保健センター、児童発達支援センター、児童相談所 |
まとめ:まず窓口に相談するだけでOK
児童発達支援の利用を考える際、「診断が確定してから」「手帳を取ってから」と思い込んで後回しにする必要はありません。実際には、手帳がなくても、診断名がついていなくても、市区町村の窓口に「発達が気になる」と相談するところから手続きは始められます。利用には、市区町村が支援の必要性を認め、支給決定を行うことが必要です。
費用も世帯の所得に応じた上限額が設定されており、満3歳になって初めての4月1日から小学校入学前までは利用料の無償化の対象です。まずはお住まいの市区町村の障害福祉課か保健センターに電話してみてください。「何を持っていけばいいですか」と聞くだけで、次にやるべきことが明確になります。
制度・出典の確認日:2026年11月1日。必要書類・申請期間・独自助成は自治体によって異なります。
参考:こども家庭庁「障害児通所給付費に係る通所給付決定事務等について」(令和8年3月版) こども家庭庁「障害児支援施策」 こども家庭庁「各種ガイドライン・手引き等について」(児童発達支援ガイドライン・令和6年7月) こども家庭庁「利用者負担の仕組み」 こども家庭庁「就学前障害児の発達支援の無償化について」 こども家庭庁「幼児教育・保育の無償化について」(対象期間・実費負担) 横浜市「障害児通所支援事業について」(申請手順・発行期間の例) 府中市「障害児通所支援」(必要書類・有効期間の例) 台東区「障害児通所支援の利用について」(対象確認・独自無償化の例)
執筆者プロフィール

児童福祉、発達障害、自閉スペクトラム症(ASD)など、子どもを取り巻く社会課題について執筆を行う。保護者や教育関係者にも伝わりやすい表現を心掛け、一人ひとりの子どもの成長と権利を尊重する視点から情報発信を続けている。