「もにす認定」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。障害者雇用に積極的に取り組む中小企業に対して厚生労働大臣が認定を与えるこの制度は、令和2年(2020年)10月に初めての認定事業主が誕生して以来、認定数が着実に増え続けています。
認定を受けることで、企業は認定マークの使用が認められるほか、日本政策金融公庫の低利融資対象となるなど、実質的なメリットを得ることが可能です。にもかかわらず、制度の存在自体がまだ広く知られていないのが現状といえます。
本記事ではもにす認定とは何か、どのような基準を満たせば認定されるのか、そして認定を受けることで具体的にどのようなメリットがあるのかをわかりやすく解説します。
もにす認定ってなに?
もにす認定とは、障害者雇用に関する取り組みが優良な中小企業を厚生労働大臣が認定する制度です。
厚生労働省:障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)
「もにす」の由来
「もにす」とは「ともにすすむ」という言葉の真ん中部分を取って作られた造語です。企業と障害のある方が共に明るい未来・社会に向かって進んでいくことへの期待を込めて名付けられました。
法律上の正式名称は「障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度」となっており、障害者雇用の促進と安定を目的とした仕組みです。名称が示す通り、この認定は単なる義務達成の証明ではなく、障害者雇用を積極的に推進している企業を社会に広く示すためのものといえるでしょう。
「法定雇用率を達成すれば十分」という消極的な姿勢ではなく、より前向きな目標設定の手段としても機能しています。
なぜもにす認定が作られたのか
もにす認定制度は、令和2年(2020年)4月に施行された比較的新しい制度です。制度が設けられた目的は大きく2つあります。
ひとつは、障害者雇用に真剣に取り組む企業に対してインセンティブを付与することです。もうひとつは、認定事業主の取り組み事例を地域における障害者雇用のロールモデルとして公表し、他の中小事業主にも参考にしてもらうことで、中小事業主全体での障害者雇用の促進につなげることにあります。
障害者雇用に取り組む際に「何から始めればよいかわからない」と感じる中小企業は少なくありません。認定事業主の事例が公表されることで、実践的な指針として機能するという側面もあるようです。
どんな企業が申請できる?
もにす認定の対象となるのは、常時雇用する労働者数が300人以下の事業主です。株式会社以外の法人(社会福祉法人等)や個人事業主も申請することができます。
また、労働者数が40.0人未満であるために法定雇用障害者数が0人となる事業主も申請が可能となっています。申請は事業主単位で行う仕組みです。
なお、特例子会社制度や関係会社特例制度を利用している親事業主が申請する場合は、これらの制度を適用せずとも、当該事業主単独で法定雇用障害者数以上を雇用していることが必要です。
認定されるにはどんな条件が必要?
もにす認定を受けるためには、いくつかの条件をクリアする必要があります。
評価スコアで20点以上(特例子会社は35点以上)取る
もにす認定の核心となる評価基準は、「取組(アウトプット)」「成果(アウトカム)」「情報開示(ディスクロージャー)」の3区分で構成されています。各区分を自己採点した合計が50点満点中20点以上(特例子会社は35点以上)であることが求められる仕組みです。
大切なのは、合計点だけを満たせばよいわけではなく、3区分それぞれで設定されている合格最低点を同時に達成しなければならないという点にあります。取組・成果・情報開示をバランスよく実践していることが求められる構造になっているといえるでしょう。
法定雇用率を達成していること
認定を受けるためには、雇用率制度の対象障害者を法定雇用障害者数以上雇用していることが条件のひとつです。法定雇用率の達成は、もにす認定の前提条件として位置づけられています。
この要件をクリアしていない場合、いくら評価スコアが高くても認定を受けることはできません。
障害者を1名以上雇用していること
就労継続支援A型の利用者を除き、雇用率制度の対象となる障害者を1名以上直接雇用していることも求められます。就労継続支援A型の利用者はカウント外となるため、この点は特に注意が必要です。
直接雇用という条件があることで、障害者雇用への実質的な取り組みが評価される仕組みになっています。
その他クリアすべき条件
上記の評価基準・雇用率・直接雇用の条件に加えて、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 過去に認定を取り消されたことがある場合、取消しの日から起算して3年以上経過していること
- 暴力団関係事業主でないこと
- 風俗営業等関係事業主でないこと
- 雇用関係助成金の不支給措置を受けていないこと
- 重大な労働関係法令違反を行っていないこと
これらは評価点とは別に設けられた絶対条件であり、ひとつでも満たさない場合は申請自体が受理されません。企業としての健全性が問われる項目といえるでしょう。
認定されると何がいいの?4つのメリット
ここでは、もにす認定を受ける4つのメリットをご紹介します。
①認定マークが使える
認定を受けた事業主は、「障害者雇用優良中小事業主認定マーク」を自社の各種媒体に表示できるようになります。
表示できる対象は以下の通りです。
- 商品または商品の包装
- 商品・役務に関する広告・取引書類
- 役務の提供に際して取引者もしくは需要者に提示する物または電磁的方法により提供する映像
- 営業所・事務所・工場
- ホームページ
- 求人票・求人広告等の募集広告
認定マークは、企業が障害者雇用に真剣に取り組んでいることを対外的に示す証となります。採用活動においては求職者への訴求力が高まり、取引先や顧客に対しても社会的責任を果たしている企業としての印象を与えることができるでしょう。
②低利融資が受けられる
認定事業主は、日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金(国民生活事業)」および「働き方改革推進支援資金(中小企業事業)」における低利融資の対象となります。
資金調達面での実質的な優遇措置であり、経営資金を必要とする中小企業にとって見逃せないメリットのひとつです。詳細な融資条件については、日本政策金融公庫への直接問い合わせが必要となります。
③公的機関が広報してくれる
認定事業主の情報は、厚生労働省および都道府県労働局のホームページに掲載されます。企業名・取り組み内容が公的機関のウェブサイト上で公開されることで、社会的認知度の向上が期待できるでしょう。
さらに、ハローワークの求人票に認定マークが表示されるほか、認定事業主に限定した合同面接会等も企画される場合があります。採用活動に公的機関のバックアップが加わることで、求職者への信頼感を高める効果が期待できるでしょう。
④公共調達で加点される
地方公共団体の公共調達、および国や地方公共団体の補助事業において、加点評価を受けられる場合があります。障害者活躍推進計画作成指針(令和元年厚生労働省告示第198号)において、地方公共団体に対し公共調達等における加点評価の実施が推奨されているためです。
ただし、国の公共調達については、優先調達等を実施することの法的根拠が特段存在しないことなどから、認定事業主の評価を加点することは認められていません。公共事業や補助金を活用する機会が多い企業ほど、認定取得によって地方自治体案件での競争上のアドバンテージが大きくなるといえるでしょう。
もにす認定の申請に必要な書類は?
もにす認定を申請する際には、いくつかの書類を準備する必要があります。ここでは、提出書類の全体像と、申請前に押さえておきたいポイントを解説します。
どんな書類を準備すればいい?
もにす認定の申請に必要な書類は、厚生労働省のホームページからダウンロードできます。主な提出書類は以下の通りです。
- 認定基準確認申立書(申請書別紙1-1)
- 障害者業務提供等事業の利用に係る該当申告書(申請書別紙1-2)
- 評価基準自己採点表(申請書別紙2)
- 評価要素該当申告書(申請書別紙3)
- 就労支援機関等による評価基準該当証明書(申請書別紙4)
- 障害者雇用状況報告書
- 在宅就業契約報告書
- 発注証明書
書類の数が多く感じられるかもしれませんが、ひとつひとつ順を追って準備していけば、それほど難しいものではありません。
申請前に押さえておきたいポイント
書類の中でも特にポイントなのが「評価要素該当申告書」です。自社の取り組みがどの評価項目に該当するかを具体的に記載し、それを裏付ける証明書類を添付する必要があります。
厚生労働省が公開している記載例集を活用しながら作成すると、漏れなく申告しやすくなるでしょう。評価基準自己採点表と障害者雇用状況報告書を先に完成させることで、認定基準確認申立書の作成がスムーズになるため、この順番で進めることがおすすめです。
申請から認定までの流れ

もにす認定の申請から実際に認定を受けるまでには、いくつかのステップがあります。ここでは、申請手続きの全体的な流れを見ていきましょう。
STEP1:書類を準備して提出
申請書類一式を揃えたら、事業主の主たる事業所を管轄する都道府県労働局に提出します。主たる事業所を管轄するハローワークを通じて提出することも可能です。
提出前に記載漏れや添付書類の不足がないかを十分に確認しておくことが重要となります。書類に不備があると、審査が遅れる原因になるため注意が必要です。
STEP2:審査を受ける
書類が受理されると、都道府県労働局による認定審査が始まります。審査の結果、認定基準をすべて満たしていることが確認された場合、認定通知書が交付される仕組みです。
申請書類の受理から認定・不認定の決定までには、約3か月ほどの期間がかかります。この間、追加書類の提出を求められる場合もあるため、労働局からの連絡には迅速に対応することが望ましいでしょう。
STEP3:認定通知が届く
認定通知書が交付された後、認定マークの使用が認められます。認定事業主の情報は厚生労働省および都道府県労働局のホームページに掲載され、社会への広報が始まる流れです。
ハローワークの求人票への認定マーク表示も、このタイミングから適用されます。認定を受けたことを自社のホームページや採用サイトで積極的にアピールすることで、企業イメージの向上につなげることができるでしょう。
もにす認定後に気をつけること
もにす認定を取得した後も、継続的な取り組みが大切です。ここでは、認定後のフォローアップや、認定が取り消されるケースについて確認しておきましょう。
有効期限はないけど定期チェックがある
もにす認定には有効期限が設けられていません。そのため、一度取得すれば認定が永続的に維持されるように思えますが、実態は定期的なフォローアップへの対応が求められます。
毎年6月1日時点の障害者雇用状況報告書の提出義務がある事業主は、その報告内容をもとに法定雇用障害者数以上の対象障害者を雇用しているかどうかが確認される仕組みです。また、認定申請時に更新情報の報告を誓約した事業主は、毎年7月15日までに一定の報告書を都道府県労働局に提出する必要があります。
こんな時は認定が取り消される
以下のような場合には、認定が取り消されることがあります。
- 法定雇用率を下回るなど、認定要件から外れた場合
- 重大な労働関係法令違反が発覚した場合
- 雇用関係助成金の不支給措置を受けた場合
- 事業主自ら認定辞退申出書を提出した場合
一度取り消された場合、取消し日から起算して3年間は再申請ができません。認定の維持は取得と同様に継続的な取り組みが前提であることを、あらかじめ念頭に置いておく必要があるでしょう。
まとめ
もにす認定は、障害者雇用の促進・安定に関する取り組みが優良な中小事業主を厚生労働大臣が認定する制度であり、常時雇用する労働者数が300人以下の事業主が対象です。認定基準は「取組・成果・情報開示」の3区分で評価され、合計50点中20点以上(特例子会社は35点以上)を獲得したうえで法定雇用率の達成などの要件を満たすことで申請できます。
認定を受けることで得られるメリットは、認定マークの使用・日本政策金融公庫の低利融資対象・公的機関による周知広報・公共調達等での加点評価という4点です。特に低利融資の対象となることは、資金調達を必要とする中小企業にとって具体的な経済的優遇であり、採用力の強化という観点でも認定マークの効果は大きいといえるでしょう。
認定に有効期限はありませんが、毎年の報告義務への対応や法定雇用率の維持が継続的に求められます。認定取得はゴールではなく、障害者雇用の取り組みを継続・深化させていくための出発点として捉えることが、長期的な視点では大切です。
執筆者プロフィール

ウェブ・コピーライターとしてクライアントワークを中心に活動中。